第92話 幼馴染とのお風呂は色々と刺激的過ぎる。

「ろーくん、入るね?」

「あ、ああ……」


 お風呂場で腰にタオルを巻いた俺は、由佳の呼びかけにゆっくりと頷いた。

 するとその直後、彼女がお風呂場の中に入って来る。その姿に、俺は思わず口を開けてしまう。


「ど、どうかな?」

「……」


 ピンク色のビキニを身に着けた由佳は、俺の感情を大きく揺さぶってきた。

 もちろん、その水着はとても似合っているし由佳はとても可愛い。それは紛れもない事実である。

 ただ俺は思ってしまった。少々露出度が高すぎるのではないかと。


「……由佳、その水着はとても似合っている。だが、少々言いたいことがある」

「言いたいこと? どうかしたの?」

「その水着は露出度が高すぎる……いつもそんな水着を着ているのか?」


 もしかしたら由佳は、肌を見せるのに抵抗がないのかもしれない。

 だが俺は彼女の肌を無闇に晒して欲しくはなかった。俺の中の独占欲がむき出しになってしまう。

 でも構わない。例え引かれてもいいから、これは言うべきことだろう。そこだけは譲れない部分だ。


「ううん。こんな水着は着ないよ? この水着は特別」

「……特別?」

「うん。これは、ろーくんに見せる水着。ろーくんだけが見ていい、ろーくん専用の水着なんだよ?」

「……そ、そうか」


 由佳の言葉に、俺は絞り出すような声しか出せなかった。

 その水着が俺専用の水着であるという事実は、正直たまらない。滅茶苦茶嬉しいし、色々と昂ってしまう。


「……だからいくらでも見ていいよ」

「由佳……」


 俺は由佳の顔から、ゆっくりと視線を落としていった。

 まず目が止まったのは、彼女のその大きな胸だ。水着であるため、普段は隠れている部分が見えている。その谷間に、俺の視線は吸い込まれていく。


「ちょ、ちょっと恥ずかしいね……」

「あ、いや、すまない」

「ううん。大丈夫だよ。見られるためにこの水着なんだもん」

「……」


 先程から由佳の言動はかなり大胆である。そんな風に大胆になられてしまうと、こちらとしても色々と我慢ができなくなりそうだ。


「それに、私はもうろーくんのものだからね?」

「俺のもの……か」


 とりあえず俺は、一度深呼吸をした。とても動揺してしまったため、心を落ち着かせる必要があったからだ。

 今ここで衝動に任せて行動してはいけない。由佳の両親もいるのだから、滅多なことなんてできないのだ。だから自分を鎮めなければならない。


「……そういうことなら、俺も由佳のものだな?」

「あ、うん。そうなんだよね……えへへ、嬉しいな」


 俺がなんとか絞り出した言葉に、優は笑顔で応えてくれた。

 なんだか最近の俺はずっとこんな感じのような気がする。いつも自分の衝動を抑えてばかりだ。


「……ろーくん、ぎゅっとしてもいい?」

「え?」

「その……ろーくんのことが恋しくなっちゃった」

「……それなら」

「……うん」


 そんな俺に、由佳はゆっくりと近づいてきた。

 今の状況で由佳を抱きしめる。それはとても大変なことだ。

 だが俺は抗えなかった。今の由佳と触れ合いたいという欲望に。


「えへへ……」

「う、む……」


 ゆっくりと由佳と触れ合って、俺は幸せに包まれた。

 自分の素肌と彼女の素肌が触れ合っている。その触れ合っている全ての部分から幸せが感じられる。

 特に彼女の大きな胸が直で当たっているという事実は、俺を大きく動揺させていた。今まで何度も体験したことがある感触だが、やはり直は違う。もっともそれは、全ての部分にいえることかもしれないが。


「ろーくん……」

「んっ……」


 次の瞬間、由佳は俺とゆっくりと唇を重ねてきた。

 ただでさえ幸せに包まれていたというのに、さらに幸せが舞い込んできた。もう幸福でどうにかなってしまいそうだ。

 だからだろうか、由佳が唇を離した瞬間に自然に体が動いていた。今度は俺が、彼女の唇を奪ったのだ。


「……」

「……」


 再び唇を離してから、俺と由佳は見つめ合っていた。

 キスをするのはもちろん好きなのだが、こうやって彼女の顔を見るのもまたすごく幸せなことである。

 多分このまま一日が過ごせると思う。いや、それは流石に無理だろうか。キスとかもしたくなると思うので、この状況を維持するのは中々難しいかもしれない。



「……由佳は、本当に可愛いな?」

「え? そ、そうかな? それはありがとう」


 わかっていたことではあるが、由佳は非常に可愛い。多分世界一可愛いのではないだろうか。

 まあ人によって好みはあるので、そういう風に言い切るのはよくないかもしれない。という訳で俺の中では由佳が世界一可愛いということになるだろうか。

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