7.進路を決める要素は色々とある。

 二学期の行事として、俺は修学旅行や文化祭を思い浮かべていた。

 しかしながら、行事はそれだけではない。実の所、学校にとって結構重要な行事もあるのだ。


「生徒会選挙、そういえばそれもあったか……」

「ああ、そういえばそうだね。あ、ということは……」

「ああ、穂村先輩は任期終了ということになるな」


 その張り紙を見て、俺と由佳は穂村先輩のことを思い出していた。

 二学期の始業式でも、彼女は壇上に立って堂々としていた。そんな彼女は、もうすぐ生徒会長ではなくなるのである。


「……二人とも、美冬姉のことを話しているのかい?」

「あ、江藤」

「江藤君、おはよう」

「ああ、おはよう。ろーくん、それに瀬川さん」


 そんな俺達の前に現れたのは、穂村先輩の彼氏である江藤だ。どうやら、丁度登校してきたらしい。

 その江藤は、少し物悲しい顔をしている。やはり穂村先輩の引退は、こいつにとっても寂しいことだということだろうか。


「穂村先輩は、最近どんな感じなんだ?」

「うん? まあ、いつも通りだよ。生徒会のことは、そんなに気にしていない感じだったかな?」

「そうなのか?」

「ああ、肩の荷が下りるということで安心しているみたいだったかな? どちらかというと、受験の方が心配みたいで」

「ああ、そうか。三年生だもんな……」


 江藤から聞いていたことではあるが、穂村先輩はやはり勉強が忙しいようだ。

 もう九月であるため、受験までそんなに時間があるという訳でもない。当然、穂村先輩は必死で勉強しているのだろう。


「大変だな……まあ、明日は我が身である訳だが」

「それは違いないね」

「お前なんかは、スポーツ推薦とかで行けるんじゃないか?」

「それは、どうだろうね。でも仮に推薦されるとしても、僕はそれを受けないかもしれない。進路に関しては、色々と考えなければならないからね」


 俺の言葉に、江藤は真剣な顔をしてそう返してきた。

 どうやら、こいつは俺なんかよりも余程大人であるらしい。既に進路のことをしっかりと考えているなんて、立派なものである。


「やっぱりさ。キャンパスライフは美冬姉と一緒に過ごしたいだろう? だからさ、美冬姉と同じ所を選んだ方が、いいなんて思うんだけど……」

「……」

「あ、あはは……」


 江藤の言葉に、俺はひどく呆れることになった。

 そういえば、こいつはこういう奴だったのだ。それをよく思い出した。

 もっとも、こいつの気持ちが何もわからないという訳ではない。好きな人と一緒の大学に行きたい。そういう気持ちは、俺の中にも確かにあるからだ。


「ああでも、ろーくんと一緒の所っていうのもいいかもね?」

「え? 俺?」

「だって、せっかくの修学旅行で、僕はろーくんと別の班である訳だからね?」

「お前、またそれを……」


 修学旅行の班が決まった後、江藤は少し機嫌が悪かった。俺と一緒の班になれなかったことに、結構傷ついていたようだ。

 ただこいつは、誘われた班にしっかりと入っていた訳だし、その怒りを俺に向けられても困る。まあ、それはこいつも理解しているためか、ふざけた風にしか言ってこない訳ではあるが。

 そんな風なやり取りをしながら、俺は朝を過ごすのだった。

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