4.こういう時の俺は、今までいつも余っていた。
「班分け、か……」
修学旅行は、三日間の日程で行われる。
一日目はクラス行動、二日目は班行動、三日目は自由行動。そういう日程であるらしい。
その班行動の振り分けを、今から決めるらしい。それは俺にとって、嫌なイベントである。
こういう時の俺は、今までいつも余っていた。人数が足りない班に入れられて、そこで大して楽しくない班行動をさせられたのだ。
もちろん、今年の俺がそうならないということはわかっている。しかしそれでも、今までのトラウマが刺激されてしまう。
「ろーくん、一緒の班になろう?」
「ああ、それはもちろん。四条と竜太も誘うのか?」
「うん」
「ただ、班は五人編成だよな? つまり、後一人いれなければならないということになるか」
「あ、うん。そうなるね」
俺の言葉に、由佳は力強く頷いた。
班分けは、予想していた通りの組み合わせだ。このクラスなら、当然そうなるだろう。
ここに後一人入るとすれば、江藤辺りになるだろうか。そう思って、俺は江藤の方を見た。
「む……」
「ろーくん、どうかしたの?」
そこで俺は、江藤がクラスメイトと仲良さそうに談笑しているのを見つけた。
よく考えてみれば、あいつは元々学校中の人気者である。その交友関係故に、色々な人に誘われているということだろうか。
江藤の周りには男子二人と女子二人が集まっている。あいつのことだから、その班の誘いを断れなさそうだ。
「江藤は無理そうだな……となると」
俺は周囲を見渡した。
なんというか、あまりいい気分ではない。これはかつての俺を探す行為だからだ。
しかし事実としてあるのは、班には五人が必要ということである。そして大抵の場合、こういう時には誰かが余るものだ。
「美姫ちゃん、私達の班に入らない?」
「あ、私ですか?」
「うん。どうかな?」
「恐れ多いですけど、由佳ちゃんがそう言うならお邪魔しましょうかね?」
「邪魔なんかじゃないよ」
俺がそんなことをしている内に、由佳は七海を誘って彼女を班に引き入れていた。
そういえば、七海がこのクラスで誰かとそこまで親しくしている所を見たことはない。色々な人と話してはいるが、特別親しい人はいないような気がする。
強いて言うなら、由佳が一番かもしれない。そう考えていくと、この班編成になるのも妥当であるのだろうか。
「由佳、班のことなんだけど……」
「あ、舞。ろーくんと美姫ちゃんも一緒で良い?」
「ああ、七海さんか。もちろんいいわよ」
こちらにやって来た四条も、この班編成をすぐに受け入れた。
ともにやって来た竜太は何も言わないが、多分こいつも四条と意見は同じだろう。
「四条さん、どうかよろしくお願いします」
「そんなに固くならなくてもいいわよ?」
「いえいえ、これがいつもの私ですから」
「なんというか、相変わらずね……」
あの四条を前にしても、七海はまったく怯んでいなかった。
普段から飄々としているとは思っていたが、やはり七海は大物かもしれない。
そんな感じで、俺達の班は早々に完成した。今回の修学旅行の内一日は、この五人で過ごすのである。
基本的には、いつもの四人であるが七海がいることによって何か変わるかもしれない。一体、どんな修学旅行になるのだろうか。
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