第67話八百万の休日
八百万の休日。
本人的にはゆるゆるとやっているつもりなのだが、なんだかんだで毎回満席の八百万、休日は完全に休んでいるかと思ったらそうでもない。
料理を作っては、アイテムボックス保存して大量ストックするのに休日はもってこいの日なので、結局一日料理を作っていたなんて事もしばしば。
たまにギムレットさんから商業ギルドの職員さんをお借りして、簡単な下ごしらえなどはその時に大量にしていたりしたのだが、それでも大変な量の下ごしらえなどがあった。
この度、そんな大量の皮むきや下ごしらえから解放される魔道具が出た!
皮を向いた状態でマジックボックスに保存すると、後は素材を入れるだけで皮むきをしてくれる調理ボックス!しかも皮むきだけではない、どんな切り方にも対応して魚も三枚卸など、一番しんどかった内臓の下処理も記憶させれば100個でも1000個でもやってくれる。
素材の洗浄からカット、串打ちなどなんでもござれ!焼き!蒸し!揚げ!などもベストの時間を教えると、素材の熱伝導率をみてベストのタイミングで出してくれる優れもの!そして魔道鍋!食べ物の旨味を抽出から三日煮込んだ状態のものをセットしてポチっと押せば!一瞬で三日間煮込んだカレーが!ラーメンの出しも物凄いクオリティの物が一瞬で出来上がる!超超超便利アイテム!
こんな便利アイテムあってもう僕は料理人じゃないかもしれない、でもこのアイテム自体が非売品な上に僕しか使えないのと、あくまで出来上がる料理は僕と言う個性を引き継いだものになるので、もっと他の高級な料理人の味が出したい!ってなったら僕自身が努力してまずは覚えなきゃいけないらしい、あくまでも調理の補助であり、主人と一緒に育っていくタイプの魔道具なのだとか。
でもこれによって料理を大量にストックして熱々の状態でお客さんに出すのがとても簡単になった。
休日を返上しての料理の作成や下ごしらえなどから解放されたのだ。
これも魔道具師のフラメル・トリスメギストスさんのおかげだ。
魔道具師フラメル・トリスメギストス
世界的に有名でSSSランクを超えている名声をもつ、彼女の発明で救われた国は多く、その発明と同じ回数やらかしてもいる。
浮島を要塞化して住んでいるはずなのだが、いつの間にかウェールズの街に滞在していて八百万で食事をよくとるようになる。
斗真の仕事量の多さを大変だと思い、今回の魔道具を作成してプレゼントする事に決めたらしい。
最近では客前に出る事もなく、リリとねねにたまにニーアさんにホールは任せっぱなしだったし、休日は仕込みをして、本業の仕事もしてあとは眠るなんて、完全にブラックに片足突っ込んでいる様な生活になりかけてた。
久々にゆっくり休んだのでやる気が漲ってきている!最初の頃の様だ!新しい八百万名物の日でも作ろうかな?いいかも、フライドチキンの日なんてありかなぁ。
まずはどの鳥をフライドチキンにするか選ぶ、輝き鳥、鳳、ドードー鳥、琥珀鳥、黄金鳥、紅鳥、ボアバイソンロック、このボアバイソンロックは豚と牛と鳥が混じったかのような魔物で巨体で美味しい上に肉の部分も沢山とれて非常に人気だ、これを使おう!
めんどくさいのでロック鳥と呼ぶが、骨も不思議な入り方をしてたり、小さな骨があったりで骨格もよくわからんがフライドチキンにするなら骨にしゃぶりつくようなのがいいから、あながちまちがいじゃないかも。
インターネットで有名店のスパイスや衣のつけ方を、そのまま魔道具にインプット、更にそこからロック鳥にはどんなスパイスと衣のつけ具合がいいか黄金比を割り出し、カット、揚げ、そして出て来るチキン!なんてこった!一瞬じゃないか!やばいぞ魔道具!
揚がったフライドチキンを出してみると、やばい!匂いがやばい!ウナギの煙が店から立ち上るが如く!カレーの匂いが店から漂ってくるかのような魅惑の香!スパイスと鳥?肉の旨味の匂いが店に広がる!あかん!理性が飛ぶ!本能のままに食らいつきたくなる!僕の中の野生が飛び出て来る。
がっつがっつはふはぐ!がっつがっつ!なんちゅう美味さだ!パリパリの皮!鳥なのか!?豚なのか!?どっちの旨味も特徴もある!甘いくまろやかな脂!うんまぁい!肉の弾力は鳥みたいだけど噛むと、どこかトンカツの様な肉の食感とローストビーフの様な?牛ステーキのレアの様な感触と味覚もある!巡る巡る!味が舌の上で鳥と豚と牛の味が巡り巡る!うん!これは米!って感じじゃない、このチキン一つで確実に完成してる!付け合わせるならやっぱりポテトやサラダ、オリーブオイルとガーリックのパンなら相性がいいかもしれない。
「おにーちゃあああああん!何この匂い!香ばしい、いい匂いだよ!!」
「お腹がきゅーきゅーなっちゃう匂いです!」
「腹減ったー!店の前に列ができそうな程、客が様子伺ってたぞ、解散させたけどさぁ、何この匂い!我慢できない!私にもくれ!?」
「フライドチキンの日を作ろうと思って試作してたら、めちゃうまなのができちゃって、ボアバイソンロックだっけ?バイソンロックボアだっけ??まぁいいや、それでフライドチキン作ったら、もおおおおおおおおおおおおう、滅茶苦茶うまくってさ」
「あ~ん!説明はいいから!ねねにも頂戴!」
「私も!私も食べたいです!」
「もちろん、あたしも!」
はいはいと、すぐあがった骨付き肉のフライドチキンを渡すと、三人とも匂いで本能が呼び覚まされたか、ノータイムでかぶりつく。
「あぐあぐあうぐ!んんんんん!なにこれ!未体験なお肉の味!広がり!ふっしぎー!豚と牛の味もする!もぐもぐもぐ!!んんん!皮目がパリサクでめっちゃ美味しい!」
「じゅわじゅわで最高!むちむちなのにざっくりと歯が入ります!どこか牛さんのレア感もあって何とも言えないです!これは表現が難しいです!骨回りのお肉がまた不思議と美味しくて!軟骨もこりこり!骨まで愛おしいです!」
「やばい!うますぎる!!何個でも食えちゃうかも!表面の脂身がまた特別感満載であたしは好きだ!衣がなくなって露出する肉も美味い!二度美味しいって奴かこれ!」
更にはヤンニョムタレとハニーマスタードに肉の旨味がするバーベキューソースも用意してみる。
「何この赤いタレ!辛いけど甘味もあって病みつきになる!」
「黄色いタレもいいですね!甘味!酸味!辛み!バランスよくてそそります!」
「この普通のソース!普通じゃない!!脂との相性が抜群なんだ!脂と混ざる事で風味や香りも変わって!一番変化するのはこれじゃないか?美味いよこれ!おかわり!!」
「はいはいってそれは俺の手だ!ニーア!!」
「ごめん!我慢できなくてかぶりついちまった。えへへへ」
笑いごとではない、手にはくっきり歯型が出来上がる。
「最近忙しかったけどさ、これからは休みの日は一緒に休めそうなんだ。休みの日はお弁当もってクラウスさん達が管理してる宿の方にみんなで遊びに行こうか?」
「ええ!いいのお兄ちゃん!」
「うん、それにオーナーはリリとねねだからね、自分達の宿にどんなものがあって、どれだけ繁盛してるか、一般開放してる所はどれだけ街の人に人気かとかも気になるでしょ?リリとねねのお母さんが残してくれた庭園でお茶するのもいいんじゃないかな?二人も仕事もっと楽になるから、庭園に季節ごとに植える花を選ぶとかもっと色々あってもいいと思ってさ、思い切ってあっちにお泊りにいくのも楽しいんじゃないかな?」
「わぁ!とっても素敵です!お母さんの庭園でお茶!楽しそう!」
「私も!私もいくぞ!」
「もちろん、みんなでいこう。馬房や乗馬体験コーナーとかも繁盛してるみたいだし、アトラクションの入れ変えとかもやってもいいかもね」
「わぁ!何回かいっただけで、最近はめっきり忙しかったもんね!アトラクションで遊びた~い!」
「宿の中には温泉もあるし!遊技場もあるし、夜景が綺麗でバーって場所では夜景をみながら大人はお酒、子供はジュースを飲んで楽しむそうですよ」
「カクテルも一度記憶させれば、次からはアイテムボックスが中にある材料で再現してくれるから、ルーカスさんやフィガロさんギムレットさんにクリスタさん呼んでお酒を楽しむのもありじゃないかな?僕はお酒のめないからお世話する係になっちゃうけど、みんなでいれば楽しいよね。ジュースでカクテル作っても面白そうだし、みんながお酒飲んでる間は僕がお菓子作りしても楽しそうかな」
「お菓子!ねねもやりたいかも!」
「私もです!お菓子は作ったことないです!」
「いい魔道具もらったなぁ、昔みたいに余裕ある斗真がみれて嬉しいよ」
いつの間にか忙しくて、余裕がなくなってたけど、これからは休日の日をみんなで積極的に楽しむのもいいんじゃないかな?折角の異世界だしもっと楽しまないとね。
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