第6話丸鍋 お泊り会

 内臓が安く手に入るのはいいが、試験かぁ、本当に味付けして焼肉の様に炭火で焼くぐらいしか思いつかないんだけど、腸の方だったらもつ煮とかでもいいかもしれないな、甘い味噌で焼くのも美味いんだよなぁ。 

 

 さて肉の話は置いといて、今日はすっぽんだ、といってもこれも、捌いて土鍋で高火力で煮るぐらいしか思いつかない、お店だと刺身とかも出す店があるけど、俺には無理だな。 

 

 爪と膀胱、胆のう以外は全部食べられるとインターネットでは書いていた、もし俺が浄化の魔法を使えたら血もジュースやワインで割って飲んでみたのだが、残念ながら使えないので血は諦めよう。 

 

 ひっくり返して首を掴むのだが、これが意外と怖いのと日本の動画で見るすっぽんより首が太い、思いっきり掴まないと無理やり、首を引っ込めてしまう。 

 

 思い切って首を切る、デカいので首の周りの肉も結構とれそうだ、甲羅にそって切込みをいれて開けば内臓が見える、膀胱と胆のうを取り除いて、爪も切り飛ばし、体の下にも甲羅の様に硬い部分があるので切込みをいれて、思いっきり引っ張ると、上下の様に二つに分ける事ができる、あとは小分けにきっていくだけだ、血や内臓の見た目に慣れればなんて事はないかもしれない、動画で色んな人が捌いた動画をよく見ていたので衝撃は少なかった。 

 

 今の動画は結構凄い動画が多くて、特に指定外来種を捌いて食べてみる動画なども見た事があるので、本格的に甲羅に覆われてるクサガメなどをノコギリで甲羅を割るなど、手探りで捌いている人は結構いたりする。 

 

 さて、ぶつ切りになったすっぽんを一度茹で、薄皮を手で取り除いていく、これが結構めんどくさかったりするけど、臭みの主な原因はこの皮だったりするので、丁寧に取り除こう。 

 

 そして次に、土鍋にすっぽんを甲羅ごと入れて、ネギの青い部分と生姜のスライスを一緒にいれて煮るが、一般的なコンロではお店で煮る様な高温は出ないので、ガスバーナーで土鍋が真っ赤になるまで火を当ててみる、鍋が割れたりしないか怖いので、やってみたい人は気を付けた方がいい。 

 

 砂糖、醬油、酒、を入れ味を調える。 

 

 野菜は入れる店と入れない店があるのかな?すっぽん二匹も入ってるからお肉やエンペラの部分がたっぷりある、しかも日本の物より大きいのでかなり食べ応えあるはずだ、だけどやっぱり野菜はほしいかな?長ネギに人参、シイタケ、焼き豆腐、しらたきはなんか違う、まぁこんなもんか。 

 

 なんだかんだで2時間から3時間ほど煮たかな?30分前に野菜をいれたのが、ちょっとくたっとし始めている、もう食べてもいいかな? 

 

 呼びに行こうかと思っていたら、リリとねねが入ってきた。 

 

 「丁度呼びにいこうかと思ってたんだ」 

 

 「なんか嗅いだことのない、いい匂い!?」 

 

 「近所の人も何人か、この店探ってましたよ。ここ最近凄くいい匂いがするって」 

 

 嘘、あ~確かに換気扇回してるから、匂いは外に出てるけど、仕方ないよね。 

 

 「食べようか、二人は亀食べた事あるの?」 

 

 「キングタートルは結構お店で出る事もあるよ、他のお肉とまた違って美味しいよね!」 

 

 「独特な風味が嫌って人もいますね、鼻のいい種族は得に好き嫌い別れるみたいです」 

 

 「へぇ~、俺もすっぽんは初めてだから、美味くできてたらいいんだけど、どれ・・おぉ~柔らかいし美味いや、ほろほろしてる」 

 

 「私も食べる!?もぐっふわぁぷりぷりしてる!不思議!でも美味しいよ!」 

 

 「これ、お店のキングタートルより臭みないですね!ほんのり甘味もある!」 

 

 いかん、これはパクパクいける!スープも美味いな!手足の肉はしっかりしている様でホロホロだし、エンペラはぷりぷりしてる!合間に食べるネギと人参も美味しい!美味しいけどお店でこれ出すって凄く大変だと思う、土鍋もそう何個もないし、ああっこの肉やエンペラ部分を唐揚げにしてもよかったのかもしれない、すっぽんの唐揚げも美味いって聞いた事あったなぁ~・・・。 

 

 「美味い!美味いが熱い!クーラーいれよう」 

 

 「汗でてきました~」 

 

 「あつい~」 

 

 あっつあつの鍋をクーラーが効いた部屋で食う、なんと言う贅沢感。 

 

 「あれなんか涼しい!」 

 

 「風が気持ちいいです!」 

 

 「食べよう食べよう!」 

 

 「とろっとろのお肉美味しい!白いの?これも美味しいけどなんなんだろ?」 

 

 「ああ、焼き豆腐、豆で作ったものだよ」 

 

 「このスープにとてもあいますね!おネギが特に美味しい!」 

 

 「ああ、スープは残しておくように、最後に雑炊にするから」 

 

 「全部飲んじゃう所でした!」 

 

 「あぶない!!」 

 

 なくなる所だった、最後の〆は麺もいいけど、やっぱり米がいいなぁ、とき卵もいれて、醬油でちょっと味を調整してと。 

 

 「これ!?お米だね!うわぁスープにとろみが出て!お米が凄く美味しい!」 

 

 「はぅ~こんなの我慢できませんよ~!するするはいっちゃう!」 

 

 「俺もこんな美味い雑炊初めてかも!美味いなこれ!」 

 

 「お店で出せますね!」 

 

 「ガスバーナーをお客さんにやらせるのはちょっとなぁ、あの真っ赤な鍋にしなくても美味しくできるとは思うけど、大きな鍋で4~5人用とか、でもそれだと土鍋じゃなく普通の鍋で作る事になるけど、味がどう変わるかだよなぁ」 

 

 すっぽん専門店の土鍋とは違うけど、土鍋だから美味しく出来た感はあるよなぁ。普通の鍋でも美味しく出来るなら、一人用の鍋揃えれば出せない事もないかな?でもお店に10人20人も来て、その人達全員にすっぽん鍋だすのも、しんどそうだ。お店で出すなら唐揚げの方がまだ簡単で早いかもってなんか店やる前提の話なんだ!?まだやると決めた訳じゃないぞ。 

 

  丸鍋美味しゅうございました、なんて贅沢な鍋だったのだろう、特に癖になるのは、あのエンペラの部分、例えるなら脂の乗った魚のハラミの様な、しっとりと溶けていく感触が心地よい、野菜達も甘味を放ち、それでいて自分を主張する味、野菜ならではのシャキシャキ感も良かった。 

 

 すっかり汗をかいてしまった。 

 

 二人は家にはお風呂がなかったはずだ、どうせなら家のお風呂でさっぱりしてもらおう。 

 

 「よかったら家のお風呂入っていきな、汗かいたでしょ」 

 

 「えぇ!この家お風呂まであるんですか!?」 

 

 「お風呂?水浴びと違うの?」 

 

 「あったかいお湯に浸かるんだよ、体洗う石鹸とかもあるから、さっぱりすると思うよ」 

 

 「お泊り!お兄ちゃんのお家にお泊りなの!?」 

 

 「それでもいいよ、着替えだけどうしても男の俺用しかないから、それだけ家にとって来な」 

 

 「いいんですか?」 

 

 「別にいいんじゃないかな?お隣さんだし、ねね喜んでるしね」 

 

 リリは申し訳なさそうに、ねねは嬉しそうに着替えをとりにいって戻ってきた、俺はお風呂の使い方、ボディーソープの使い方など大まかに説明して、今度は二人の布団の準備を始めた。 

 

 この家の風呂は結構でかかったりする、前の人がお風呂好きだったのか、男の大人三人はいっても、まぁまぁ大丈夫な広さだ、俺も風呂好きだからかなり嬉しかった。 

 

 お風呂からあがったのか、多分ねねの足音だろう音がトタトタと走ってくる音がする。 

 

 「お兄ちゃん!お風呂凄いよ!温かいし、見て!髪がさらさらなの!べとべとだったけど、すっきりした~」 

 

 ねねは嬉しそうに俺に抱きつくが、髪がまだ濡れているのでタオルで拭きながら話をきく。 

 

 ああ、なんだか、こういった人とのやり取りは好きだなぁ、思えば東京に住んでいて、お隣さんとこんなに仲良く話したり、飯一緒に食ったりなんてなかった、俺の仕事上ネットさえ繋がっていれば、どこに住んでいてもいいって条件が、田舎に引っ込む理由になっていたが、人付き合いは嫌いじゃなかったんだなと再確認した。 

 

 「お風呂ありがとうございました!気持ちよかったです!」 

 

 「おねえちゃん!お布団もふかふかでシーツもすべすべで気持ちいいよ!」 

 

 「もう!ねねったら!そんなにはしゃがないの!」 

 

 「あっはっは、いいんだよ、俺どうやら人に喜んでもらうのが好きみたいだ。ねねぐらい思いっきり喜んでくれると俺も嬉しいよ」 

 

 「色々お世話になって、って言うかこのままだとお世話になりっぱなしで、私達に出来る事ならいってくださいね!頑張りますから!」 

 

 「ああ、ねねはよくホーンラビットとか捕まえにいったりするんだろ?今度俺も連れて行ってもらえれば、嬉しいかな?外がどんなところなのかも気になるけど、一人じゃ怖いしなぁ」 

 

 「そんなの簡単だよ!ねねが連れて行ってあげる!」 

 

 「私も一緒にいきますから、安心してください!ふわぁ本当にふかふかしてる」 

 

 「折角だから、アイスでも食べようか」 

 

 「あいす?」 

 

 ねねはリリを見るけど、リリもわからないのか首を横に振る。 

 

 俺はバニラとチョコのアイスを皿に乗せもっていくと、二人はこれなに?って感じでみている。 

 

 「これってもしかして氷菓ですか!?」 

 

 「ひょうかってなに?」 

 

 「冷たくて甘いよ、少しずつ食べるといい」 

 

 二人は恐る恐るスプーンを口に運ぶ、口に入れたら一瞬で溶けたのか、二人とも笑顔になる。 

 

 「ふわわ!甘い!」 

 

 「口の中で溶けました!」 

 

 アイスみたいな甘味もこの世界では売れそうだけど、こっちの世界で再現できない物を気軽に売っていいものなのだろうか?アイスクリームメーカーみたいな自分で作る機械、買うべきかな? 

 

 「黒いのも美味しい!」 

 

 「これ・・どこかで・・・」 

 

 「カカオって実を使ってるんだけど」 

 

 「ああっ!?前に薬師ギルドで見た事あります!あの時は・・・カカオとコヒの実だったかな?」 

 

 へぇ~コーヒーなんかもあるんだ、なんで薬師ギルドなんだろ?

 

 さて、いつまでも俺がいても休まらないだろうし、でもこのままぼーっとしているのもなんかなぁ、と言う事で、オセロを出して二人に簡単に説明すると、楽しそうに遊び始めた。 

 

 あとは眠くなったらゆっくり眠ればいい、俺は部屋に戻り仕事を軽くやろう。 

 

 10時くらいに下に降りると、部屋がくらくなっていたので、きっと眠ったのだろう。 

 

 明日の朝は三人で朝食だな、明日はパンにしよう。 

 

 それにそろそろルーカスさんがイールをもって来るはずだ、何人くらいでくるのだろうか?確かフィガロさんも来るっていってたけど、出来る事なら内臓は別の日にしてほしいな、下処理の問題もあるし、肉の内臓を食べる話になったら、ルーカスさんの事だから魚の内臓は食えないのかと聞いてきそうだ。 

 

 この世界の海の事はわからないけど、日本にもクエやアブラボウズやマンボウなんかの巨大魚がいる、地方料理には巨大魚の内臓や頭を調理して食べる、頭料理なんかもある、多分この世界でも魚の内臓や頭なんかは捨てられるだろうし、巨大魚なら頭だけでも食べる所は沢山あるな。 

 

 ルーカスさんとフィガロさんの二人と仲良くなれば、異世界の美味しいお肉に魚、珍しい魔物なんかも譲ってもらえるかもしれない、そう考えると楽しみだなぁ。 

 

 異世界の食材、早く食べてみたいなぁ。

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