二学期編

1.登校日という日の存在意義が、俺はよくわかっていない。

 登校日という日の存在意義が、俺はよくわかっていない。

 夏休みの最後の日、俺達は何故か学校に行く。その次の日から、二学期は始まるのだ。


 しかしそれは、おかしな話である。二日連続で学校に行く訳だし、それはもう二学期の始まりといって差し支えない。

 それなら夏休みは三十日までとすればいいはずである。この登校日とは、一体何のために存在しているのだろうか。正直、意味がわからない。


 そんなことを考えながら、俺は登校日のホームルームを迎えていた。

 担任の教師が、夏休みは今日で終わるため気を引き締めるようになどと言っているが、俺はそれをぼんやりと聞いておく。


「それじゃあ、二学期も始まるし席替えといきましょうか」


 だが担任の教師のその発言に、俺は姿勢を正すことになった。

 席替え、それは由々しき問題だ。そう思って、俺は隣の由佳を見る。


「席替え……」

「由佳……」


 由佳は、明らかに不安そうな顔をしていた。

 気持ちは俺も同じだ。この由佳の隣という至福の位置から変わるなんて、嫌に決まっている。


「そういえば、そうだよね。席替え、当然あるよね……」

「ああ、考えてみれば当たり前だ。ただ、頭らかすっぽり抜けていた……」


 二学期が始まる前に席替えがあるということは、容易に予想できたことだ。

 休みが明けて、心機一転。誰でも思いそうなことである。

 ただ俺達は、まったく心構えができていなかった。このまま隣の席のままだと、そう思っていたのである。


「二人とも、何この世の終わりみたいな顔しているのよ?」

「舞……だって、席替えなんだもん」

「気持ちはわからないでもないけれど、そんな悲しそうな顔をすることではないでしょう」


 前の席の四条は、由佳に対して少し呆れたようにそんなことを言った。

 だが、これは悲しいことである。席が隣かどうかによって、授業に対するモチベーションもかなり変わるものだ。

 色々とメリットがあった隣の席という関係がなくなるのは正直すごく残念だ。


「ううっ……次もろーくんの隣になれないかな?」

「まあ、確率はゼロという訳ではないわね……かなり低いけれど。というかそもそも、由佳がその席になったのは入れ替わったからでしょう?」

「あ、そういえば、そうだったね……」


 四条の言葉で、俺は由佳が隣の席になった時のことを思い出した。

 そういえば、俺の隣は元々七海だったのだ。さらに言えば、その前も七海である。


 そのように二連続で隣の席になったのだから、由佳とももう一度隣の席になることもあるのではないだろうか。

 もちろん確率は低い訳だが前例があるし、もしかしたらもしかするかもしれない。

 そんなことを思いながら、俺は席替えに臨むのだった。

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