第32話悩んでるのは俺だけ クラウスさん達の歓迎会

 はぁ、あんな事があったけど、クラウスさんとルーナさんとは仲良くやっていかなきゃいけない、なんだかんだで守ってもらっているのだから、俺とクラウスさんが一番気まずい感じでどこかぎこちない、怒られた5人は翌日にはケロッとして、うちに飯食いに来るし、クラウスさんとも普通になんでも無かったかの様に話してるんだもんなぁ、兄弟喧嘩に割って入った俺がいけなかったのかもしれない。 

 

 クラウスさんとルーナさんには新しく建てた、従業員用の宿舎で生活してもらっている。 

 

 一人店でどうしたもんか考えてると、店のドアが開いた。 

 

 「うぃ~っす、荷物全部マジックバックにまとめて来た、今日から世話になるな!斗真!」 

 

 「なんだ・・・・ニーアさんか・・・・」 

 

 「なんだとはご挨拶だな、浮かない顔して、まさかお前まだクラウスにいに叱られた事気にしてんのか?あれはにぃが正しいぞ、子供の頃に口が酸っぱくなるほど、油断するな、ミスをするなって怒られ続けてた、まぁミスすんなっていっても完璧になんて出来ないから、ミスする時もあるんだけどな、この間のミスは流石に致命的だった、異変に気付いて無視して大丈夫なんて決めつけたんだから、怒られても仕方ないし、私の弟子が同じ事したら、同じかもっと叱ってたかもしれない」 

 

 「まぁそれはいいんだけど、みんなずりぃ~よなぁ、次の日には普通にしてんだから、俺だけ気まずいっつーか、なんというか」 

 

 「兄弟なんだもん、喧嘩もするし、叱られもするさ、ずっと怒ってる方が変だろ」 

 

 「そうなんだけどさぁ・・・・・」 

 

 「斗真も怒られてたもんな、稀人として、拗ねてもう来ないって言った時にねねとリリはどうするのか?冗談でも軽率に子供達を手放す事は言うべきではないってさ」 

 

 「でもさ、自分のせいで戦争やリリ、ねねの命まで危険にしてますって言われたら、じゃあもう来ないのが一番の解決方法って事にならない?命だよ?俺がいるせいで、俺が大切にしてるから狙われるんだよ?」 

 

 「だからこそ護衛のあたし達に喝いれたんじゃん、それに王家としても後手に回った事を正式に謝罪するって国王様からも手紙もらってたじゃん、それに今の所攫ってまでこき使おうとか、戦争してまで手に入れるって派閥は少数派で、あくまで穏便に招待して気持ちよく能力を使ってもらおうって考えが他国でも圧倒的だから、強硬手段に出る国はそういないだろうさ、中つ国の十二天とは斗真とは別件で争ってるから、仕方ないし、気にしすぎだ。まぁでも私達の事で怒ってくれたのは嬉しかった、クラウスにいに殺気ぶつけられても言い返すとは、勇気あんじゃん」 

 

 自分の価値と言われても、貰い物力を自分の力だって誇るのはちょっと違うと思うんだよね、まぁそれとは別に能力のせいで俺の価値が急上昇したのはわかるけど、リリとねねの命を天秤にかけてまで俺がこの世界にいる意味ってあるのか?念願の宿もこの子達の物になるし、裕福な生活をしていけるはずだ、ねねとリリに大切に思ってもらえるのは嬉しいけど、俺がいるだけでこの子達を狙う人間が出て来るかもしれないと思うと、心は晴れない。 

 

 「斗真、今日の飯は?」 

 

 「今日はやる気が出ないので、ブルバイソンの牛丼です。卵入れても美味いし、紅ショウガや七味がこれまた合うんだよなぁ・・・・リリ~ねね~ご飯にしよ~」 

 

 俺が大声で呼ぶと、てとてとと足音鳴らしながら二人がやってくる。 

 

 「お兄ちゃん、完全に気が抜けちゃってるね」 

 

 「クラウスさんとギスギスしてるから、気にしてるんだよきっと」 

 

 「はぁ~・・・・今日はブルバイソンの牛丼だよ」 


 「うまぁ!これ見た目簡単だけど、美味いじゃん!」 

 

 「ブルバイソンは安いお肉なのに美味しい!歯ごたえあって、でも所々でとろとろしてる!」 

 

 「玉ねぎも美味しいし、紅ショウガがあう!これなんかすき焼きにちょっと似てる」 

 

 「米とタレがまた合うなぁ!美味い!赤身のしっかりした肉だけど旨味がしっかりしてるよ」 

 

 「私は後半卵をかけてみよ~っと」 

 

 「あっそれ美味しそう!私も!」 

 

 「卵ってさ、前まであんまり食わなかったけどさ、斗真とあってから生でも安心して食える様になっただろ?それ以来結構生で食う機会増えたよな、最初怖かったし、ぶっちゃけどうなの?って思ったけど、卵によって黄身はまろやかで濃厚で美味いし、輝き鳥の卵なんて白身も濃くて美味いだよなぁ、面白い発見だよなこれ」 

 

 「わかる!すき焼きで卵にお肉をつけて食べるってのが最初意外だったけど、滑らかで美味しいんだよね、あとタレと卵が段々混ざっていって美味しくなるのも面白い!」 

 

 「本当ですね、前まであまり食べなかったのに、今じゃ生でも抵抗ないですもの、ああっお客さんでも外では生卵食べないって言ってました、八百万のじゃないと不安だからって」 

 

 「確かに!他所の店で生卵だされても、本当に大丈夫なの?ってうたがっちゃうもんなぁ、ここのは神様の保証付きだから安全安心だもんな、そこもでかいよな、他にない強みだ」 

 

 「海辺の街でも生魚は腹痛の元って言われて、好きな人が腹痛覚悟で食べるのが当たり前みたい、でも斗真お兄ちゃんが出してくれるのは、絶対腹痛にならないから、好きなだけ食べれるのは貴重だよね」 

 

 「それに生のお魚は本当にびっくりするほど美味しいですから、私は焼いたのより好きです」 

 

 俺だけ悩んでるのが馬鹿みたいに、いつも通りの人達だな、やっぱり俺が気にしすぎなのかな?ニーアさんも引っ越してきたし、クラウスさんとルーナさんの歓迎会も一緒に開こうか?呪い解けておめでとう&これからもよろしく的な 

 

  みんなが普通にしてるなら、俺も気にしすぎない様にしよう、クラウスさんからもいつも通りにしていいって言われてるし、特に何々するななんて制限は受けてないし。 

 

 さて、ニーアさんとクラウスさんとルーナさんの歓迎会の料理は何作ろう? 

 

 毎回寿司ってのも、クラウスさん達は食べた事ないだろうけど、手抜きだと思われそう。 

 

 テーブルに皿を並べる料理といったら、中華がいいかな?。 

 

 鳳の卵を使った、卵の風味を強く感じるチャーハンに爆裂牛のチンジャオロース、アーサーさんから頂いた、キングサファイアエビのエビチリにブラックバンブーを丁寧に灰汁抜きした春巻き、ビックドードーのフォアグラを使った、レバニラ?フォアグラだから違うか?ビックドードーを丸々煮たスープ、野菜たっぷりのおこげの餡掛けに小籠包なんかいいなぁ~。 

 

 チャーハンは熱い内に素早くが基本で、卵が固まる前に米を入れて混ぜ、米を卵でコーティングするのが鉄則だ、エビチリは香味野菜から香を出すように豆板醬と炒める、ケチャップや卵黄でまろやかに、春巻きは個々の食感を揃えて切り楽しめる様に、レバニラやチンジャオロースはレシピ通り作ればいいので、割と問題ないのだが。 

 

 小籠包にゼラチンスープを入れて包むのだが、これでいいのか難しくてちょっと不格好に仕上がった物もある、出来るだけ大きさを揃えてそれっぽく見える様に形を整えるのだけど、これが難しい、数をこなさないと慣れないだろうな、そしておこげ、これはみんなの前で餡をかける事によって、バチバチと油の跳ねる音を楽しんでほしい。 

 

 リリとねね、ニーアさんとクラウスさんとルーナさんを呼んで、歓迎会を始めよう! 

 

 「すげぇなんか見た事ない料理がいっぱい並んでる!」 

 

 「ねねもこんなにいっぱい並んでる初めてかも、ねお姉ちゃん!」 

 

 「そうね、いつも一人一人の料理は見た事あるけど、大皿料理は初めてかも」 

 

 「私達も呼ばれてよかったのですかね?」 

 

 「稀人様の料理!楽しみです!」 

 

 「遅くなりましたけど、ニーアさんも引っ越してきましたし、クラウスさん達みんなの歓迎会って事で」 

 

 クラウスさんもルーナさんも驚いた顔をした、歓迎されてないと思っていたのだろう、まぁ色々あったけどこれから守ってもらうのだし、よろしくお願いしますって事で。 

 

 「じゃあおこげに餡をかけますね」 

 

 じゅわじゅわのおこげに餡をかけると、面白いくらいにバチバチバチと音を鳴らすと共に、湯気となって野菜や肉のいい匂いが部屋に広がっていく、作っていてなんだがこれは楽しみになってきた。 

 

 「なにこれ!!面白い!」 

 

 「バチバチいってるぞ!なんか美味そうだな!」 

 

 「冷まさないと火傷しちゃいますよ」 

 

 「うむ、見た事ない料理ばかりだ」 

 

 「美味しそうです!」 

 

 「じゃあいただきましょう!乾杯!」 

 

 「あっつ!ザックザクの油がじゅわっと出て餡と絡む!めっちゃ美味い!」 

 

 「お肉の脂とかならわかるけど、お料理に使う油って美味しいんだねぇ!これ凄く美味しいよ!」 

 

 「お野菜の旨味とお肉の旨味が詰まった餡がなんともいえません!」 

 

 「クラウス様!!めちゃめちゃ美味しいのです!!王宮の料理長並みに凄いのです!!」 

 

 「長生きはするもんだ、こんな美味いものが食べられるのだから」 

 

 「アーサーのエビで作ったこの赤いのも辛いけど美味い!!ぷりぷりだぁ!」 

 

 「このお米がすっごく美味しい!チャーハンっていったかな?いつもと全然違うよ!これだけで美味しいんだもの!!」 

 

 「この巻いた奴、さくさくで中に餡が詰まってて美味しい!」 

 

 「なんかスープが飛び出してきた!これはもちもちで中に肉が入ってる!うんまぁ~い!」 

 

 「恐るべし稀人なのです!どの料理も絶品なのです!!うまぁ!うんまぁ!!」 

 

 「これも美味い!内臓などは王宮では使われんが、これは極上な味だ!王家に献上しても問題ない所か喜ばれる事は間違いない!なんという濃厚な味!流石は斗真様だ!」 

 

 レバニラのレバーをフォアグラで作ったんだから、そりゃ美味いだろうなぁ、ビックドードーはダンジョンの魔物だけど、個体によってはフォアグラ化してるな、痩せた個体でも白レバーの様に脂肪を蓄えている。 

 

 「爆裂牛の炒め物!これも美味い!肉も美味いけど、野菜が美味いよ!シャキシャキの食感がたまんねぇ」 

 

 「ああ~食べすぎちゃうかも!」 

 

 「どれも美味しいもんねぇ」 

 

 「ねね様もリリ様もニーア様まで、毎日こんなに美味しいもの食べているんですね!羨ましいです!あぅ~おこげの餡掛け!ザックザクのとろとろで癖になる美味さ!なんて楽しく美味しい料理なんですか!!」 

 

 「斗真様、私達への配慮ありがとうございます。王家として護衛が遅れた事、改めてここにお詫びもうしあげます」 

 

 「いえ、急に現れた人間見つけるなんて、そっちの方が難しいですよね。むしろ俺のせいで政治的にも色々面倒をかけて申し訳ないです」 

 

 「稀人様は歓迎されるべき方達です。お気になさらず思いついた事はどんどん教えていただけるとありがたいです。それと国王様王家の方々も、ここの宿に強い興味を持たれております。仕事に空きが出次第、こちらに宿泊されるご予定となっております。その時に斗真様とは会談する事になっております。お手数おかけいたしますが、よろしくお願いします」 

 

 一国の王様とその家族が、宿に・・・・まぁそうかも、それだけこの建物珍しいし、異質だもんね、そりゃ楽しそうなものなら、遊びにもくるか、やっぱり何か料理を作ってもてなした方がいいよね。 

 

 「それと王家から、少しですが、斗真様の為になればと、食材が届いてます。セブンフェザーに七色豚、レインボータウラスにキングセブンタートルなど七色シリーズの食材達です。八百万亭でお使いくださいとの事でした」 

 

 七色シリーズって確か、どれも最高級品で、普通に塩なしで焼いてもとろけるほど美味いって食材じゃないっけ?中々安定供給できるわけでもなく、かなり入手困難って話だけど、そんなもの大量にもらってもいいのか?すっごい高いんだよね。

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