第121話八百万 炊き込みご飯

 炊き込みご飯の日 

 

 日本の主食 米 炊き込みご飯の始まりとして思いつくのはお赤飯、今でこそお赤飯は苦手な人も多いと思うが、昔の人は小豆がご飯に入っている事を大層喜んだそうな。 

 

 子供達の贅沢と言えば、小豆がはいったご飯、小豆まんまが食べたいとよく言った様だ。 

 

 八百万の炊き込みご飯の日 

 

 ごぼう、にんじん、こんにゃく、油揚げ、干しシイタケが入っていて、出汁の味も効いている。 

 

 米は異世界産のエルフ国で作られる、つやつやの真珠米、こんにゃくと油揚げは地球産の物を、にんじんは甘味も強い月光人参、ごぼうは大地の風味が強く感じるタイタンごぼうを使う。 

 

 醬油とみりん、出汁汁で味付けされた米は豪華で野菜たちの味も際立ち、鼻を抜ける風味が心地よい、まさにこれだけで大満足の米! 

 

 おかずには、出汁まき卵、しかも鳳凰の卵の出汁まき卵がまた美味い!それに八百万では定番の煮物、春キャベツの塩漬けパリパリと癖になる。 

 

 そんでもって味噌汁は豚汁!地龍豚の肉がはいって、野菜もごろごろ入ってる豚汁!贅沢だ。 

 

 八百万が出来る前、米なんて誰も見向きもしなかった。 

 

 エルフが食べる野菜?くらいの認識で、それもサラダにカリカリにした米が少し振りかけられたりとか、ポテトの様に隅にちょっと盛られている、それが米の立ち位置だった。 

 

 そんなまぁ無難な米が、八百万で出された米は俺達が知ってるのとはちょっと?否かなり違ってた。 

 

 つやつやのむっちりした米、噛めばむっちりとむにむにと弾力よく、俺はちょっと硬めに炊かれているのが好きだった。 

 

 これに濃い味のおかずが良く合う、おかずを口に入れてからの米、米を流し込むこの感覚がいい!濃い味の口になってしまった所に、ナチュラルな米がまた美味いのだ。 

 

 そうして煮物やヒジキ、漬物などをつまみ、味噌汁を飲む。 

 

 順番なんてひとそれぞれだと思うが、副菜も豊かで大忙し、一人前にもられたそれらを計算しながら順当に食べるのだ。 

 

 主食と言えば、パンや小麦、大麦に手を加えた物、これ以外に考えられなかった。 

 

 それが米!なるほど!エルフが米をよく食べる理由がわかった!あいつらこんな食べ方を隠してたんだな!なんて思ってエルフの友人に聞いてみれば。 

 

 エルフでもこんな食べ方はしないという。 

 

 うん?つまりこの米を炊き上げるってのは、完全にこの店のオリジナルなのか?よくみりゃエルフも初めて見るかの様に驚いて、それはもう美味そうに食ってる。 

 

 野菜好きのエルフですら思いつかなかった、炊き上げるって方法で米を提供するこの店、すげぇな。 

 

 それからはもう米は当たり前の様に、八百万で続ける。 

 

 斗真の旦那の故郷の箸なんかも教えられながら使い始めると、これが便利で食いものが食べやすい! 

 

 八百万の流儀に染まりながら、今日のおかずはなんだろうか?ラーメンも美味いがやはり米が食いたい、あののど越し、ぐいぐいと米を喉に流し込む感覚と満足感。 

 

 またおかずが豪華だ。 

 

 俺が食ったおかずはどれも最高だった。 

 

 ハンバーグ、すき焼き、とんかつにとろサバの味噌煮、生姜焼き、牛タン、ウナギ、天丼、チキン南蛮、地龍のステーキ、野菜炒めに背油、ニンニクの芽の炒め物、家系ラーメンに米も最高だった。 

 

 中華の日には激震が走った。 

 

 米が・・・・・米が、見た事もない料理に仕上がってる。 

 

 チャーハンの登場だ。 

 

 色んな具が入って!焼いてあって香ばしく、脂の味もして、美味い!美味い!美味い! 

 

 そうきたかぁ~~~~米に味付けして、炒める!そうきたかぁ~~と本当に思った。 

 

 そんなこんなで思えば、色んな料理を食ったもんだ。 

 

 そんな中出て来た料理は、炊き込みご飯だった。 

 

 そうチャーハンとは違う米に味を付けた料理!もうすっかり米にはまった常連たちは大喜び!味もこれまた美味い!普通に考えて、定食の主役と言えばおかずだ。 

 

 おかずを食って米くって、まるで一つの料理かの様に一体感を楽しむのが定食なんだ。 

 

 ところが、炊き込みご飯、こいつときたら米だけで独立してやがる。 

 

 白飯が美味いからって白飯だけバクバク食うのはちょっと違う?気がする、でも握り飯だと白飯に塩しか味付けてないのに、満足感があるんだから不思議だ。 

 

 もう完全に独立国家を作り上げてる、炊き込みご飯、米の甘味も感じつつ、醬油と何かの出汁の味がしっかりきいていて、また刻まれた人参の味、ごぼう、こんにゃく、シイタケ、油揚げのこってり感もしっかり感じで、もうこれだけでバクバク、ごくごく食べ進める! 

 

 口いっぱいに炊き込みご飯を詰め込んで!野生児みたいに出汁まき卵もパクリ!もぐもぐもぐのごくんときたら煮物の里いもをパクリ!ヒジキの佃煮をもぐもぐ!んでもってキャベツの浅漬けのサクサク感を味わったら、豚汁をすする。 

 

 たは~~・・・・・うんめぇ!周りをみてみると・・・・・んんん?なんか常連のあいつだけなんか違うの食ってんな?目ざとく見つけると、ねねちゃんをこ~っそりよんで、小さな声で、ねねちゃん、あいつ、あいつのアレ、俺にも頂戴よ。なんてこそこそと言うと「よく見てたね~」と笑って奥から小皿をもってくる。 

 

 こういうのは大勢にばらさないで、今みたいにこそこそやるのが、八百万常連の暗黙のルールだ。 

 

 ねねちゃんがもってきてくれたのは、なんと腸詰、ウィンナーって奴と、白身を抜いた卵黄。 

 

 まずはウィンナーをパクリとやると、皮がぷっつりと歯切れよく切れ、脂がじゅわわっと出る!美味い!そこに炊き込みご飯を掻っ込むとやっぱりうめぇ! 

 

 もう一つの卵黄・・・・・これは?と考えていると、なるほど崩して炊き込みご飯にかけるのか!? 

 

 卵黄だけの濃厚な黄身を崩してとろ~りと炊き込みご飯にかけて、ちょちょいとまぜて、がつがつと食うと、まろやか~・・・・・濃い黄身の濃厚な味と炊き込みご飯の濃い味が絡み合って、贅沢の極みみたいな味になってやがる!思わずねじり鉢巻きなんかまいて一人だんじり祭りのはじまりだ!っつってな馬鹿野郎って! 

 

 濃厚な炊き込みご飯にウィンナー、出汁まき卵!煮物、ヒジキ、漬物、もう何も言う事なんてねぇ! 

 

 最後に豚汁を味わって、俺の戦いは終わった。 

 

 ふぅと一息ついた、後の水!これがまた美味い!。 

 

 水が美味くなったってのも、今は昔、贅沢なもんだねぇなんつってな、お代の銅貨5枚を払って店を出る。 

 

 これだけ!これだけ満足して、銅貨5枚!!もうおらぁ如何にかなっちまうよ、銅貨だけにときて、今日はここいらでお開きにさせていただきやす。 

 

 ごっつあん!!!!!

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