第66話八百万名物 パスタの日
カレーの日に続いて、八百万の名物料理、銀貨1枚でもお腹いっぱい食べられる日の料理を紹介しよう。
その名もパスタの日!
これも初めは料理になれないで、しかも思った以上にお店が繁盛してしまった為に、手の抜いた日を作りたいと思った斗真が始めた事だった。
まぁ単純な話パスタなら茹でてソースをかければ、すぐに出せると考えた訳でございます。
今でこそ一杯銀貨一枚で、普通盛りから特盛、巨人盛り、火山盛りと選べる所ですが、当初店で出していたときは銀貨一枚に加えてお替わり自由の何杯でも食べていい状態だったんです。
これまたパスタを掻っ込むみんなの速さもあって、回転率が高く、斗真は麺を大量に茹で、終いにはミートソースがなくなり、レトルトソースをかける所まで追い詰められたとか?
そんな大繁盛した事から、カレーの日同様にお客様からの声を聴いてパスタの日を作る事となりました。
大鍋には時雨牛のひき肉をふんだんに使って、王玉玉ねぎと紅玉トマトの美味さが爆発するミートソースの鍋がぐつぐつと煮られている。
もう一つの準備は完全に日本の食材、たらことバターと醬油が用意されている、たらこバター醬油!これもまた八百万パスタの日には欠かせない、お客様の大好物の一つとなりました。
そしてもう一つはこれこそ原価的には安くすむが、フライパンで調理するためにちょっとだけ手間がかかるペペロンチーノ、おいおいペペロンチーノなんか一番簡単じゃねーかとおもうでしょ?でも相手は大量のお客様、ミートソースやたらこバターの様に茹でてすぐに和えて出せるパスタと比べると、やはりフライパンを使ってニンニクとオイルを丁寧に和えるのとではやはり手間が違う、じゃあレトルトみたいに和えるだけのペペロンチーノつかえばいいじゃないかって?斗真も最初はそれでいいかもと考えた。
でもお客さんからは銀貨一枚お代を頂いている。
そう考えると、素人でも精一杯のもんを食ってもらいたいと思うのが人情ってもんでございます。
銀貨一枚の料理に銀貨一枚以上の価値を感じてもらって、得して美味しくて腹いっぱい満足しての八百万、そう考えると手を抜きたいんだけど手を抜けない、という悪循環に陥る。
本場のペペロンチーノの動画から、日本で人気の動画シェフの作り方まで食い入るように見て、手順を覚えて、素人なら素人なりに全力のペペロンを!ベーコンには異世界産のキャラメル豚のベーコンを態々庭先で作って、ニンニクは日本で生産量第三位の香川県産のものと、異世界産のニンニクの紫蘇ニンニクを使って、さっぱり感と強烈なニンニクの美味さを前面に出したペペロンチーノを作った。
ニンニクは臭い!臭いけど美味い!しかも紫蘇ニンニクの爽やかな味と強烈で癖になる旨味!そのままニンニク揚げにしても強烈に美味い!唯一の救いは一時間程度ニンニクの匂いが収まってくるところだ。
十二星座団 師団長 牡羊座アリエスのレム 牡牛座タウラスのビーチェ 双子座ジェミニのミミ
「だ~か~ら~!パスタって言ったらミートソース一択に決まってんじゃん!八百万のミートソースは最強!最高!なんだから!しかも追加料金でごろごろのミートボールもつけてくれるんだよ!」
行列にまじり師団長のレムが大声をあげる、これに答えたのは同じく師団長のビーチェだった。
「最強なのはたらこバター!たらこ!お醤油!そしてバターがまろやかに一つにしてくれる・・・・・・この美味しさがわからないなんて!それでもアンタ十二星座団の師団長なんてよくできるね!?いっそ後輩にアリエスを譲ったら?」
長い金髪の髪をゆらして、いつもはおっとりした顔と表情と口調のゆるふわガールな落ち着き娘のレムなのだが、顔を真っ赤にしてタレ目を吊り上げて怒っている。
一方ポニーテルに少し日焼けした小さな女の子ビーチェも可愛い顔をしているのに、とんでもない暴言が口から飛び出る。
一人短めの髪をいじりながら、眼鏡をかけ小説片手に列に並んで知らんふりをしているジェミニのミミ。
「そこまで言うのね?この怪力ちび娘!?なぁ~にがタウラスよ!アンタなんかどっからどうみてもウサギに牙はやしたのが精々のくせして!?」
「あぁ~ん!レムがちびっていった!言っちゃいけない事いった!アテナ姉さまとリリア姉さまに言いつけてやる!レムなんか羊そっくりなくせに!?」
「なによ!」
「やる気!」
二人の闘気と殺気が爆発的に上昇してくなか、列の人間はおいおいと言った感じで二人から距離をとる。
「食らいなさい!このアリエスの一撃を!!」
「タウラスの名が伊達じゃないって事見せてやろうじゃない!!」
「おい!誰かとめろ!こいつらマジだぞ!!」
「無理だ!武闘派で鳴らした十二星座団だぞ!止められるわけがねぇ!退避!!列の人間は安全圏まで退避しろ!!」
「SSかSSS級だろ!?しゃれになんねーよ!誰かクラウスさん呼んで来い!結界師のルーナちゃんでもいいぞ!ガンダルフ様!にエスメラルダ様!はみつかるわけもねぇか!」
ぶつかり合おうとしている、にらみ合っているその時、ジェミニのミミが読んでいる本をパンと閉じ、二人を見つめると
「二人とも、こんな所で戦ったら八百万の皆さんに迷惑がかかる」
「ミミ!」
「だってレムが!」
「周りをみて、列もぐちゃぐちゃになって他のお客さんにも迷惑かけてる、斗真さんが悲しむ事になるよ」
「それは・・・・・・」
「そう言われると・・・・・・・・」
「ほら、他のお客さんにも謝って、皆さん申し訳ありません。熱くなるとポンコツな子達なんです」
「はぅぅ、ごめんなさい、皆さま、ご迷惑おかけしました」
「うぅぅぅごめんなさい」
周りの人間達は、納まってくれてよかったと、まぁまぁいいじゃないか八百万っていったらこんな事しょっちゅうだしなって空気が流れる。
列も綺麗に元通りになり、三人はまた談笑を始める。
「それで?なんでもめてたの?」
「どのパスタが最強無敵かで喧嘩になっちゃって、今思えば恥ずかしいわ、駄目ねむきになっちゃって」
「そうだよね、それに八百万のパスタはどれもとおおおおっても美味しいもんね!」
するとミミが眼鏡をクィとあげて微笑む。
「私の中の最強はペペロンチーノ!これ一択!あのニンニクの味が癖になったらたまらない!臭くてもいい!だって美味しいんだもの!!」
「げぇ!ミミはペペロン推しかぁ、美味しいけど匂いがね・・・・ちょっと恥ずかしいかなって」
「ビーチェはペペロン好きなのもわかるよぉ、あれは確かに強烈に美味しいよね、でも毎日ってよりたまに無性に食べたくなる奴って感じ!たらこはさぁ三食の内一食はタラコバターでいいかなって毎日行ける感じがいいの」
「あ~それわかるかも!私もミートソースは週一って感じ!ペペロンは月一かな?」
「ペペロン巨人盛り、あののど越しといい、強烈な匂いと味の暴力といい最高」
「ミートも最高だよ~、時雨牛とか毎回お肉や出汁を変えてるんだって!飽きがこないのも納得だよねぇ!またミートボールが最高なの!小さなハンバーグみたいで肉感満載のじゅんわりジューシーでさぁ、トマトの酸味で爽やかだし、玉ねぎの甘味もすごいんだよ~」
「うぅぅぅぅん、そういわれるとミートもいいかも、でもタラコのあの独特の海の香と醬油とバターのまろやかなコクと塩味、海苔がまたいい仕事するんだよなぁ、毎日でもいけるけど、実際は毎日食べられないし・・・・・・うん!今回はタラコバターにやぱりしよう!次回でミートにペペロンにしようかな?それともお替わりしちゃう??」
「それもいい、一回目は普通の大盛で、二回目には違う味でもいいかも」
「いっそみんなで一口づつシェアしない?それが一番楽っぽくない?」
「「おおぉ~~」」
「レムあったまいい!」
「それでいこう!」
「楽しみ~」
パスタの日、お客さん達にも大盛況のようですね、しかし斗真は結局手を抜く事ができたのか?どうなのか?
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