魔王からの手紙

今日も賢者グリーナの館では究極魔法(自称)の研究が行われていた。


グリーナは森でいらなくなった石鹸をムジナとクマに集めさせた。鍋に石鹸達を入れまぜる。

「これに、なんか入れると新しい石鹸ができるのだ。回復系癒しアイテムである」

グリーナはぐるぐる丸メガネを指で押し上げた。

「なるほどハーブとかな、たまにはまともな事してんな」ムジナはへぇと鍋を覗いた。


ー説明しようー

小さな石鹸達を細かく切り、熱を加えてパッケージに入れ冷ますとると新しい石鹸が出来ます。他の薬品は危険な可能性があるので、石鹸のみにするか、体内に入れても問題が無い物質にしましょう。


「何か隠し味が足りないかな、、」

グリーナは棚にある黄色い粉を豪快に入れた。

「お前、それカレー粉じゃねえか。そんなスパイシーな石鹸何につかうんだよ!」

部屋の中は何やら、甘くてファンキーな匂いが充満してきた。さらにグリーナはくさやを投入した。

「ヴゥゥ」

クマが白目を剥き、ぐったりしはじめる。

「グリーナもうやめろ、お前何サワークリームいれようとしてんだよ」

「いや、濃厚なんでフレッシュさを増そうかと」


ムジナは火を止め、クマを横たわらせ窓を開けた。

森の風が部屋を浄化し、クマも次第に意識を取り戻してきた。

「いやーなんでだろ。何が失敗だったんだ」

「カレー粉とくさやだよ!お前あやうく素手でクマ殺しするとこだぞ。伝説の空手家じゃあるまいし」

その時グリーナの館の扉がノックされた。


「グリーナさん、森中の動物達が気絶してましたよ」

入ってきたのは白エルフのチャンドラであった。


手紙や荷物など預かり配達する、森のポスト局員は基本白エルフ達が働いていた。彼女達は戦闘をしない種族なので、接触や情報でトラブルを起こさない信用があったからだ。国が指定した各ポスト支局の職員、特に配達員は白エルフが担当していた。


「なんだ、エロエルフか」

「誰がエロエルフですか」

グリーナは腕を後ろに組み、チャンドラの足元に立ち上から下から視線を移した。そのいでたちは、セクハラ部長そのものであった。


「じゃ、このえらく短い丈のワンピースはなんだね」

「ただの局員の制服ローブです。わたしは身長が高めなんで」

「じゃ、なんで網タイツとブーツなんだね」

「寒いし、足も危ないからですよ」

「じゃ、なんでそんな胸元出すんだね」

「やはり、制服が小さいからはみ出ます」

「じゃなんで、そんな小顔で目がパッチリしてるのかね」

「生まれつきです」

「じゃ、じゃ、、」


口喧嘩で完敗した小学生のように項垂れるグリーナの前にムジナは前に立った。

「やめろグリーナ。お前にも良さはある。オイラが引き出してやる」

グリーナは半泣きでうんうんうなづく。


「グリーナ、なんで3頭身なんだ」

「生まれつきです」

「グリーナ、なんでずんぐりむっくりなんだ」

「食べすぎです」

「グリーナ、なんで胸がぺったんこなんだ」

「これから、育ち盛りです」

「グリーナ、なんでレベルが2なんだ」

「うぉぉぉ、頑張って修行して巨乳星人に転職します」

グリーナは四つん這いになり、床を泣き叫びながら叩いた。


「あのぅ、グリーナさん?そろそろよろしいですか?」

チャンドラが苦笑いで寸劇の終止符をうった。


「で、グリーナさん今日もお持ちしたのですが、

開けましたか?お手紙」

「またかよ、なんで魔王からそっちゅう手紙くんだよ。面倒くさ」

「しかしですね。請求書と一緒で見ないで先延ばしにしますと、あとで泣きをみますよ」

「そうだぜグリーナ、開けるだけ開けてみろよ」

グリーナは嫌々封筒の封を破り手紙を取り出した。


賢者へ 果し状 暗黒城にて待つ 魔王

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る