第2話牛タンシチュー

 最近やっと温かくなってきたと思った所に、急激な寒波が訪れた、寒くて仕方がない、寒くなってくると人間もやはり体の動きが鈍ってきたり、暖かい場所から動けなくなったりするのは、俺だけじゃないはずだ、なんなら眠くなってきたりする。 

 

 こんな日だからって訳じゃないけど、温かいものが食べたくて大き目の鍋も見つかったので、思い切って今日は牛タンのビーフシチューに挑戦しようと思う。 

 

 普通のシチューやビーフシチューは作った事があるけど、牛タンって所が今回のポイントかな、牛タンの美味しい所を串焼きや、焼肉で食べると、歯ごたえがザックリとしていて、ザクザクと噛む感覚が美味さを助長する食感のいい肉だけど、シチューにすると、ホロホロととけるお肉に変わるとよく言われている、多めに作って今日と明日シチューを楽しむのもいい。 

 

 デミグラスソースはお好みのメーカーの物でいい、牛タンはすり下ろした玉ねぎにつけて少し放置、30分くらい寝かせたら、お湯で白くなるまで煮て、上げたら塩コショウを振って馴染ませておく、バターで焦げ目がつくまで焼いて、一旦皿にあげて置く、次にくし切りの玉ねぎ、すりおろしニンニクに牛タンを漬け込んでいた玉ねぎを、空いたフライパンで炒める、玉ねぎが透明になったら、トマトピューレ、赤ワインにローリエ、コンソメを入れる、牛タンをいれて一~二時間ほど弱火で、焦げない様に煮込み、最後にデミグラスソース、ウスターソースで味を調整すれば、出来上がり。 

  

 圧力鍋で肉を柔らかくするのもありだし、追いバターでコクを出すなんてのもお好みで。 

 

 作っている時、昨日のけもみみ少女の事を考えたら、量が少し多くなった、まぁ余裕で二日か三日目の朝には平らげれる量なので、問題はないんだが、昨日の子は土地神様か何かだったのかな?。 

 

 女性と縁がなかった為、子供とも縁がなかったが、自分の娘や息子と思えばもっと可愛いと思ってしまうんだろうなぁと想像する、更にけもみみだからなぁ、神様てきに敬う感じより、保護して守らなきゃいけない対象じゃないかなと考えていると。 

 

 引き戸がスパンっと勢い良く開けられる。 

 

 ビックリして体全体が一瞬ビクッと揺れる、心臓に悪い。 

 

 「なにこの匂い!!凄いいい匂いだよ!おにいちゃん!」 

 

 噂をすれば影・・・と言うかビックリした。 

 

 ドアの前まで気配を感じなかった、そう言えば名前も知らないな。 

 

 「いらっしゃい、お嬢ちゃん」 

 

 「ナニコレ!?何の匂い!?はぅぅぅ~いい匂いだよ~!?こんな匂い嗅いだ事ないよ~!?ああぁぁぁ!まってて、おねぇちゃあああん!!」 

 

 嵐の様な子じゃ・・・今度は外に駆けていきおった、この分だときっと食べたがるだろうなぁ、人を避けて田舎にきたはずが、なんでかあの子を待っていた様に感じる、自分が少し恥ずかしい、なんだかんだでやっぱり人恋しかったのかな?それともあの子が子供だから癒されてるのかな?・・・俺はロリコンではない!!決してそういう趣向の人ではない!!誰に弁明する訳でもなく強く思う。 

 

 「ってか、おねぇちゃん?やっぱり妙だな、ここら辺には人はいな・・いは・・ず???」 

 

 扉の外を見ると、目の前に家がある・・・隣にも家がある・・・左は壁か?レンガの壁になってるけど、なんだここ大通りの終着点みたいな場所に俺の家がある!? 

 

 「えっ!?なにここ!?うそでしょ!?」 

 

 俺は家に入って引き戸を占めた、一旦深呼吸だ、すーは~す~は~、目を開けて扉を見ると、ドアの取っ手の上に切り替えスイッチみたいなのがついてる、なにこぉれぇ?日って書いてる所にガチャンと回しドアを開けると、ああっ俺が引っ越してきた田舎の場所だ、今度は異と書いてあるダイヤルに回してドアをあけると、さっきと同じ家の前に家が現れた!隣にある家も!!俺はちょっと怖くなって日って書いてあるダイヤルに戻して、扉を閉めた。 

 

 この状態なら、日は多分日本の事だから、姉を呼びにいったあの子は入ってこれないんじゃないか・・・と思って待っていると。 

 

 「おにーちゃあああん」 

 

 ガラガラガラ、駄目じゃん!あっちの訳の分からん世界からもドア開けれるじゃん!!!。 

 

 「なぁお嬢ちゃん、ちょっと協力してくれ」 

 

 「協力?ん~いいよ!」 

 

 可愛らしくニコっと笑ってOKをもらう。 

 

 「じゃあドアの外に出て、俺カギをかけるから、開けれるか試してもらえる?」 

 

 「わかった!」 

 

 今度はダイヤルを日にして、ロックの部分を固定してみると、外は日本で固定されている、今度は異に合わせてロックして、更にカギをかけると、外から急に気配を感じる、あの子の気配というか、すりガラスから影が見えるし、なんなら声も聞こえる。 

 

 「あかないよ~」 

 

 ガチャンとカギを開けて、外の子を出迎える。 

 

 「あかなかったな、戸締りは問題ないか」 

 

 なんなら石かなんか投げて確認してもらいたかったが、今の所はまぁいいかって良くないわ!?なんじゃいこのドア、なんかよくわからんが、どっかの国と繋がってんのか?否、海外っていっても、こんなケモミミっ子いるわけがねぇ、欧米人とも目鼻立ちが違うし、え?何?こっわ・・・。 

 

 「ねぇおにいちゃん!今度は何作ったの~?」 

 

 「ん?ああっ牛タンシチューをなぁ・・・」 

 

 飲み込むしかないのか?この状況をどう受け取ったらいいか、考えていると、外から声がした。 

 

 「ねね~あんたこんな所でなにやってるの」 

 

 「おねぇちゃん!来てよ!ねね嘘ついてないよ!凄いいい匂い!」 

 

 「本当だ人がいる、この家の人ですか?いつ引っ越してきたんだろ?」 

 

 いつだろうね・・・俺にもわからないよ。 

 

 姉妹そろって銀髪で綺麗な髪に、何の動物の耳かわからないけど、ピコピコとリアルに動く耳、尻尾、顔は普通に人間、俺の想像の中の人かな?イマジナリー的な? 

 

 「おにいちゃん!ねねも!ねねも食べたい!いいでしょ~」 

 

 ねねは俺の手をグイグイと引っ張りながらおねだりする。 

 

 「こらっ!昨日もご馳走になったんでしょ!」 

 

 「でも凄いいい匂いなんだよ!」 

 

 わからんもんはわからんので、とりあえず普通に帰れるっぽいし、一旦置いておこう、俺はねねの頭に手を乗せて。 

 

 「一緒に食うか」 

 

 「いいの!?」 

 

 「あぁおねぇさんもよかったら、どうぞ」 

 

 「え?いいんですか!?本当だ凄いいい匂い・・・」 

 

 シチューだけじゃ物足りないと思って、10個程ロールパンを籠に出して、テーブルの真ん中に置いた。 

 

 素人がネット見て作ったもんだから、大層な料理じゃないけど。 

 

 「牛タンシチュー、食べましょうか」 

 

 「美味しそう!いただきます!」 

 

 「なにそれ?」 

 

 「お兄ちゃんが食べる時は、いただきますって、食べ終わったら、ごちそうさまだっていってたから」 

 

 「ああ、お祈りみたいなもんで、感謝します的な?作ってくれた人、分けてくれた命に」 

 

 「へぇ~・・じゃあ私もいただきます!」 

 

 一口食べると、これが結構いける!ルーを使わないで、デミグラスソースの缶とトマトピューレ、これも缶だけど、いい味になってる、具が牛タンと玉ねぎだけだけど、人参とかもいれても全然よかったかも、その分牛タンごろごろ入ってるから、食い応えも悪くないな、ちょっと贅沢かなとは思うけど。 

 

 「ふわわ!美味しい!濃厚な味がする!なにの味かわかんないけど美味しい!」 

 

 「凄い!濃い味だけど、ほんとに食べた事ない味!不思議~!でも美味しい!!」  

 

 「よかったらパンもどうぞ、つけて食べると美味しいと思いますよ」 

 

 「何このパン!やわらか~い!パンだけでも美味しいよ!」 

 

 「これ!?上等な小麦粉なんじゃ!凄く風味もいいですし、本当に私達食べてもいいんですか?」 

 

 「ああ、遠慮しないで、なんとなく今日もねねちゃん来るかなって思って作ったから」 

 

 「ありがとう!え~と・・・お兄ちゃん!」 

 

 「ああ、まだ自己紹介もしてなかったね。斗真、八意斗真って言うんだ」 

 

 「やごころ、とうまさん、私はリリ、この子はネネっていいます。狐人族です。斗真さんは人族ですよね」 

 

 「ああ、人族だね、珍しいかな?」 

 

 「中にはまだ獣人嫌いの人族の方も多いですから」 

 

 「お兄ちゃん、ねね達嫌いなの?」 

 

 悲しそうな顔でこちらを見るネネ。 

 

 「嫌いだったら、ご飯をご馳走しようなんて思わないよ。これからも家で食べていいから、いつでもおいで、リリさんもよかったらおいで、思ったより、一人で食べるの寂しかったみたいだ」 

 

 「いいんですか!?でもお金かかりますよ?」 

 

 「三食ご馳走するのは難しいかもしれないけど、一食くらいどうって事ないよ、なんなら街の案内とかも頼みたいしさ」 

 

 いざと言う時の現金はあるけど、こっちじゃ使えないよなぁ、何か売るか? 

 

 「それに何がいくらするとか、一食大体いくらかかるとか、聞きたい事いっぱいあるし」 

 

 「そんな事でいいなら・・・ああっもしかしてここでお店開くんですか?そうですよね!広いですし!」 

 

 店か・・・飲食店?届とかどうなってるか、まったくわからないんだけど。 

 

 「まぁいざとなったら、そんな所かな?お客さん来るかもわからないし、俺素人だし、そんなに料理屋みたいに凝った料理、何品もだせないから」 

 

 「このパンとシチューだけでも十分美味しいよ!お肉もとろとろ!こんな高級なお肉初めて食べたもん!やっぱりこれ高いの?」 

 

 「どうなんだろう?それもわかんないから、お店はまだ出せないかな?」 

 

 そういえば?外国のコインが百円になってた事あったな・・・まさか100円があの銅貨みたいなのと一枚で交換とか? 

 

 「ちなみにご飯っていくらくらい?」 

 

 「う~ん、一回の食事で余裕があるなら、銅貨10枚のお肉とパンとスープとサラダのセットを食べます。串焼きが一本銅貨3枚とか、パンなら2枚から3枚かな?」 

 

 「この料理いくらいくらいだと思う?」 

 

 「お肉も入ってて、しかもとろけるお肉だし、パンもふわふわで美味しいし、銅貨15枚はしそうですよね、銀貨一枚に大半銅貨一枚くらいかな?お金ある人はもっと高い料理食べたりしてますよ。一食に銀貨5枚とか金貨一枚とか」 

 

 銅貨15枚ってこっちで1500円か、そんなに違うのか!?俺が決めた事じゃないからなんとも言えないけど、串焼きも300円、パンも200円か。 

 

 「ゴブリン一匹で銅貨2枚、こん棒もお金になるよ!」 

 

 「薬草も銅貨2枚で売れますね、麻痺茸なんか銅貨5枚になりますよ」 

 

 ゴブリン・・・いるんだこの世界、こわぁ・・・、そうかよく聞く薬草なんかもそれなりにお金になるもんなんだねぇ、色々知れてよかった。

 

 

 

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