第130話八百万の伝統ハンバーグ

 八百万 

 

 八百万には初期の頃から、ウェールズの肉の大商会であるフィガロさんの所から切り落としやクズ肉、メンブレン(膜)など捨ててしまう部分を大量にもらっている。 

 

 巨大な獲物から小さなものまで捌きあつかっていると、自然と赤身が大胆についや骨際の肉なども余る事も多く、また様々な種類の肉が集まる。 

 

 メンブレンなどは簡単に膜というが、今ではコンビニで牛筋として採用されるほど、日本でも無駄なく利用される。 

 

 それらを寄せ集め、赤身肉を足しながらもミンチにして出来上がるのが、八百万のハンバーグである。 

 

 慣れ親しんだ肉から超高級な魔物の肉まで、ミンチで只管均等に混ぜ合わせ、日本で言うならどこのハンバーグに似ているだろうか?個人的にはハンバーグの名店、びっくりドンキーを模倣しながらハンバーグの味の調整をしている。 

 

 数あるハンバーグ、個人店の独自の味なんかもひしめき合うハンバーグ業界、そんな中でオーソドックスでありながらも外食、まさに家庭ではなかなか出せない味の一旦を担っていて、子供の頃の自分はびっくりドンキーにいくと言われただけで、遊園地にでもいくかのようなわくわく感を覚えたものだ。 

 

 焼き方は、ハンバーグの大会で金賞を受賞したシェフの焼き方を真似ている。 

 

 切った段階で肉汁はでなく、ぎゅっと噛み締めた時に初めて肉汁が溢れる状態、これがベストと考えたからだ。 

 

 ゴーダチーズをのせても、卵を乗せて黄身と絡ませてもいい、カレーにだって合う。 

 

 うちのリンネも孤児院の子供達も、ハンバーグの日はどこかそわそわして緊張しているかの様子に少し笑ってしまう。 

 

 休みの日、子供達のごはんの準備もしつつハンバーグを焼き上げると、周りに人の気配がやたらとする。 

 

 サラダは大根やニンジンを細かく細切りにした奴を用意する。 

 

 このサラダにすると、子供達がもっと野菜食べたいとせがむのだ。 

 

 「出来たよ~!!」 

 

 と声をかけると、子供達が隠れていたのかちらほら顔を出す。 

 

 一人一人に渡していくと嬉しそうな顔が良く見える。 

 

 「お替わりもできるから、ゆっくりたべなね」 

 

 子供達全員にいきわたったら、いただきますをして一斉に食べ始める。 

 

 この後はリリやねね、自分達の用意をして自分達も食べ始めるのだが、たまに子供達がどんな様子で食べているか、しっかり食べれているか確認もする。 

 

 「あぐ!あぐぐ!美味しい!美味しい!」 

 

 「アレス、もっとゆっくりたべな」 

 

 「おにちゃ!みて!おいちいのよ」 

 

 「リーナ、もべとべとだ」 

 

 と様子をみながら子供の世話をする。 

 

 中々食べるのが下手な子達の世話なども焼いていると、ねねから声がかかる。 

 

 「おにいちゃ~ん、準備できたよ~」 

 

 年長組の男の子、ダグ 

 

 「兄ちゃん、俺がみてるから、兄ちゃんも飯いってきてよ」 

 

 ダグに言われて、俺は奥の居間の方に引っ込む。 

 

 「いいにお~い!ハンバーグ!なんかこれだけは、最初っからこの味って感じでお兄ちゃんが最初に作ってくれた時を思い出すね」 

 

 集めてミンチにして食べるってのは途中で思いついて、最初は普通に牛の肉で作ってたっけ。 

 

 味もあれから結構変えてるけど、ねねやリリにとっては定食屋を開いて初期の頃に作った思い出の料理なのかもしれない。 

 

 「店には出してないけど、ねねとリリには結構ハンバーグだしてるもんね」 

 

 「うん!チーズにデミグラス!おろしポン酢も好き!」 

 

 「カレーも卵も好き!だけど何もかけてない奴も味がして好き!そのままでもすっごく美味しいもの!あと私はポテトサラダやフライドポテトも一緒に食べるのが好きです!」 

 

 リリが凄く嬉しそうに答える。 

 

 「この間の甘いマスタード!あれが今は一番好き!」 

 

 ねねはマスタードが気に入ったみたいだった。 

 

 「「いただきま~す」」 

 

 「もぐ!んぐんぐ!んんんん~!噛んだ瞬間に飲みものになるよ!つるんって喉に入っていくみたい!ここにお米を!!もぐ!もぐ!ンフー・・・・ごくん!美味しい!」 

 

 「柔らかくって!普通のお肉とは全然違う!それでもってこの大きさ!お肉で口いっぱいの美味しさ!贅沢だわ~・・・・」 

 

 「んねも!んえもたべる!!」 

 

 「はいはい、あ~ん、アリスとキャス子は・・・・・ダイジョブそうだな」 

 

 「んぐんぐんぐ!あああっ!あ~ん」 

 

 「はいはい」 

 

 「野菜もしゃくしゃくで美味しい!小さなトマト!チェリーみたいにあま~い」 

 

 「程よいマヨネーズが美味しい、食べやすいし、いっぱいたべれちゃう!」 

 

 そして子供達が何よりすきなのが、一緒についてくる味噌汁、ではなく、コーンポタージュである。 

 

 「甘くて濃厚で美味しい!パンにつけても美味しそうだけど、なくなちゃった!ねねおかわり!」 

 

 「癖になるよね!このスープだけでもお客さん喜びそう!私もお替わり!」 

 

 実の粒からだけじゃなく、剥いたあとの芯を切って丁寧に出汁をクリームを混ぜ合わせたコーンポタージュ、異世界ダンジョン産のミルクコーンを使った一杯。 

 

 ポップコーンにしてもほんのりミルクの味がして美味しい、コーン自体がまろやかでクリーミーでスープにするのに、これ以上はないだろうと言える程、ポタージュとの相性がいい。 

 

 初めて作った時、子供達で鍋の取り合いになるほど、お替わりにお替わりを重ねて、まさに大戦争だった。 

 

 これが肉肉しいハンバーグと交互に食べると、互いに美味さを倍増させるが如く美味いのだ。 

 

 大量に仕込むのだが、あればあるだけ飲もうとするので、全部は出さない。 

 

 「にいちゃ~ん!ご馳走様!食器も洗って片しといたよ!」 

 

 「ダグ、ありがとう、午後も無理しないでがんばれ」 

 

 「うん!今日の晩御飯は何!?」 

 

 「はは、どうしようかな~、ダグの好きな料理作ろうか?」 

 

 「いいの!?俺あれが食いたい!!兄ちゃんとアリスが食ってた、魔物の頭を煮た奴!!!」 

 

 「あれか!?あれは確かに理性が飛ぶほど美味いが・・・・・」 

 

 晩御飯に魔物の頭を煮たものをそのままドン!ってグロくないか?サバトか何かにみえるきが・・・・・・割って細かく分割して煮込めばいいか、一番うまい所は外側のコラーゲンたっぷりの皮だしな。 

 

 「わかった!」 

 

 「やった~!楽しみだな~、いってきま~す!」 

 

 ダグや子供達を見送って、俺達もの食事も終わった。 

 

 「と~ま~、はらへったよ~」 

 

 「あれ、ニーアさん、今日いなかったからギルドで食べてるのかと思ってた」 

 

 「いや、飯は食いに行った。八百万に似た店ができたって噂が流れてたから、毎度の事ながらギムレッドと確認の為にな。でもよぉ~出てくるもん出てくるもん、まずこの街の水準の料理じゃなくてなぁ・・・・・明らかにとーまの料理やアステリオスの料理をパクっただろう見た目はしてんだけどさぁ、問題の味がなぁ・・・・・久々にまずいもん食っていっきに力が抜けた。しかもその店がなぁ、他国の公爵が後ろにいる料理屋でさぁ、ギムレッドがブチ切れて商業ギルドの営業許可を取り消すって大騒ぎ、それもこれもドティの本を読んだ公爵が八百万の味やアステリオスの技術を盗もうと派遣した奴らっぽくてな、記録の宝珠や盗み見る宝珠なんかもあって、公爵、引いては国に抗議する事になった」 

 

 「ドティには軽率に本書いて責任とれんのか!!って抗議したけどさぁ」 

 

 「さぁおい!言われてますよ!さぁ!責任!とれんのかい!とれないのかい!!さぁ・・・・・・とれ!・・・・・ない!!!」 

 

 「いやとれんのかい!」 

 

 「まぁドティの本はレビュー本だからなぁ、責任も何もないだろ」 

 

 「簡単そうだから真似しようって公爵の考えが浅はかだぜ」 

 

 といった感じで、今各国から料理人がウェールズに集結、腕に自信のある店が第二の八百万になろうと、店を開店しようとしていのだとか、ウェールズを舞台にしたのは、ここの住人がそれだけ舌が肥えていて、ウェールズで大勢の客を満足させられれば、世界的な名店になることは確実だといわれているからなのだとか。 

 

 「だからって、新しい店が出来ては、あたしとギムレッドでまわってるけど、まともな店はないね。おひょ~!ハンバーグだ!!やっぱ飯はとーまの飯じゃないと!!いただきま~す!!」 

 

 ウェールズに料理人まで終結しはじめるのだった

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