2.俺は思っていた以上に独占欲に溢れている。
「え? 恋愛シミュレーションゲームが浮気になるかって?」
「ああ……」
「別にならないんじゃないかな……?」
俺の質問に対して、由佳はそのように答えてくれた。
やはり、俺の心配は杞憂だったようだ。所詮はゲーム、彼女はそう思ってくれているのだろう。
「逆に聞くけど、ろーくんは例えば私が男女が逆のゲームをやっていたら何か思ったりするの?」
「え? いや、そう言われると……」
由佳に質問されて、俺は少し面食らっていた。
画面の中にいるイケメンに夢中な由佳、それを想像するとちょっと嫌なような気もする。
「……やはり恋愛シミュレーションゲームはやめよう」
「あれ?」
「言っておくが、俺は別にそのゲームをやりたいとか思っていた訳じゃないんだ。由佳と付き合い始めてから、そういうゲームは控えるようになっていたからな。今回は偶然買ってやっていなかったゲームを月宮が勧めてきたからやってみることにしたというだけで……」
「いやろーくん、私は良いって言ったよ?」
「む……」
俺が急に早口になったからか、由佳は少し苦笑いしていた。
なんというか、無性に恥ずかしくなってきた。俺はなんでこんな言い訳を重ねているのだろうか。
「でもそっか、ろーくんは嫉妬してくれてるんだね?」
「え? あ、いや、それは……そうなるのか」
「ふふ、嬉しいなぁ……でも、心配しなくていいんだよ。私は、ろーくんのものなんだから」
「由佳……」
そこで由佳は、俺にゆっくりと身を寄せてきた。
俺はその体に、そっと腕を回す。彼女が俺のものだと主張したくて、体が勝手に動いていたのだ。
由佳の柔らかさも温もりもとても心地いい。その温もりを、もっと感じたくなる。
「だけど、考えてみるとどこまでがセーフかっていうのは難しい気もするね?」
「どこまでセーフか?」
「芸能人……例えばアイドルとかだと、私もちょっと嫌だなって思って」
「なるほど、それは確かに……そうだな」
由佳の指摘に、俺は思わず唸ってしまった。
ゲームの登場人物に嫉妬しるくらいの俺なので、当然アイドルとかを推されるのはすごく嫌だ。恋愛感情ではないとわかっていても、できればやめてもらいたい。
「思っていたよりも、俺は独占欲があるみたいだな……」
「それは嬉しいよ。ろーくんがそれだけ私のことを大切に思っているっていうことだし……」
「ああ、それはもちろん。俺は由佳のことが好きだし、何よりも大切に思っている」
「う、うん。私もろーくんのことが大好きだよ」
俺は由佳と、ゆっくりと唇を重ねた。柔らかいその唇を味わいながら、お互いの愛を確かめ合う。
「そんなろーくんに、今日は見てもらいたいものがあるんだ」
「見てもらいたいもの?」
「うん。ちょっとだけ後ろを向いてもらってもいい?」
「ああ、それはもちろん構わないが……」
由佳に言われて、俺はとりあえず彼女に背を向ける。するとその直後に、カーテンが閉まる音が聞こえてきた。
さらに続いて、布が擦れるような音が聞こえてくる。それは明らかに、服を脱いでいる音だ。
状況から考えると、由佳は着替えているということだろうか。正直すごく後ろを向きたいが、信頼を失うためそれはやめておいた方がいいだろう。
「ろーくん、もう振り返ってもいいよ」
「あ、ああ……うおっ」
由佳に呼ばれて、俺はゆっくりと後ろを振り返った。そして思わず怯んだ。
俺の目の前には、それなりに際どいピンク色の水着を着た由佳がいる。以前も水着姿は見せてもらったが、それとは少し違う水着だ。
「どう? 似合ってるかな?」
「も、もちろん、とても似合っている……」
「ありがとう、ろーくん。えへへ、この間舞達と買い物に行ってね。買っちゃったんだ」
「そ、そうなのか……」
由佳が時々四条達とショッピングに行っていることは知っていた。だが、まさかそんなものを買っていたとは驚きだ。
「かなり……露出が多いな?」
「あ、うん。そうだよね……ろーくんは、こういうの嫌い?」
「いや、俺は好きだ。ただ、それを人前で着られるのはちょっと……」
「もちろん、ろーくん以外の前でこんな水着は着られないよ。舞達に見せるのだって、ちょっと恥ずかしかったし」
由佳は、前にも俺に見せるためだけの水着を用意してくれていた。
それは俺にとって、どうしようもないくらいに嬉しいことだ。同時に、とても安心することができる。
「だからね、ろーくん。この水着は、ろーくんが好きなようにしていいんだよ」
「な、何?」
「見たいって思った時には言ってくれていいからね。せっかく買ったんだし、いっぱい使った方がいいし」
「な、なるほど……」
由佳の言葉が何を意味しているかは、すぐに理解することがきでた。
故に俺は、ゆっくり息を整える。これから起こることに、きちんと対処するために。
「それなら、その水着をたっぷりと味わせてもらろうかな?」
「……うん」
俺の言葉に、由佳はゆっくりと頷いてくれた。
こうして俺は、しばらく彼女の水着を楽しんだのだった。
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