第145話八百万 ラーメン週間 4日目 豚骨ラーメン ハイリューン・ヒルデガルド

 豚骨ラーメン、前回はド豚骨でありながらもあっさりした一杯を作ったが、今回は濃厚も濃厚ド濃厚の超豚骨ラーメンを作っていきたい。 

 

 豚はお馴染みの帝王豚。 

 

 さてここで超濃厚の豚骨を作るにあたって、濃厚スープの事をこういう人たちがいる。 

 

 濃厚を謡った、豚の脳みそスープであると中にはこの事を知って、え?と思う人間もいるかもしれないが、実際濃厚なスープに豚の脳みそ入りの頭骨が使われる事は少なくない。 

 

 内臓でも表現するが、一頭につき一つしかとれない舌や脳などは本来超高級品である。 

 

 日本でこそ馴染みのない脳だが、海外ではスーパーでパック売りされる程メジャーな食べ物だったりする。 

 

 さて、今回は超濃厚と言った以上当たり前の様に頭骨は使う、それも一つなんてもんじゃない、40、50個の頭骨に骨髄の入った大腿骨、せがらなんかも大量にいれ、それを一番出汁、二番出汁、三番出汁の要領で出汁をとり、そこから更にこの三つの出汁を合わせて調整したのが、今回の超濃厚ド豚骨ラーメンである。 

 

 頭骨もげんこつもせがらも、骨が最終的には粉になる程超火力で煮詰め、中の骨髄、脳は完全にスープに溶けだしている状態である。 

 

 醬油にはにぼし、あごなどの腸を抜いた乾燥したものを合わせ、また帝王豚のチャーシューで肉の旨味も追加する。 

 

 ハイリューン・ヒルデガルド 

 

 ラーメン週間、それは魅惑の麺のパレード、豚と鳥の大名行列。 

 

 醬油から始まった怒涛のラーメンの日々にわたくし以外の常連の方々も歓喜の咆哮と共に、今回ばかりは外せないと誰もが行儀良く列に並ぶ。 

 

 先頭も先頭、扉の前に並ぶわたくし、もうすでに店からは豚骨の強烈な隠しきれない匂いが溢れ出てくる。 

 

 どれほど、どれほどの豚を煮込めばここまで強烈な匂いを放てるのか?この豚の匂いは遠くは商業ギルド、果は冒険者ギルドまで漂い、意思の弱い人達の脳を揺さぶり凶暴化させる効果をもつほど強烈である。 

 

 ひと嗅ぎ鼻を抜けると、本能の食欲が飛び出て来る、くっ!くいてぇ!!!貪りくってやりてぇ!!はっと我に返り、飛び出たグル〇細胞を体内に引っ込める。 

 

 今回はすっと店内にはいって、麺の硬さは以前の時はべた生だったが、今回は違う流儀バリカタで注文する。 

 

 さっそうと運ばれてくる豚骨ラーメン、具材はネギはあたりまえチャーシューに紅ショウガ、ゴマ、きくらげと意外とシンプルにまとまっている。 

 

 だああああがあああああああああ!ヒルデガルドはまだ気づいていなかった!店に入った瞬間から豚のだんじり祭りは始まっていた事に!これから暴食の宴、蝕が始まろうとしていた。 

 

 乳白色?否これは若干グレーがかったスープ、粘度も適度に泥っとしていて長浜ラーメンとは全然違う豚骨のラーメン。 

 

 レンゲで掬い、一口ぐいっと飲み込めば、それはもうマウスピース飛ばす一撃ドン!ワンツーかまして脳震盪!えぐるはらわた怒りのブロー!栄光への道ボクサーズロード!!! 

 

 はっと我にかえる、山嵐なの?2023年に山嵐の登場なの!?一瞬豚がボクシングする風景が脳裏に痺れる。 

 

 なんて!なんて濃厚なスープ!一頭どころじゃない!集団!?集落!?硬めの麺とよく馴染む。 

 

 超濃厚で粘度もあるのに、麺に纏わりつくスープは丁度良く塩味も心地よい、ネギときくらげ、具材はシンプルで少ないながらも外せない味わいになってる。 

 

 駄目だ!ここでがっついては駄目だ!あくまでも!あくまでも理性的に!細麺だから思いっきり麺を持ち上げると、結構な量が救い上げられ、大口を開けたら数口で完食してしまいそうになる豚骨。 

 

 それをあえて細々と味わって、少しずつ少しずつ味わう様に食べる。 

 

 家系の豚は確かにがつんとした豚の旨味と醬油の味だ、でもこの豚骨はいわばクリーム!そうポタージュの様なスープなのだ! 

 

 今までの醬油や塩とは明らかに違い、どろっと絡むスープ、固形に近いドロドロ感はパスタソースに近い物を感じる。 

 

 豚の大連ちゃんは続く。 

 

 どこかナッツのクリーミーさも感じつつ、この濃厚さは何度も口にしたくなる味わい。 

 

 ブタベヘリットは告げる、捧げろと、豚の臭みを宿す代わりに午後の仕事と人間関係の破城をささげろと!こんな豚臭いまま仕事にいったらえらい事になる奴はそれを見越して私に全てを捧げろと!?豚のゴットハンド達は告げる、新たな豚の使徒が誕生する事を。 

 

 私は鼻で笑う、ふごごごごごごご!豚のゴットハンドだと!こっちはこっちで祭りをやってるんでぃ!ねじり鉢巻きの豚が槌を振るって暴れまわる、超源炎舞!!! 

 

 脳内では超豚祭りと蝕のぶつかり合い、どちらも引かぬデットヒート!これぞまさに豚無双!こ〇すぞ~!!! 

 

 あまりの濃度にパニックになりながらも、すする!こんな濃厚な豚!豚骨は過去味わった事がない嫌豚に限らず他の動物でもこんなに煮込まれた動物性の濃い味を体験した事があるだろうか?ない!ないのだ!まさにどれだけ長い年月を生きて来たエルフが、必死に過去を掘り起こしても味わった事がない味! 

 

 動物性のスープがこうも濃厚で気高い開花する味わいに進化するなど、知らなかった。 

 

 そもそもが骨を煮るってなんだ!?この世界にはそんあ技術はない!骨に骨髄なる旨味があるなんてだれも知らなかった、知らないはずだ。 

 

 だって骨だもん、あるとしても粉末にして薬になるくらい?じゃないか?今回の超豚骨で家系、背油ちゃちゃ系、二郎系に続いまた大量に中毒者を出す事になった。 

 

 今回の豚骨は、豚骨でも濃厚どろ系の豚骨だ。 

 

 濃厚なとんこつはただでさえ中毒者を増やす。 

 

 スープがなくなるその限界まで、ヒルデガルドはどろどろのスープと麺のマリアージュを味わう。 

 

 だが、これでも複数存在する豚骨のまだ一面、二面程度なのをヒルデガルドは知らない。 

 

 豚骨の道はまだまだ深く、どこまでも深淵へと繋がっている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界定食屋 八百万の日替わり定食日記 ー素人料理はじめましたー 幻想食材シリーズ 夜刀神一輝 @kouryuu00

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ