29.誕生日プレゼントを選ぶのはとても難しい。
一年の内で最も喜ばしい日とはいつか。そう聞かれても、以前までの俺は答えを出せなかっただろう。
しかし今の俺は、明確にある日だと断言できる。その日は俺にとって、非常に喜ばしい日であるからだ。
「まさか、あんたから誘ってくるとは思っていなかったわ」
「ああ、自分でも珍しいことだということはわかっている。しかし一人で悩んでも、多分いい案というものは思い浮かばないと思ってな……」
「なるほど、まあ九郎にとっては当然外せない選択になる訳だしな……」
「その通りだ」
俺は、竜太と四条とともに買い物に来ていた。
今日の俺達の目的は、由佳の誕生日プレゼントを買うことである。近々彼女の誕生日なのだ。
「別にあんたが悩んで選んだなら、由佳は大抵のものを喜ぶと思うけど」
「いやしかし、せっかくなら由佳が好んでいるものを渡したいじゃないか」
「由佳の好みなら、あんたも知ってるんじゃないの?」
「ある程度はわかる。ただわからないものもあるから、二人を頼ったんだ」
由佳の誕生日は、彼女がこの世に生まれてきてくれたことを祝う素晴らしい日である。
だからこそその日に渡すプレゼントは、いいものにしたい。そう思っていた俺は、悩みに悩んでいた。
その結果、誕生日プレゼントを決められず、二人を頼ったのである。
「舞はともかく、俺はそんなに頼りにならないと思うが……」
「それはまあ、色々とあるだろう」
「色々……ああ、そうか」
ちなみに俺も、竜太がそこまで頼りになるとは思っていなかった。
竜太を誘ったのは、俺が四条と二人で出かけるのは由佳に対しても竜太に対しても裏切りになるからだ。当の本人なのだから、そこはもう少し早く気付いて欲しかった所である。
「ちなみにあんたは、ぼんやりとでもいいから何かプレゼントしたいものとかあるの?」
「いや、それがまったく決まっていない。まあ、あまり高価なものはやめておいた方がいいと思っているのと、残るものがいいということくらいか」
「アクセサリーとか?」
「ああ、その辺りがいいか」
「王道である訳だし、いいんじゃない? ネックレスとか、イヤリングとか、指輪でもいいかもしれないわね。まあとにかく色々と見て回りましょうか」
「よろしく頼む」
由佳が関わることであるからか、四条はかなり乗り気だった。
それは俺にとって、かなりありがたいことである。これでなんとか、光明が見えそうだ。
こうして俺達はしばらく、由佳の誕生日プレゼントを選ぶのだった。
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