第38話A級冒険者 ラウド グラナダファミリア所属 天丼再び!

 -A級冒険者 ラウド グラナダファミリア所属ー 

 

 最近グラナダ領から引っ越してきて、リナリア嬢も拠点をウェールズに移すって言うからクランは大騒ぎ、なんでウェールズ?まぁ近いのが唯一の救いなんだけど。 

 

 お嬢は八百万って宿屋と飯屋がそれは気に入ったみたいで、八百万の店主のあの旦那もお嬢を知っている様でVIP客扱いしてくれてた、流石はお嬢だと思ったね。 

 

 それに確かにあの設備は凄いわ、面白いもんが沢山あって、来たばかりの俺達は遊びつくして、風呂まで堪能した。 

 

 お嬢はあの旦那をグラナダまでどうにか招待したいって話だったな。 

 

 それに料理も美味いこと美味い事!初めて食った時の飯の衝撃、あれは忘れられない、冒険者ギルドにいると、ギルドマスターが今日の飯がどんな飯か告知してくれるんだ。 

 

 今日の定食はとろけサバだって聞いた時、俺は肩を落とした。 

 

 魚はグラナダ領の名産で、色んな魚をそりゃ食べたもんだ、グラナダに限らず港町の人間はほとんど毎日魚を食う、今日も魚かよってくらい魚を食う、だからこそ外で飯を食う時はみんな肉を注文するもんなんだ。 

 

 どうする?今日は他の店いくか?でもなぁ・・・・・そんな事考えながら八百万の店に行くと。 


 いつもよりは並びがちょっと緩いかな?なんて感じの人入りだった。 

 

 なんとはなしに俺も流れで列に並ぶ、とろけサバやとろけイワシなんかは安くて美味い、まさに庶民の味方って魚で、食った事ない奴を探す事の方が難しいくらいだ。 

 

 そんな滅茶滅茶一般的で、超庶民の味方の魚。 

 

 話し声に耳を傾けると、八百万の事だから俺達が知らない調理法で出してくるかもしれないとか、八百万だからなぁ、ただの塩焼きって事はないだろうとか、色々聞こえてくる。 

 

 普通思いつくのは、塩焼きだろ後はスパイスで煮込むとか、生は怖くて食えねぇ・・・そんなもんだよなぁ。 

 

 ここの店は腹痛にならずに魚が食えるのが自慢って話も聞いた事があるから、もしかしたら生で出てくるかもしれない!それはそれで面白いよなぁ、流石に港町でも生で食うって事はない、昔っから注意されてる事だし、大人が口酸っぱくしながら何度も言うくらい、生ではくうなって躾けられてんだから、それを安全に食えるなんて面白いしどんな味か興味がつきない。 

 

 お嬢が酒の席でよく語るんだよ、八百万の寿司はそれはもう夢みたいな美味さで、色んな魚達が出てきて、しっかり仕事がしてあってとても美味しかった!私はあの料理に、港町の我が領が名物となって人々で賑わう夢をみた!ってそれは嬉しそうに語るんだ。 

 

 生で出すなんてある意味で料理とは言えないんじゃないか?とかも思ったりもしたんだが、お嬢がそれほど感動したのなら、味は本物なんだろうなと思う。 

 

 あれこれ考えてると俺の番が来た、とろけサバかぁ・・・・。 

 

 まっていると、店はいい匂い、食欲をそそる匂いだ。 

 

 「は~い、今日はとろけサバの味噌煮にサバの押し寿司もついてあるよ!ウェールズの隣にある港町で大量だったんだ!脂がのってて美味しいよ!」 

 

 味噌煮?味噌って調味料で煮たのか?それに寿司!これかぁお嬢が言ってたの!まさに米の上にサバが乗ってるだけ、こんなん美味いのか?俺でも作れそうだぞ?。 

 

 まずは味噌煮を一口、もぐもぐうん!こいつはうめぇ!なんじゃあこりゃあ!俺の知らないサバの味!甘くてとろっとしてて身はしっかりとホクホクなのに甘いタレと良くなじむ! 

 

 なるほど!ここで米か!味噌煮と米!滅茶苦茶美味い!。 

 

 ハラミの脂の乗ってる所が強暴的にやばい!とろける濃厚な脂に甘味噌が絡んで、噛みたいけどあっと言うまに飲み込んじまった!マジでとろとろでやばい!美味すぎる!。 

 

 ジャガイモとこんにゃく、それに肉が入った煮物もいい味がして、紫蘇の塩漬けのキャベツがまたサクサクと爽やかな酸味、ごぼうと人参のきんぴらのジャキジャキ感もいい。 

 

 出汁巻き卵もふわふわしっとりで美味い!わかめのサラダ、程よい酸味で癖になる美味さ! 

 

 なんだ!このボリューム!こんなにいっぱいメイン以外にもついてくるのかよ! 

 

 そんでサバの押し寿司・・・・うほほほ!なんじゃこりゃ!極上にうめぇ!しっとりの程よい酸味に脂がじゅんわり出るのにさっぱりしていくらでも食えそうな爽やかさ!酸味もあるのに尖った酸っぱさじゃない!優しくまろやかで俺でも食える!何個でも食えちゃう!!!。 

 

 「味噌煮も美味い!押し寿司もやばい!!こりゃ美味すぎる!」 

 

 「お兄さん、押し寿司半分炙ってやろうか?」 

 

 「炙る?」 

 

 「火で炙ると脂がまたじゅわっと出てまるで違う食べ物みたいに美味いよ!」 

 

 「頼む!炙ってくれ!」 

 

 「こっちもだ!ねねちゃん頼む!」 

 

 「リリちゃ~ん!俺のも炙ってくれぇ!」 

 

 「こっちもだ!」 

 

 「俺のも頼む!」 

 

 「「はいは~い」」 

 

 目の前で炙ってもらうと、パチパチと皮に焦げがつき、じゅわじゅわと脂が溢れる。 

 

 炙りを思い切ってもぐもぐ!うぉ!炙る前のはしっとりとしてむちむちっとした感じから、ほろほろと簡単に崩れる感じに変わった、脂がまたじゅわじゅわでうめぇ!こんなに脂が出んのに酢飯が受け止めて、さっぱり食持ちよく喉奥に消えていく。 

 

 なんちゅう美味さじゃ!生の方はしっとりムチムチそれでいて脂の旨味も感じる、炙るとほろほろとして脂がじゅわじゅわっと噴き出るようじゃ、それでいて米と混ざり合うともう美味さの大爆発!どっちもいい所がありすぎて、どっちが好きとか言えないレベルだ!。 

 

 味噌煮は味噌煮でちょっとの量で米を沢山食ってしまう!まさにサバ祭り!スパイスで煮た奴も嫌いじゃないけど、どっちが好きか聞かれたら断然味噌煮だ!まろやかでとろとろ、天国みたいな味しやがって!!食べ慣れたサバがこんなに美味いだなんて、誰が考え付く? 

 

 サバの味噌煮!押し寿司!どれも極上だった・・・・最近バタバタしてたけど、なんか落ち着いたなぁ。 

 

 ちょっとした街並みを見て、俺今かなり幸せかもしれないとニヤニヤしちゃうのだった。 

 

  最近自分達が商売をしていると言う事を忘れるくらい、忙しい事は忙しいのだけど、なんだかお金を稼ぐ為に頑張っていると言うよりは、常連さんやお客さんが食べたい!と言ってくれるので頑張っているって感じの方が強い、そして自分も何処か、これ出したらお客さん喜んでくれるんだろうなぁ、なんて考えを前よりも強く考える事が増えた。 

 

 だから金儲けは二の次で、まずは満足して喜んでもらおうって気持ちが強い。 

 

 もちろんお金は大事だし、宿や常連さんの差し入れで仕入れ代が浮いてこれだけ余裕があるのだと言う事を忘れてはいけない。 

 

 今回は感謝の気持ちを込めて、天丼でいこうと思う。 

 

 以前身内だけで食べた天丼、みんなに好評で店で出すべきだって太鼓判もらったっけ。 

 

 それにキングサファイアエビもまだまだ実はあまっていたりする。 

 

 ああそうだ、クラウスさんが来た時臨時休業にしたから、エビと牡蠣のフライもアイテムボックスに大量に眠っている、これも放出しなきゃいけないな、まぁ次回かな?今回は天丼で。 

 

 キングサファイアエビ、身の中に卵を蓄えるのでぷりぷりのぷちぷちで極上に美味い!しかも大ぶりで身もたっぷり味わえる、この長く太いエビを二本!豪華に並べる。 

 

 次にジェルシュエルのもっちりして繊維が際立ってる貝柱をデカいので一個。 

 

 大葉の天ぷらにタラの芽、しし唐、レンコン、鳥マイタケ。 

 

 さらにでっかい影アナゴ!脂が乗って、しかもデカいこいつだけでも食いがいがある。 

 

 更にはインゲンにエンジェルフィッシュの身も乗せて、もう乗りすぎってくらいのもりもりの天丼!天ぷらが多いので、ご飯少なめに変更も可能で物足りない人には、天丼とざるそばのセットをお勧めしよう。 

 

 天丼だけでも結構お腹いっぱいになるから、ざるそばセットはそんなに出そうにないかな? 

 

 ご飯少なめにすれば、ざるそばセットでも丁度いいかもしれないな。 

 

 この世界の人達は体が資本で運動量も半端ない、それに獣人さん達も普通の人間の人より良く食べる感じだ、それでいて太った人がいないのは、魔力による身体強化など、通常の4~5倍の馬力を出す為エネルギー消費も激しいのだとか。 

 

 それが理由なのか、この世界の人は本当に美味しそうに食べてくれる。 

 

 たまに計算でも間違えたのか、お腹が空きすぎてげっそりした人とかも、生き返るなんていってもりもり食べて帰っていく事が多い。 

 

 そして天丼が出来上がった。 

 

 俺は天丼が大の好物だ、というか日本と言う国が食に対して凄すぎるのだ。 

 

 天丼チェーン店がまず美味い!どれもしっかり検証して美味いベストのタイミングを完全に時間で管理しているから、下手に揚がる心配がない、個人の感覚によるバラつきもなく、そしてチェーン店であるが故に、その店以下の天ぷら達は淘汰されてしまい、自然と天ぷらと言う料理のハードルがあがった。 

 

 下手な天ぷらを揚げると、効率化、徹底的に美味さを追求し簡単に調理できるチェーン店に負けてしまうからだ。 

 

 ある意味で現代までチェーン店に負けず、残っている天ぷらの店はまさに名店達であり、テストで言う平均点が80点や90点が当たり前の、極められた料理の一つでもある。 

 

 まぁ昔ながらの天ぷら屋さんなんかも残ってるけど、チェーン店が平均点を上げてしまった感はいなめない、下手な料理は○○のチェーン店よりまずいなんて言われ方しちゃう、残酷な時代なのだ。 

 

 俺の天ぷらはどうなのかって?そりゃなんの能力もなかったら、家庭レベルの普通の天ぷらとかもったりした衣の天ぷらなんかになっていたかもしれない、所が俺には料理人スキルがある、ダーツで高得点を外さずとる様に、衣の作り方から揚げ方まで完全に完璧な天ぷらを揚げることが出来る!! 

 

 料理人スキル・・・・・これもかなりのチートスキルだと思う、俺の様な素人がミシュランガイドブックで星2・3貰うほどの職人とタメはれるほど美味い調理、味付け、焼き、揚げなんかが出来るのだから。 

 

 でも日本人なら似た様な成長をするって女神様がいっていた、日本人は食のレベルが高いから全員が似た同じ様な成長をするって、だからある意味では平凡なのかもしれない。 

 

 甘ダレのかかった魅惑の天丼、前より確実に美味く出来た天丼・・・・・ぐいだい!!!

 

 先に暴走して食う前に、みんなが歩いてくる音がとたとたと聞こえてきた。 

 

 「いい匂い!お腹空いた~って!天丼だぁ!!ニーアちゃん!天丼だよぉ!」 

 

 「マジか!?なんだ!?祭りなのか!?今日はなんかいい日なのか!?」 

 

 「はぅ~丼から具が溢れてる!美味しそうな匂い!我慢できないよぉ!ねねもニーアちゃんも早く座ろう!!」 

 

 「「「「いただきます」」」」 

 

 エビ!キングサファイアエビ!やっばい!フライもいいけど、天丼やっばい!! 

 

 「ぷりさくの甘味がじゅんわり!そんでもってお米がさいこうだよぅ!」 

 

 「レンコンにしし唐に大葉にインゲン!野菜も美味いんだよなぁ!!なんで天ぷらの野菜ってご馳走になるんだろうなぁ!」 

 

 「影アナゴ!脂がじゅわじゅわ!それでいてふんわりしてほくほく!どれもお米にあうよぉ!」 

 

 「シェルジュエルの身もぷりぷりで、タラの芽もまた美味いなぁ!」 

 

 「天丼ってさぁ油で揚げたものなのに、べたべたしないし、嫌な胸焼けしないし凄いよね!」 

 

 「油っこいと最初は美味いんだけど、腹いっぱいになってくるときつくなるんだが、天丼なんか最後までぺろりだもんなぁ」 

 

 「漬物がまたさっぱりさせてくれて、あぐあぐ!あああ~いつの間にかお米大好きになってました!前までお米なんて全く食べてなかったのに!今はお米大好きです!」 

 

 「そうなんだよなぁ!わたしら箸も使える様になったし、常連も箸最近では使ってるからなぁ」 

 

 「味噌汁とお米がまた合うんだよね~ほっと一息ついちゃう」 

 

 「エンジェルフィッシュ!ふわふわで美味い!」 

 

 「どの材料も味が違うのが、しっかりと感じれてどれが一番なんて選べない!」 

 

 「あたしはエビも好きだけど、天丼に限っては野菜が美味いと思う!だってサラダくらいだろ野菜がメインになるなんてさぁ、でも天丼だと野菜も主役みたいにうめぇ!!」 

 

 「私は影アナゴが好き!だって前までイールみたいに、みんな見向きもしなかったのに!こんなにほくほくでじゅわじゅわで!タレにも合うなんて!凄すぎるよ!」 

 

 「俺は野菜もエビも貝も全部好きだなぁ、どれもマジで美味い!会心の出来だよ!これでまずいなんて言われたら、店一週間は休むかな?」 

 

 「そんな事言われたら、お代は結構なので追い出しちゃうかな?」 

 

 「あたしも怒髪天になる!」 

 

 「美味しいは人それぞれだけど、態々そんな事言う嫌な人はちょっと・・・」 

 

 まぁ合わなかったお客様は、うちの列にもう並ぼうなんて思わないだろうし、クレームないだけで改善点がない訳ではないか・・・・そうだね、出来るだけ多くの人に満足してもらえる様に、努力はこれからも出来る範囲で頑張っていこう。

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