第37話エルフ領領主エーテル・フォン・ユグルドラシア とろけサバ
-エルフ領領主エーテル・フォン・ユグルドラシアー
この国のエルフ領を治めるエーテル、それでいてエルフ国の国王の妹でもある彼女は稀人の噂を聞き、大分前からウェールズの街に潜伏していた。
稀人、八意斗真の料理は素晴らしく、エルフでも考え付かない調理法ばかり、エルフは他の種族に比べ寿命が長い為、ありとあらゆる事に飽きる傾向が強く、食の部分でもそれは強く、簡単にすませる、すませたいと思ったり、細かく調理する事を面倒と思う者も多く、それ故果物や木の実などすぐ口に入る物を好む傾向があるが、肉などを食わないわけでもなく、人が作る美食にはそれなりに興味を持つ。
すっかり八百万の料理に慣れ切って、常連となっていたエーテル。
ウェールズで冒険者稼業をやりながら毎日八百万に通っていた。
そんなある日ニーアギルドマスターの一言で、冒険者達に衝撃が走る。
なんと八百万でラーメンがまた作られるとの事だ!。
以前とは味の違う、濃厚なラーメンが出ると言う。
その言葉を聞いた瞬間に、冒険者達の一部は我先にと八百万に走った!知らない住人達はさぞ驚いた事だろう、だが八百万のラーメン!!前回はスープがなくなり次第終了で涙を飲んだ者達も多い、私は前回も食べれたし今回も譲る気は一切なかった。
今でも夢に見る、あの濃厚な鳥のスープ!塩味ですっきりとした後味に後引く旨味の強いスープ!そこに絡まる麺!ちゅるちゅると楽しく、小麦の香がまた良く、スープとの相性は抜群で、ネギ、メンマ、そしてなんともいえない旨味のチャーシューは極上だった。
卓上のゴマ、胡椒、酢、ラー油などを使えばまた違った一面が現れるラーメン。
あの魅惑のラーメンが!まさか違う味があるなんて考えもつかなかった!だってあの完成度だぞ!あれ一つでどれだけの時間と労力がかかると思う、あれだけの完成度があって、更には他の味があるなんて考え付くか?思いつくか?普通は一つ極めるので大変なはずだろ?
八百万につくと、ぐぬ!もう並んでいる!でも大丈夫なはずだ!安全圏なはずだ!
そして並んでいる客は、他の客、延いては住人達に迷惑にならない様に並ぶ。
きたああああ私の番だ!新たなラーメン!!どんな味なんだ!。
「いらっしゃいませ!今日は家系ラーメン、醬油豚骨だよ!ライスがついていてお替りは自由だよ。黄金豚はラウンズのガウェインさんからの差し入れで手に入ったから、格安だよ!びっくりだよ!」
席に案内され座る、店の中が強い豚の匂いだ、だがまぁ悪くないな。
周りを軽く見渡すと、どいつもこいつも美味そうにラーメンをすする。
「おまちどおさま!海苔とほうれん草、麺を一緒に、そのまま食べても美味しいし、にんにく乗せるとちょっと口臭くなるけど、びっくりするほど美味しくなるよ!スープに浸したノリでご飯を巻いてニンニク乗せて食べるのも最高だよ!スープとご飯めちゃくちゃ美味いよ!」
なんでカタコトなんだ!?ニンニク確かに匂いが強い!
うん、まずはスープから・・・・ズズっああああああ濃い!濃厚な味!なんだこれは!前回と全然違う!脳に響く様な味!また飲みたくなる!。
次だ麺だけを・・・ズルズル、うん!美味い!これだけ強いスープなのに小麦の風味をちゃんと感じる負けていない、むちむちもっちりの麺!。
言われた通りにやってみよう、海苔にほうれん草、麺、更にニンニクを乗せて、すする!
ぐあああああああ美味い!強烈な美味さだ!濃厚なスープに海苔の風味、ほうれん草の味、そしてガツンとしたニンニクの味!これらが混然一体となって爆発的に美味い!
以前のラーメンも美味かった!だがあっちはまだ大人しい方だったのか?どこかおしとやかな感じだ、だがこのラーメンはどうだ!?ドンっと力強く構えて、どうだ!!俺は美味いだろう!!と問いかけられるような、雷にでも打たれたかの様な衝撃の美味さ!
ここでちょっと米を食うと・・・・ふふっなるほど、スープと一緒に食った訳でもない、ただ米を食っただけなのに口の中のスープの後味と米が相性がいいのが、簡単にわかる。
海苔にほうれん草、米、ニンニクを乗せて、少し米にスープをかけて口に運べば、きたあああああああああああああああなんて暴力的な美味さ!!なるほど!麺を増やすわけでもなく、ここであえて米が食い放題な理由がわかる!くぅ!まだだ!まだ私はいけるぞ!これでもエルフの国の元姫だぞ!今も姫だが!!。
米をお替りして、ここであえて小休止、水を飲み!これがまた美味い!濃い味で染まった口が綺麗に流されていく!水が美味い!
さぁラストスパートだ!チャーシュー!なんだこのとろとろのチャーシューはこれは米の案件だろ!ほれみたことか!米とチャーシューの脂がまたしっとりとして合う!美味いぞ!更にここで、麺をすする!うん!米でも麺でもまとめて面倒みてやるぜ!って受け止めるスープの度量が広い!
半熟卵!いつからだろう、生や半熟卵に目がなくなったのは、もちろん他の店で食おうなんて思わない、ここだから!ここだから食える生の卵!黄身の濃厚な卵!。
スープも濃厚でクリーミーなのに黄身の濃厚さと混ざってもう何度私を驚かせれば君は気が済むんだ!そしてまた米!米ともやっぱり合っちゃうんだ~、美味しく混ざり合っちゃうんだ~。
麺、ニンニクのぶっ飛ぶ美味さ!そして米とチャーシュー!そこにニンニク!うおおおんんんこれも美味い!噛みしめる様に最後のチャーシューと米を堪能してフィニッシュ!
スープが少し残るが、私の中ではもうこれ以上ない幸福感に包まれている。
お腹がいっぱいなのに!苦しいはずなのに!なんとも言えない満足感!完食した達成感!
やはり間違いなかった、もし今日食べれなかったら私は自分を許せなかった!よがった!たべれてほんどうによかった!
思わず涙が出て来る。
故郷のみんなにも食べさせてあげたいなぁ。
国に斗真さん招待できたらなぁ。
ウェールズ近くの港町、そこで漁師を親子でやってる、フーガさんとマーサさん八百万亭に宿泊して、うちの料理を食べて満足して帰ってもらったのだが、その後フーガさん達から時々直接魚を購入したりするようになって、連絡をとりあっていたりする。
朝の段階で今日の漁の調子を聞いて、いい魚が入っているかを聞いて、中々良さそうな魚がいればアイテムボックス便と言う、アイテムボックスどうしが繋がっていて、遠い町ともやり取りができるボックスに投入されるので、それを回収に商業ギルドまでいくのだ。
フーガさんを紹介してくれたのは、何を隠そうこの街の魚の元締めルーカスさんで、いい魚を手に入れたい時にはこうやって連絡するんだとか、色々教わった。
今回手に入ったのは、とろけシリーズのとろけサバ、これが大漁も大漁だったらしく、嬉しい悲鳴と言いたい所なんだけど、あまりに大漁すぎると、自然と値段を下げないと売れなかったりするらしい、それに自分達が大漁と言う事は、他の漁船でも同じ魚が大漁なんて事が結構あるので、売る魚がかぶってしまうと、やはり値を下げて売るのは暗黙の了解となっている。
商会などに卸す分もあるし、安値といっても量が量なので赤字になる事はないし、結局かなり儲かっている。
個人だったら色々な魚が入った箱、一つで千円とかお得パックの奴があったりしていいのだが、こっちは料理屋なので、同じ魚を大量に入手しなきゃいけない。
とろけサバ、一匹銅貨三枚で、300匹以上購入した。
とろけサバは青魚だけど、臭くなく、美味しく食べれる。
塩焼きでもいいし、串焼きでも豪華でいい、地球の物より大ぶりの身をしているのに繊細で足が速いとよく言うが、とろけサバは時間がたっても悪い匂いなどしない、扱いやすく食べやすい魚だ。
サバを切り身にカットしたら、お湯で臭みをとり、味噌、醬油、砂糖、みりん、酒、水を入れた大鍋に入れて、大量に煮る、生姜スライスを入れるのを忘れずに。
サバの身が崩れない様に注意して、大量にサバを煮ていく、少量をフライパンで煮ても美味いサバの味噌煮が出来るが、大量にゆっくりことこと煮る事によって、しっかり身の奥まで甘味噌がしみ込み、臭みも一切なくまさにとろける食感を生み出す事ができる。
何故鍋を使って大量に煮た方が美味く出来るのかはわかっていない、きっと何かしら理由があるのだと思う。
つやつやの米に、ネギとわかめ、豆腐の味噌汁、大ぶりのとろけサバの切り身が二つ、どんどんと並ぶ、昆布と紫蘇の佃煮にサトイモと人参、タケノコがごろごろ入った煮物、ごぼうと人参のきんぴらに冷ややっこもつけて、出汁巻き卵と悩んだけど、冷ややっこにしてみた。
ほうれん草の胡麻和えとか海藻サラダなんかさっぱりしたものをつけてもよかったかな?
「みんな~ごはんだよ~」
トタトタと足音ならしながら、みんなが集まる。
「お腹すいた~、わぁお魚だぁ!」
「大ぶりの身が二つも!豪華ですね!」
「いい匂い!美味そう!」
「「「「いただきます」」」」
おお~とろけサバ、しっかり身に味噌がしみ込んで、まさにトロける食感!特にハラミの部分!脂も乗って、味噌に絡まって極上に美味い!とろける所を口に運ぶと、咀嚼する間もなく喉奥に運びたくなる、そして米!合わないわけがない!甘味噌とサバの旨味が米を食べる事を加速させる!
「こんなにご飯に合うお魚初めてかも!美味しい!」
「はうぅぅとろっとろでお米と相性最高です!」
「やばい!美味すぎる!これすっごい美味い!!」
何より青魚だから、ちょっとでも手を抜くと皮の部分なんか生臭く感じるが、味噌につけてしっかり煮たから皮目もとろとろで極上に美味い!パリパリに香ばしい皮も美味いかもしれないけど、味噌煮の皮はとろっとろで血合いの部分も全然臭くない。
「毎回思うけど、煮物も佃煮も美味しいよね」
「今日はきんぴらまである!これもご飯に合う!」
「冷ややっこも好きだ!なんだかんだで豪華だよなぁ、色々ついてくるし」
「定食っていったら、小鉢が沢山ついてくるもんだと思って、流石に海藻サラダに、出汁巻きまでつけたらやりすぎかと思ってやめた。出汁巻きはつけてもよかったかな?」
「今でもサービス満点っていわれてるから、無理してつけなくてもいいんじゃないかな?」
「メインのサバも大ぶりの二切れもある時点で、茶わんいっぱいじゃ米がたんねぇ」
「うちはお替りも、サービスですからね」
「貰いすぎないように考えてるんだけど、頂き物なんか使ってると丸々儲けが入ってくるからなぁ、いっそ味噌汁もお替り自由にしようかなぁ」
「今のままでも十分だと思うけど」
「そうだな、今でも十分びっくり箱みたいなのばっかりだ」
「お兄ちゃんは大変じゃない?」
「なれたもんだよ、下ごしらえはみんな手伝ってくれるし、本業も問題ないしね、ただまた仕込みやる時は、商業ギルドから人雇いたいかな」
たまには手を抜いた料理でもいいかなっておもうんだけど、やきそばの時みたいに、美味いの作ったらどうなるんだろ?って考えが脳裏に浮かんで、結局麺まで特注で作る事になったりするからなぁ、牛丼の日を作るのもいいかも、丼ものは乗せるだけで楽できるし。
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