第119話 幼馴染は足もとても魅力的である。

「それじゃあ、ろーくん、お願いしてもいいかな?」

「あ、ああ……」


 俺は、由佳のふとももにゆっくりと触れる。そして思わず驚いてしまう。

 膝枕をしてもらったりしているため、その感触は一応知っていた。だが、やはり手で触れるとその柔らかさを改めて実感させられる。


「ろーくん、どうかしたの?」

「あ、いや、その……とても柔らかいと思ってな」

「えっと……それは褒めてるの?」

「もちろん、褒めているとも。ずっと触っていたいと思う」

「そうなんだ。それなら、触りたくなったら言ってね。二人きりの時なら、いくらでも触らせてあげるから」

「あ、ありがとう……」


 由佳は、サービス精神が旺盛だった。なんというか、大抵のことは許してくれる。

 それはもちろん、嬉しいことだ。ただ、それでもやはり遠慮というものは必要だろう。親しき仲にも礼儀ありというし、そんなに度々頼むのはやめた方がいいはずである。


「遠慮しなくてもいいからね。ろーくんに触られるのは好きだから」

「そ、そうなのか?」

「うん。それに、ろーくんが私の体で楽しんでくれるのは嬉しいし」


 由佳の大胆な言葉に、俺は少し昂ってしまう。

 ここまで言ってくれているのだから、俺は由佳の体をもっと積極的に楽しんでもいいのかもしれない。


「……」

「ろーくん?」

「ああ、いや、なんでもない」


 そこで俺は、自分が今触れている場所のことを思い出した。

 俺は現在、彼女のふとももに触れている。そこは中々、際どい場所だ。

 しかし、それは流石に意識しないようにしなければならない。もしも意識したら、俺は衝動に任せて何かしてしまい兼ねないからだ。


「それじゃあ、マッサージをする……」

「あ、うん」


 今回は、マッサージである。俺はそれを深く意識しておく。

 由佳だって、昨日と今日の運動で疲れているのだ。それを癒してもらうためにも、しっかりマッサージしなければならない。


「といっても、俺はそういうことに詳しくないんだが……こういう風に揉むでいいだろうか?」

「あ、うん。気持ちいい」

「そうか。それなら良かった」


 正直な所、マッサージしている俺の方も気持ちよかった。

 彼女の柔らかいふとももを揉むのは、とても楽しい。なんというか、意思が揺らいでしまいそうだ。


「ちなみにろーくんは、女の子のどこが好きとかあるの?」

「……え?」

「フェチっていうのかな? そういうのあるの?」

「いや、それは……」


 由佳の質問に、俺は言葉を詰まらせることになった。

 もちろん、俺にだって好きな部位とかはある。ただ、それを正直に言うのは気が引けてしまう。


「ふとももとかは、好きなの?」

「えっと……まあ、それはもちろん好きではあるが」

「あ、でも昨日はお腹を触っていたよね?」

「……お腹も好きだな」


 由佳から次々と出てくる質問に、俺はとりあえず答えた。

 すると彼女は、考えるような仕草をする。もしかして、俺の答えが同じだからだろうか。


「……言っておくが、俺は由佳の全てが好きだ」

「……え?」

「どの部位も魅力的に思ってしまう。まあ、それはフェチとは違うのかもしれないな。由佳の部位であるということが重要である訳だし……」

「私であるから……」

「由佳フェチ、とでもいえばいいだろうか……」


 俺の言葉に対して、由佳は目を丸くしていた。もしかしたら、引かれているのかもしれない。流石に気持ち悪かっただろうか。


「それなら、私はろーくんフェチってことになるのかな?」

「え?」

「私も、ろーくんの全部が好きだもん。ろーくんのお腹も足も、私にとっては魅力的な部位だよ?」

「そうか……まあ、それは嬉しいな」


 由佳の笑顔に、俺も自然と笑みを浮かべることになった。

 どうやら俺達にとって、お互いの存在というものは全てが好みであるらしい。

 そんな風に趣向が一致しているというのは、幸せなことであるだろう。


「由佳、そろそろふくらはぎのマッサージに移ろうか」

「あ、うん。そうしてもらっていいかな……」

「……やっぱりふくらはぎも良いな」


 俺はふとももから、彼女のふくらはぎに手を移した。

 触れてみる前からわかっていたことではあるが、やはりここも素晴らしい手触りだ。


「そんな風に褒めてもらえるのは嬉しいよ……ろーくんのふくらはぎも、とっても魅力的だったよ?」

「ああ、ありがとう」


 由佳のふくらはぎを揉みながら、俺は苦笑いを浮かべることになった。

 ふくらはぎを褒められるなんて、人生で初めての経験だ。

 ただそれを嬉しく思う。由佳に魅力的だと思われていることは、俺にとってとても幸せなことだ。

 そんなことを思いながら、俺はマッサージを続けるのだった。

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