第4話イール、ウナギを食べよう 山菜そば

 なんだかんだで色々見て回った、ご近所さんも紹介してもらったけど、今後どう付き合っていくかはまだわからない、それと今度来た時はお肉屋さんに積極的に寄ろうと思う、中には血抜きをしっかりやっているお肉屋さんもあるかもしれない。 

 

 色々見たけど、異世界って感じよりちょっと古臭い時代のコスプレした人達って受け止め方をしてしまった、絡んで来る人なんていないし、市場を周るのは楽しかった。 

 

 今度はどこかお店で食事でもしてみたいな。 

 

 それにしてもウナギが駆除対象か、もったいないな、日本で見るウナギより太くて大きい、かなり食い応えありそうな感じだけど、貧民も食わないとは、まぁ確かに安価でもっとうまいものが手に入るなら、簡単に美味しく調理できる方を選ぶのかな? 

 

 家について、お米の用意をして、早速イールを捌いて見る事に、目打ちをして頭半分を切り、中骨に沿う様に、背中から開いていく、これが難しいヌルヌルしているのと、中骨をちゃんと切れている時はカツカツと骨が切れる音がするのだが、動画の職人の様にスムーズにはいかない。 

 

 なんとか切り開いて、頭を落とし、今度は中骨をそぎ取る様に切って行くのだが、失敗すると中骨に身がついてしまう、はじめてにしては上手くできたんじゃ?っていいたいが、中骨に身が結構ついてる、最後二か所ヒレを切り落とし、身の小骨を断ち切る切込みを入れて終わり。 

 

 説明するだけでは簡単に見えるが、20分くらい時間がかかった。 

 

 丁寧にやってはいるが、よく見ると身がギザギザになっていたりと、不格好な仕上がりだ。 

 

 ウナギ割き用の包丁があればもっと上手くできるのだろうか?道具がどうであれ、こればかりは数をこなすしかない気がする、軍手をつけて、もちろん血が目や粘膜と接触しないように、最新の注意を払ってやったが、三枚おろしならもっと楽に出来るんだけど、流石にウナギは難しかった。 

 

 炭にバーナーで火をおこし、今度はウナギに金串をさすのだが、これも簡単に見えて難しい。 

 

 身と皮の間を狙って刺すと説明は簡単だが、正直上手くできた気がしない、まあ刺す事は出来た。 

 

 焼きが一番楽しかった、焼いてはタレを塗りひっくり返す等を繰り返すのだが、自分の好きな焼き加減で仕上げられるのは嬉しかったりする、見た目滅茶苦茶美味そうな仕上がりで、出来上がった。 

 

 美しく照りがついて、少し焦げもみえるけど、ジュウジュウと音を立て脂をしたたらせる、その見た目は、捌くのが雑だったのも許してくれているかの様な出来上がりだ。 

 

 米にウナギのタレ、市販の物を塗り、その上にイールの蒲焼きを乗せれば、異世界のうな丼完成だ!。 

 

 キャベツときゅうりの浅漬けと中骨のお吸い物に、長芋があったから角切りにして海苔を散らした物も用意した、さっぱりとしていいと思う。 

 

 「うぅぅぅぅ~いい匂い!本当にイールなのこれ!?」 

 

 「そうだよ、俺のいた場所ではうな丼って言ってた。凄く人気だったんだ」 

 

 「お腹が空く匂いです!斗真さんの事だから何かあるとは思ったんですけど、予想以上に凄いです!?」 

 

 ネネはともかくリリがなんの文句も言わずに、貧民も食わないイールを一緒に食うって言って、ちょっと違和感があったのだけど、なんか知らないが、俺の料理の腕やたら高評価を受けているみたいだな、なんか無条件で信用されている様で、それはそれで期待を裏切らないか怖い。 

 

 「いただきま~す!がぶっ!ふわぁ!じゅんわり味が広がる!ふわふっわで皮目はパリサク!あれ~??こんなのイールじゃないよ!前はもっと泥臭かったんだよ!小骨も気にならない!」 

 

 「お米も凄い美味しいです!丁度いい硬さでもっちりとして甘味がある!イールと相性いいんですね!凄く美味しいです!まさか鳥の餌がこんなに美味しいなんて!?やっぱり斗真さんは魔法使いです!」 

 

 えぇ・・今なんて言った?米が鳥の餌って聞こえたんだけど?嘘でしょ?。 

 

 「お米が鳥の餌ってマジ?」 

 

 「えっ?知らなかったんですか?ああっでもこんなに美味しくはないんです、前に食べたのはもっとぼそぼそして、口の中に何か残る様な、そしてちょっと苦味がある味でした、どこかの島国で食べるって聞いて真似したんですけど、全然美味しく無くて失敗したなぁなんて思いました。でもこれが本当のお米って奴なんですね!肉厚のふわふわのイールとお米の!凄く美味しい!特にこの上にかかってるソースが凄いです!」 

 

 「そうだよね、市販のタレ美味しいよね。それにしてもお米が鳥の餌はちょっとショックかも」 

 

 「こんなに美味しいなら、鳥の餌になんてしないよ!きっと買いに来る人いっぱいいるよ!」 

 

 「ああ、でも俺が手に入れたお米が、人間が食べれる様に美味しく育てられたってのもあるから、この国で手に入るお米が、美味しいかはまた別の話になるなぁ」 

 

 「えぇ~そうなんだぁ」 

 

 「それにしても、銅貨一枚で随分と豪華な食事になりました!イールは凄く美味しいし!お野菜の塩漬けもパリパリでまた気分が変わります!それにこの粘りのある野菜!これも美味しい!サクサクのとろとろで癖になります!」 

 

 「ねねもこれならお野菜いっぱい食べられるよ!変な苦みもないし!ついつい食べちゃう!」 

 

 なんか俺が恥ずかしくなってきた、素人のウナギにそこまで喜んでくれなくても、照れてしまう。 

 

 それにやっぱり現代調味料のタレの美味しさは凄い!美味しく、そして健康に、安全に食卓に届けようと人間が頑張った結果が今のインスタントや色んな食品達なんだな、誰かの努力なしでは語れない食の進化に、俺は感謝した。 

 

  うなぎ、イールを食べ終わって、その日は解散になった。 

 

 うなぎが銅貨一枚、つまりは百円で5匹も買えるなら、頑張ってウナギ屋やってもいいかなとか思ったけど、そんな本格的にお店をやるって気がしているわけでもない、家にねねやリリを食べさせてあげるだけで、俺の寂しさも吹き飛んでいるので、しっかりかっちり飲食店やるぞ!って感じでもない。 

 

 それに多分商業ギルドとか言う、昨日見た大きなギルドで飲食店をやる場合多分登録などが必要になってくるだろう、串焼きの男の人も屋台を出すのに届け出を出したって話を聞いたし。 

  

 それに肉屋、この世界の肉はいっちゃあ悪いが質が悪い、肉屋の店先に並んでいる枝肉が紫色に変色してたりするので、血抜きがしっかりされてない、飲食店をやる以上素材の確保が重要になってくるけど、あの肉は無理だ、無理を言ってでも冒険者に血抜き作業してもらわないと。 

 

 リリが言うには、高級な肉、新鮮な肉には浄化の魔法をかけてもらって、悪い菌を殺すのだとか、浄化の魔法をかけてもらった肉は臭くなくて、本当に美味しいけど、浄化の魔法を使えるのは教会の神官のみで、たまに冒険者にも使える人がいるけど、聖職者と野良の冒険者では効き目も違うのだとか、浄化の魔法かぁ・・・俺も覚えれたりしないかな? 

 

 教会では浄化、治癒、洗浄、解毒などの魔法を覚える事が出来るが、教会でちゃんと学習して覚えるのと、高いお布施をして覚えるのではやはり効果が違ってくると言う、中には冒険者でも高度な浄化の魔法を使いこなす者もいるらしいが、元が医者だったり薬師だったりと言う人達ばかりが、高度な浄化や治癒を使うと言う。 

 

 もしかして魔法への理解度や、医学知識の多さなどで効果が変わるのだろうか? 

 

 それなら現代知識のある俺もワンチャンあるんじゃないかと思う、だが浄化や治癒の魔法は高価で金貨5枚もすると言う、5万か・・・貯金を切り崩せば出せない事はない。 

 

 浄化、治癒、解毒のこの三つはちょっとほしいかな?と思う、本当に何があるかわからないし、金に物言わせて、魔法が覚えられるなら、それに越したことはない、ただ金貨5枚払って、貴方異世界人なんで魔法なんてつかえませ~んとか言われたら、結構ショックだ。 

  

 試すだけ試すにしても、5万消えて返ってこない上に覚えれなかった、流石に痛いなぁ・・。 

 

 そんな事を考えていると、店側のドアが勢いよく開けられる。 

 

 「お兄ちゃん!?」 

 

 「びっくりしたよ~、ねね、ドア開ける時は静かに開けておくれ、心臓に悪い・・・」 

 

 「ごめんなさい・・・聞いてよ!?」 

 

 耳をピコピコ動かしながら、唸る時の犬の様に顔にしわが出来ている、俺は頭をとんとんと撫で、何があったか聞く事にした。 

 

 「誰もイールが美味しいって事信じてくれないんだよ!?みんながねねなんかいい匂いするって言うから、昨日イールを食べたって!?美味しかったって言ったの!そしたらみんながイールなんてうまく無いって、ゼリー寄せなんて特に酷い、安いのと大きいのでなんでも食える奴しか食わないって!馬鹿にするの!大人の人もだよ!酷いと思わない!?」 

 

 あぁ~・・・でも仕方ないんじゃないだろうか?外国でも喜んで食うって人は中々いないし、異世界じゃなおさらだろうなぁ、イタリアなんかでは住んでる場所によっては、トマト煮にしたり結構なれているって話聞くけど、大多数の人からしたらやっぱり食わないって意見の方が多いくらいだしなぁ。 

 

 「まぁ仕方ないよ、ねねだって昨日のウナギ食べるまで、美味しい物だとは思わなかったでしょ」 

 

 「それは・・・そうだけども・・・ぬぎいいいい!くやしいぃぃぃぃぃい!」 

 

 駄々をこね始めた・・・こればっかりはなぁ。 

 

 そういえば、もうそろそろ昼だな、今日は簡単にそばを茹でよう、あく抜きした山菜もいれようかな、タラの芽にウド、こごみにゼンマイ、残っている山芋をすり下ろして、お好みでそばにかけてもらって食べようか。 

 

 「・・・・美味しそうな匂い・・・」 

 

 「そばつゆの匂いだね、お昼ご飯にするから、リリ呼んできな」 

 

 「は~い」 

 

 暖かくなってきたのに、温かいそばを作ってしまった。 

 

 しばらくすると、ねねに手を引かれてリリがやってきた、テーブルにはもう用意してある、俺は箸でたべるけど、二人は無理そうだからフォークを置いておく。 

 

 「お邪魔します。斗真さん」 

 

 「はいよ、準備できてるよ。食べようか、そば」 

 

 「わぁ、麺だぁ!おねぇちゃん、これ私が初めてここで食べた麺だよ!」 

 

 「これが麺ですか?」 

 

 「麺だけど、その中でもそばって食べ物だね。すすって食べるんだけど、フォークで巻いて食べるといい」 

 

 「いただきま~す!んん?あれ?もぐもぐっこの間のと味が違う!辛くない!このスープも美味しい!」 

 

 市販のそばつゆ・・・美味しいよね、万能調味料に分類してもいいくらい。 

 

 「これ、山菜ですか?程よく苦くて美味しい!」 

 

 「ああ!山芋すり下ろしたのも用意したんだ!試してみて、ねばねばが嫌いなら無理にとは言わないよ」 

 

 「山芋のすりおろし・・・こんなに粘々になるんですね、昨日のは形があってサクサクしてましたけど、あっこのスープに凄く合いますね!」 

 

 「私も少しいれてみよう!」 

 

 「のど越しもいいし、何より体にいいんだよ」 

 

 「ほんとだ!とろりとしてる!ねねこれ嫌いじゃないよ!」 

 

 山芋美味しいよね、長芋も好きだし、サトイモも好きだなぁ。 

 

 「今日は午後どうしますか?」 

 

 「あ~午後はちょっと仕事して、3時、3の鐘の頃にまた昨日の魚屋さんにいってみようかな?お肉屋さんも気になるしね」 

 

 「わかりました。3の鐘に迎えに来ますね」 

 

 「ねねも!ねねもいくよ~!」 

 

 「ああ、一緒にいこう、また面白い物みつかるかもしれないし」 

 

 ぶらぶら歩いてみるだけでも、結構面白いもんだしな。

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