第20話冒険者の慟哭 建築のスキル

 -冒険者レックスー 

 

 あれもこれも!全部あの店が悪いんだ! 

 

 ニーアギルドマスターが頻繁に通う店があった、最初こそなんとも思わなかったが、商業ギルドでも宣伝されてて、街でも噂されてる、そんなにどいつもこいつも話に出すもんだから、時間がある時に足が赴くまま、その店に飯を食いに行った。 

 

 八百万。 

 

 中に入ると、狐人族の子供が席まで案内してくれて、水までもってきてくれた。 

 

 冷たくて美味い水に、意表を突かれた、こんなに上等な綺麗な水がただか・・・・料理で相当金でもとってるのかね?メニューなんぞなく、その日限りの料理が出て来る、そしてこの店では主食として米を出すんだ。 

 

 米、商業ギルドが新たな主食にと東国と取引して手に入れた米、物珍しさで別の店で食った事があるけど、味も希薄でなんともいえないもんだった、まぁ腹には溜まる方なんじゃないかってくらいだ。 

 

 だけどこの店の米は違う!ほくほくとして噛み応えがあり、むっちりとして咀嚼すると仄かに甘味が感じられる!これにこの店の出すおかずが死ぬほどあうんだ!おかずを口にして飯をかっこむと混然一体となってそれぞれが口の中で美味さを倍増させる。 

 

 そして付け合わせの塩漬けがまた美味い!煮物を口にしてまた飯をかっこむ!そしてスープを飲むとはぁっと声が漏れ出る謎の満足感・・・・これにやられる人間は多い、問題は夜だ!昼にあれだけ満足いく飯を食っちまうと、夜はもう物悲しい、唯一八百万で出さない、エールを他の店でかっこみ肉を口にするんだ。 

 

 寝る時になると考える、明日の昼飯は一体どんな飯が出るんだ?ミートパスタ!あれとサラダとスープも良かった、何より肉とトマトが美味くて麺って奴に絡んでたまらなかった、だけどあの店の本質は米だ!レッドクリスタルボアのカツを食ってその後の米!肉を受け止める米がなんともいえなくたまんねぇんだ!。 

 

 雫牛の薄切りの肉があまじょっぱくて、また米が進む!んでもって塩漬けと煮物よ!この完成度がやたらたけぇ!一度このループにハマっちまうともう米が恋しくてたまんなくなる!と思ったら今度は夜の部なんか始めやがった!。 

 

 今までエールなんて出さなかった店が、エールを出しやがる、しかも串焼きもだ!聞けば串焼きは内臓を丁寧に処理して出すって言うじゃねぇか!最初こそとまどったさ、でも内臓のあの美味さ!マルチョウもシマチョウも美味い脂をじゅわっと出すんだ!コリコリのセンマイ、ハチノス!プリンとしたシビレの美味さ!こりっこりのウルテや一癖も二癖もある部位ばかり、こりゃ食わないなんて手はないぜ! 

 

 そんな美味い内臓の串焼きを冷えたエールで流し込むと、もうたまんないなんてもんじゃなく、おらぁわけわかんなくなっちまうほど酔っ払うくらい飲んじまった!もうこれなしじゃ生きていけない程にだ!もつ焼きは味噌味でまた美味い!でも酒もいいけど米をくれって言いたくなるほど美味いんだ!もつ煮はもつ煮でまた違った味がして、ぷるぷるの脂の旨味をスープで流し込む!もうこれはご馳走よ!。 

 

 街にはまだ八百万にいった事のない奴の方が多い、あえて進めないんだ、常連同志で挨拶したり、目配せしたりする事もあるけど、これ以上はやっちまって俺達の食う分がなくなっちまうと目も当てられないからな、夜の部も始まって冒険者の仲間内でもごきげんな奴は多い。 

 

 そんな中まさかの休み!?おいおいおいおいおいおい冗談だろ!?俺の腹の具合はどうしてくれる!?米が!!否米じゃなくてもいい!!もうここの飯って決めてたんだ!あえて遠くに行かず近場で帰ってこれる範囲内で狩りしてたんだ!それなのに休みはないだろう!!??そんな俺達をしり目に、ニーアギルドマスターだけは中に入っていきやがった!? 

 

 香ばしい、いい匂いと楽しそうな談笑の声・・・・・・・ちくしょう!ちくしょおおおおおおおう!!! 

 

 こうなったら他の美味い店にいってやるさ!きっといい店ならこの心の空洞を埋めてくれる!! 

 

 俺が考え付く事は、他の奴も思いつく事で、周りを見れば見知った顔がチラホラ、そんでもって飯を注文、いい肉がステーキで運ばれてくる、一口食うと悪くない、パンもそれなり、スープもまぁまぁ、銀貨8枚から金貨1枚相当の飯はそれなりに悪くなかった、だが俺の心の空洞はぽっかりと穴が開いたまま、周りをみれば同じような轟沈した顔が目につく。 

 

 なんか違う・・・・確かに値段相応なんだろうな、使ってる素材も高く良い物なんだろうな・・・・でもなんか違うんだよなぁ、腹は満たされど、心のもやもやは晴れぬまま店をでて、苛立ちを獲物にぶつける様に狩りをした。 

 

 気づけば夜、いつもならもっと早く帰って、八百万で一杯やってる所だ、それなのに・・・・・夜も休み・・・・・・・ギルドに帰ると、行き場を失った俺の様な冒険者が何人かいてギルドの酒場で酒を飲んでた、聞けばニーアマスターにクリスタ、ギムレッドの旦那にフィガロとルーカスが楽しそうに店に入っていったらしい、なんでも何かを祝うんだとか。 

 

 きっと今頃俺らの知らない美味いもんくっているんだろうな、あの人らは権力もあって冒険者としてもトップと言うか英雄レベルだ、国が個人を招待するレベルの超大物だ、俺はまだそんな大物じゃないが、畜生八百万のマスターと友達だったら、俺も招待されたかもしれないのに!?俺もレオンみたいに獲物を狩って調理をお願いしてみようかな?親しくなれるかもしれない!!。 

 

 そんな事考えながら今も思う、ああっ明日の昼飯何が出るんだろうなぁ・・・・・。 

 

  休みを満喫した後、俺のスキルについて言わなきゃいけない事があるのを忘れていた。 

 

 そう建築スキルである。 

 

 何が起こるかわからないので、一切触れたりしていないのだが、もしかしたらこのスキルでマジックハウスが建てれるかも知れない、代償など求められるのかわからないけど、どうせならと商業ギルドのギムレッドさんが一緒にいる今のうちに、このスキルはなんなのか確認しておきたい。 

 

 もしマジックハウスで宿が建つなら、商業ギルドにも飲食店同様いくらか納めなきゃいけないからだ。 

 

 建築スキル発動!するとぼふんっと目の前にカタログが出て来た、建物の外観、中の間取りなどが書いてあるカタログで、建物の種類は豊富だ。 

 

 「これは建物の外観や内部の詳細が書いてありますね。どれも素晴らしい見た目です!これがスキルで建てられるなら、これは凄い事ですよ!」 

 

 「これで宿が建てられればリリ達の夢も叶うね!」 

 

 「でもなんだか、兄さんにまかせきりで申し訳ない気が」 

 

 「そこはもちろん売り上げから、報酬はもらうぞ、リリとねねの給料も上がるし、一応オーナーは俺だけど、俺もずっとここにいるかもわからないから、俺がいなくなったら、ねねとリリの物になる、実質ねねとリリの子供や孫にもこの宿は引き継いでいけるんだし、いいんじゃないか?それとも一時的にでも俺がオーナーになるのは嫌かな?」 

 

 「全然嫌じゃないよ!むしろもらいすぎだよ!」 

 

 「まぁリリとねねには今まで通り、こっちの店を手伝ってほしいから、宿の方は何人か人を雇う事になるかもしれないけど、駄目かな?」 

 

 「もしもマジックハウスが建つなら、掃除はしなくてもいいし、荷物の移動も魔術で出来るから、受付と案内係の人が必要になるのかな?お食事はお兄ちゃんのお店で食べてもらえばいいし、私もここでのお仕事の方がいいかな」 

 

 「じゃあみんなで建物選んでみよう!俺的にはリリ達のご両親が残してくれた庭園が一望できる様な建物がいいと思うんだ!あれだけ立派な庭園このままじゃもったいないもんな!」 

 

 するとリリとねねは大喜びで、どんな宿を建てるか見始める。 

 

 「素敵!?どの建物も立派だしかっこいい!」 

 

 「庭園と馬房の管理に受付などの人員を商業ギルドで一任しましょうか?お安くしますよ!」 

 

 「それいいんじゃない?」 

 

 「今までも庭園の管理はギムレッドさんにお任せしてたんですけど、いいんですか?」 

 

 「ええ、リリさんが言う通り元々商業ギルドで管理してましたから、追加で従業員を送るくらい訳ないですよ!商業ギルドの教育を受けた人員ですから、安心してまかせられます。リリさんとねねさんは斗真さんのお手伝いを安心してできますよ。一人当たり一日小金貨1枚って所でどうです?一か月で金貨3枚、給料として申し分ないかと」 

 

 「宿の一泊をいくらにするかも難しいな、ギムレッドさんならどうする?」 

 

 「カタログを見せてもらった限り、相当な高級宿になるかと、普通の宿で風呂なしでも一泊銀貨5枚、風呂食事つきで小金貨1枚から2枚、これを見ると大浴場なる物があり、リラクゼーションルームですか?このマッサージ機と言うのも使い放題で、景色を一望できながら、お金を投入する事でお酒が飲める特殊なバーが付いている・・・・しかも食事は斗真さんが作り、サウナにボーリング???ダーツ??ビリヤード???なる遊技場があり、映像の魔術道具による劇場での舞台映像が見える、各部屋でも映像は見る事が出来ますと書いていますね、しかも料金を投入する事でバーにいかずとも部屋でお酒を飲むことが出来るアイテムボックスがついている・・・・なんですかこの無茶苦茶なシステム」 

 

 どんな宿やねん!俺もカタログを確認する・・・・・・。 

 

 「あ~・・・・これは、バーとか劇場や遊戯場などは一般開放をお勧めしますと書いてますね。お風呂だけ入りに来る人も多分いるので、泊まる人と遊技場やお風呂を使う人で料金の差別化を図らないといけないですね」 

 

 「斗真様本当にこの建物が建てれると?」 

 

 「問題ないと思います。何故か妙に確信できるのが不思議ですが、いっそ宿泊施設と遊技場、大浴場は別に立てて、宿泊客が混乱しない様にしましょうか、バーもうちの店が夜の部やってない時に解放みたいな形にすれば、売り上げ的にもぶつからないかと、宿泊施設には家族風呂などの外を一望できるお風呂をつけて、部屋から劇場の映像が見えるのも採用、あくまでも泊る為にリラックスしてもらうって事で、大浴場には打たせ湯に炭酸泉、サウナに岩盤浴、などなど、遊技場の一階には子供達が遊べるトランポリンやしなる鉄棒、跳び箱、ボルタリング、ロング滑り台やアスレチックなど、二階にはダーツ、ビリヤードフロアとボーリングフロア、三階には劇を楽しめる劇場、公演したい大道芸の人や歌手、劇団などを随時募集して、いない場合は映像の魔道具で映画を流す。ここの外の土地が広くもったいないから、外にもアスレチックと、外周をぐるっとゆっくり回るコースターを設置、ジップラインで庭園を上からみたりする事もできるなんてどうかな?」 

 

 「お兄ちゃんが何言ってるか全然わかんないよ!?」 

 

 「ごめんなさい、私にも難しくて」 

 

 「すいません、私にも理解できない単語がいくつか・・・・」 

 

 俺が一人で鼻息荒く説明だけ只管していた、どうしたらいいだろう?俺の今言ったオーダーの完成図を3D映像で見せる事が出来るみたいだ、カタログの映像化をクリックすると映像になって出て来た。 

 

 「これが完成図ですか!?これは凄い!!」 

 

 「ふわ~なんか小っちゃい小人が遊んでる!これを作るの!?凄いよ!」 

 

 「こんなに沢山お客さんきてくれるでしょうか?」 

 

 「問題はそこだよねぇ、それにこの施設分商業ギルドから人員は借りなきゃいけないし」 

 

 「商業ギルドからは小金貨1枚で一人ですから、10人もいれば問題ないかと、しかしこんな物が本当に建てられるなら、この街自体が変わりますよ!ここ目当てで来る人!貴族!果ては王族まで!名のある大金持ちに冒険者!もちろんここの領主様である、公爵様の御耳にもここの事は入る事でしょう!否先手を打って、公爵様御一家を先に一番最初に招待するのが最善手かと思います!問題は入場料です!その遊戯達は時間制にして交替制にしないと、延々と遊ぶ人が出るでしょうね。まず宿泊ですが、斗真さんの料理だけで銀貨5枚から小金貨1枚、高級な食材なら小金貨5枚から金貨1枚は使う事でしょう。ここは思い切って食事ありの各施設使い放題でおひとり金貨1枚がいいかと、外のアスレチックはあえて無料開放で、コースターは銀貨1枚、このジップラインと言う移動する奴も一回銀貨1枚、ここの大遊技場は大浴場も含めて、各遊戯2時間銀貨5枚でとこんな所でどうでしょうか?」 

 

 「劇場はどうする?一時間から2時間くらいの映像が流れるんだけど、2時間の演劇だとおもってもらっていい」 

 

 「2時間の演劇ですか、それも大体銀貨3枚から5枚ですね。あとはクオリティー次第でお客さんが集まるでしょう」 

 

 「う~ん、俺的には問題ないかな?全部しっかり把握してる訳ではないけど、赤字さえ出なくて売り上げあげてくれるなら問題ないよ。もちろん最高責任者としてギムレットさんがついてくれるんでしょ?」 

 

 「もちろんですよ!?こんな面白い仕事他の人にはまかせられません!?ギルドはサブマスにまかせます!この案件は私がしっかりまとめ上げますので!おまかせください!!」 

 

 「ねねとリリはどう?」 

 

 「ねねはよくわかんないけど、楽しそうでいいと思う!」 

 

 「私も正直わかりませんでした。でもギムレットさんがこんなにまかせてって言うなら大丈夫なんだと思います」 

 

 「リリお嬢様にねねお嬢様を損させる事は絶対にありえません!もし経営不振になれば、私が私財を投げ売ってでも立て直します!誓約書を書いてもいいです!」 

 

 「もちろん、もっとこじんまりとした宿がいいなら、それでもいいよ。今のは一案にしかないんだから、もっと普通の宿を建てるのでも俺はいいと思う、決定権はリリにまかせるよ」 

 

 「私は・・・・そんなに凄い物が建つならお兄ちゃんの案がいいと思う!お父さんとお母さんならこう言う運を絶対に逃さないと思う!」 

 

 決まりだな、宿とテーマパークみたいな施設を選択して、スキルを発動させてみる。

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