第10話七色豚 角煮にクリスピーポーク

 昨日はお昼にみんなで内臓の味を確かめて、夜はリリとねねと三人で今度は焼肉形式でもつを味わった。 

 

 リリとねねは狐人族で鼻もいいから、ちょっとでも臭みがあると鼻に皺が寄るのだが、一度ボイルしてあく抜きや臭みとりをしたのがよかったのか、美味しく食べれたみたいでよかった。 

 

 そのまま家の風呂を使って、布団に入っていった。 

 

 これから暑くなってくるし、寝苦しい日も出てくるから、家の使えばいいと言った。 

 

 リリとねねの家はしっかりした見た目だが、やはり異世界なんだなって作りでちょっと古い、冬は隙間風に悩まされるし、夏は風通しがいいけどそれでも暑いだろう、布団も家に比べたらぺったんこで堅い、家ならクーラーもあるし、布団も快適だし、何よりこんな子供達が隣の家で無防備に寝てるのも考えたら怖い、変態がでたり、盗人がでたり、何がおこるかわからないし、そんな子供達をほっといてこの家で一人快適に生活しているという、罪悪感なんかも感じてしまう、つまりは俺の精神衛生上遠慮なく使ってもらった方が気が楽なのだ。 

 

 朝食を食べて、俺は仕事を始めたのだが、二時間ほどしてお客さんが現れた。 

 

 冒険者ギルドのニーアさんだ、ニーアさんこう見えても冒険者ギルドのマスターで元S級冒険者でかなりの有名人なのだとか、クリスタさんも聖女の異名があり、教会の教皇に並ぶほど偉い人らしくて、知った時には驚いた。 

 

 フィガロさんにルーカスさんギムレッドさんも、肉屋、魚屋、としても有名だけど、元冒険者としても有名なのだとか、ギムレッドさんはこの街の商業ギルドマスターで魔術師として有名なんだとか。 

 

 そんなニーアさんが何の用で来たのかと言うと。 

 

 「いい肉が手に入ったんだ!これでなんか作ってくれよぅ!斗真!」 

 

 ニーアさんがデカいブロック肉を紙に包んでもってきた、見ると表面が七色に輝いてる肉だ、しかも豚バラ肉の様に、脂と肉の層が5段連なっている、見るからに美味そうな肉だ。 

 

 「うちの冒険者に七色豚仕留めた奴がいてなぁ、フィガロの所に持ってく前に、美味い所切り分けてもってきたんだ!七色シリーズの肉は美味いからなぁ!」 

 

 七色シリーズ、肉の中でも最高峰と言われている他にも、宝石シリーズなどもあるのだとか。 

 

 こいつは確かに異世界の肉っぽいな!現代にはない見た目してる、それに凄いいい香りがする、それにしても量もかなり多いな、四人前以上は確実にある。 

 

 そう思っていると、外からまた人の気配がした。 

 

 「やっぱり!抜け駆けすると思っていましたよ!ニーア!」 

 

 「なんだかんだで斗真さんの料理気に入ってたみたいでしたからね」 

 

 「クリスタさんにギムレッドさん」 

 

 「冒険者ギルドを勢いよく飛び出ていったと、情報屋から連絡がきたんですよ、これはと思ってきてみれば、やっぱり美味い食材を手に入れましたか」 

 

 「神はなんでもお見通しです。ニーアが飛び出ていくくらいの食材ですからね、見ればやはり七色豚ですね!」 

 

 「この七色豚はあたしが買ったんだ!誰に料理してもらったっていいだろ!それに最近面白い記事を見てさぁ~どうしても食いたかったんだ!なんでも遠い大陸のダンジョン王国で主催されたパーティーでとんでもなく美味い七色豚の煮込み料理が出たらしいぞ!参加した各国の王族達は歓喜に喜び神の料理だと絶賛したと書いてあった!」 

 

 そんな遠い国の、しかも異世界の料理を再現しろと?流石にそれは無理じゃないかな? 

 

 「それなら私も見ましたよ。七色豚の角・・なんとか煮とか?」 

 

 「え?角煮?」 

 

 俺が反応したのを、ニーアもクリスタもギムレッドさんも見逃さなかった。 

 

 「「「知ってるのか!?」」」 

 

 「うわぁ!角煮なら知ってますけど!!そんな神様の料理になるとは思えないんですけど!?料理人の腕が相当凄いんじゃないかと!!」 

 

 三人に体を揺さぶられる、あああああやめてください!!!! 

 

 「七色豚の角煮!ねねもたべたぁ~い!」 

 

 「こらねね!いまそれどころじゃないでしょ!みなさんも落ち着いてください!斗真さん困ってます!」 

 

 「うぬっ私としたことが失礼しました」 

 

 「まさか知ってるとは思わず」 

 

 「でも作り方も知ってるんだろ!?作ってくれよぉ~とうま~!頼むよ~!!」 

 

 「作ってもいいけど、俺が作れるかなぁ~本物とは程遠いものになるかもしれませんよ」 

 

 こんなんじゃない!なんて言われても、逆になんかがっかりされても困るんだけどなぁ。 

 

 「それにこの量角煮を作るんですか?こんなにあるなら別の物も作れますよ」 

 

 「あたしは美味ければなんでもいいよ!角煮って奴も斗真オリジナルって事でいいから、気楽についでに作っておくれよ」 

 

 「そうですね、新聞には神の料理人とかいわれていた人物が作ったと書いてありました。流石に我々もそこまで求めていませんよ、ただ知ってるなら斗真さんなりに作っていただければ」 

 

 「そうですね、みんなで美味しくいただきましょう。折角の七色豚なのですから」 

 

 角煮かぁ、角煮にも色々作り方があって、どれを参考にしたらいいのか、有名な料理人のレシピと動画しっかり見て、その通り作ろう。 

 

 他には何かあるかって?俺はこの豚の脂と赤身の層をみてぜひ作りたいと思ったのがあるんだよなぁ、多分これで作ったら滅茶苦茶美味いと思う、角煮も美味いけどアレもきっと美味いんだとうなぁ。 

 

 作る前から一人肉を見て、にやにやとした顔をしていた。 

 

  さて七色豚の角煮を作っていこう、一番外側の皮が付いているのは、日本では中々手に入らない、体毛が付いている時もあるので、大抵のお肉屋さんでは外の皮は剥いで卸すのが一般的だ。 

 

 一個一個を自立できるサイズでカットしていく、熱したフライパンで一個一個丁寧に色がつくまで焼いて、圧力鍋に水と出汁を入れて沸騰させて、肉を入れ、香辛料、長ネギ、生姜のスライスをいれて20分圧力をかけて煮る。 

 

 一旦圧力を抜いて、紹興酒、砂糖、醬油、オイスターソースを入れてもう10分圧力鍋で煮る、一度開け肉の硬さを確認する、串が難なくはいれば丁度いい、硬ければもう10分煮る。 

 

 次にタレ、鍋に煮汁を1リットルほど入れ、砂糖、醬油、オイスターソースを味を確認しながら整える様に調整して入れていく、水溶き片栗粉を入れて沸騰させて化粧脂を入れて完成。 

 

 もう一つのブロックでクリスピーポークを作る、ブロック状態のお肉に切れ込みを入れていく、等間隔に綺麗にいれたら裏返して赤身の方にも適度に切れ込みを入れていく、脂身を切る時はあまり深く切らない様に脂身だけを切る様に、赤身も同じ様に切れ込みを入れる。 

 

 次にスパイス、塩、ブラックペッパー、ガーリックパウダー、クミン、オニオンスパイス、イタリアンスパイス、パプリカパウダー、ウーシャンフェン、砂糖をよく混ぜ合わせ、肉の切れ込みによくなじむ様に擦り付ける。 

 

 次にオーブン、そのままお肉を乗せるのではなく、アルミホイルやバットなどに乗せてグリルに入れよう、油で揚げて似たような物も作れるけども、オーブンで蒸し焼きにするのとでは柔らかさが格段に変わってくるので注意だ、途中でワインビネガーと塩を混ぜたものを刷毛で塗っていく。 

 

 あとの焼き具合はお好みで、徹底的にカリカリに仕上げるもよし、ある程度の弾力を残すのも良い、好みで焼き上げよう、今回は表面の皮のザクザク感を強調させる為、長めに焼き上げる。 

 

 「やばいよ!滅茶苦茶いい匂いがする!」 

 

 「あぁ~んお腹空いたよ~!」 

 

 「これは抗いがたい香りですね!期待してしまう!」 

 

 「まずは角煮、トンポウロウの方から食べましょうか、俺も楽しみで、仕方ないです」 

 

 一人三個程大きな塊をごろんと乗せた角煮を出す、七色の層になっている脂身と肉の部分は一見アメリカのケーキの様な見た目だけど、これが意外と美しい、かぶりつくと、サクサクプルプルと層を突き破る毎に独特のプルプル感とむっちりとした触感、最後の赤身はしっとり柔らかでホロホロと崩れる、咀嚼していくごとに口の中から喉奥に消えていく、脂身のくどい感覚やもういいやって思うような胸焼けする感覚がなく、するすると入ってく。 

 

 「うまぁああああい!」 

 

 「これやばいな!脂っこい部分ってのはどんなに美味くても何口かで、気持ち悪くなったりするもんだけど、それが全然ないよ!」 

 

 「神の食卓に並んだと言うのも納得です!むちむちとしてとろりと消えていく!このタレもさっぱり食べるのに一役かってますね!」 

 

 「我らが創造主がお認めになった味!なんと官能的な!むっちりとしてとろけていく感覚!舌の上で踊る様にホロホロの赤身!」 

 

 「おいし~い!ぷるぷるもちもちのとろ~りとしてる!初めて食べる味だぁ!」 

 

 「あっという間に飲み込んじゃいました!口の中で消えていくのが早いです!」 

 

 なんとも表現のしようがない、これは食べなきゃわかんない、感想を言えば言うほど無駄と言うか、言葉が思いつかないと言うか、ただ美味いんだ!濃厚なのに、こんなに脂も出てるのに、本当に胸焼けの様な感覚がない、弱った胃が強烈なニンニクを受け付けない様に、いつの頃かカルビや大トロが二三切れしか受け付けなくなる様な感覚、これだけ脂が乗っていたら胃がちょっとしか受け付けないはずなのに、これにはそれがない!どんどん食いたくなる!そして三個目の塊を食べ終えると、なんとも言えない満足感が体にじんわり広がる。 

 

 「怒涛の美味さだった・・・」 

 

 「心地いい」 

 

 「おいしかった~」 

 

 それぞれが満足そうな表情をする、だがまだクリスピーポークがあるんだけど。 

 

 クリスピーポークをザクザクと切り、自分の分だけ皿にもって食べ始める。 

 

 うぉ!ザックザクと心地よい感覚!パリパリサクサクと脂の部分にもサクサク感があり、更に下にいくとしっとりとろとろになり、次の階層に歯をいれるとホロホロの肉が待ち受けている、まるでパイ生地の様なサクサク感に甘い味が馴染んで、スパイスの旨味と脂の旨味がなんとも言えない味を出している、これは確かにそのまま焼いたなんてだけじゃでない、調理してこその味の広がり!組み合わせたスパイスが肉と脂身の欠点を消して、むしろ強固な一本の芯を体に通したような、しっかりとした旨味!これはきっと酒飲みにはたまらないだろうなぁ。 

 

 「お兄ちゃんずるい!私にも頂戴!」 

 

 「そうだ!一人だけ、別の物食い始めやがって!」 

 

 「あまりの美味さに放心してましたが、ザクザクなる音に心が帰ってきました」 

 

 「私も食べたいです!」 

 

 「美味しいものはみんなで分かち合いましょう?」 

 

 「わかってますよ!今出しますから」 

 

 みんな放心状態だったのに、いつの間にか帰って来てた、俺も夢中で気が付かなかったが、ほっと一息吐いたらみんなの目が俺も見ていた。 

 

 「今度はサクサクのパリパリ!それなのにお肉はしっとりもちもちでとろける!これも凄いよ!それに複雑な味がする、これも!これも凄く美味しいの!」 

 

 「うっは~酒が飲みたくなってきた!これはエールにあうぞ!パリパリの感覚に肉の部分はムチムチしてんのにホロホロのトロトロでもうわけわかんねぇ!」 

 

 「このレシピを販売すればきっと斗真さんの名は王宮まで響きますね!確実です!これらは王侯貴族が食べても納得する味ですよ!確かにお酒とも相性良さそうですね!素晴らしい!」 

 

 「ああ、またも神の領域の料理がここに!相反する二つの食感が口の中を喜ばせる!教会でもそれなりに裕福な食事をしましたが、心に響く味!思い出に残る味とはこの事を言うんですね」 

 

 「幸せです~。斗真さんには家から食事、何から何までお世話になって暗い毎日が、幸せに変わりました!さらにはこんなに美味しい物まで・・・罰が当たっちゃいそうです」 

 

 リリ達は掃除や料理の仕込みの手伝いとか、裏の畑でも何かし始めたみたいだし、お世話になってるのはお互い様だから、気にしなくてもいいのに、それにしても七色豚!まさかこんなに美味いだなんて、流石異世界最高峰に入る肉なだけあるなぁ、ニーアさんが持ってきてくれて本当によかった。 

 

 ニーアさんありがとうございます。

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