第2話油坊と水

「次ー身体検査と荷物チェックします」

「はい!」

風呂敷の中を確認する。

「えっと 依り代の人形とこれは?」

依り代の人形とまた瓶に紙が巻いており、中が見えないようになっている

「えっと それは拙僧の大事なものです」

「中を確認しますね」

ふたを開け、中を確認すると液体が入っている

「何の液体ですか?」

「ただの水です」

一応検査キットに入れ確認する…反応は陰性

「今回は何をしにこちら側に?」

「油を買いに 人間が作る油は品質が良いんですよ」

「へぇ~ そうなんですか」

見た目も小奇麗で見た感じ良い側の妖なのだが、なんかこう、猫をかぶっているような、こいつを通してはいけない気がする。

根拠があるわけではないが、俺の勘がそう言っている

「ちょっとこちらでお話を聞いてもいいですか?」

「ちょっと先輩、忙しいのにサボるんですか?」

「いや、こいつは何か隠しているそんな気がするんだ」

「なんですかそれ?じゃあ私も行きますよ」

「お前はここで仕事してろ」

「やっぱりサボる気でしょ先輩だけずるいですよ」

結局、凪も連れて妖と一緒に別室に行く

「えっと お名前は油坊さん」

「はい」

油坊なのに、瓶の中の液体は水なのか?

「油を買いに行く他に、何かすることはありますか?」

「いえ とくには」

「油を買いに行くには随分と、荷物が少ないですね」

妖はお金になど興味はないなので、基本物々交換なのだ。

油を買いに行くには交換できる物が少なすぎるし、価値のある物が、あるようにも見えない

「表にに知り合いがいるので」

「そうですか 失礼ですが、裏側ではどの派閥に入っていますか?」

「派閥ですか? えっと、ぬらりひょん様に付き従っております」

「なるほど ぬらりひょんの派閥ですか」

裏の世界では、弱肉強食の世界で、力を持たない妖は強い力を持つ妖に付き従い派閥を形成している。

だいたい派閥のトップの名前を聞けば、どういった類の妖かはわかる。

今回のぬらりひょんの派閥は数は多く人間に悪さをするが、いたずら程度の悪さしかしないものがほとんどだ。

普通なら、通しても問題ないのだが、最近この手の妖が運び屋として薬を表の世界に持ち込もうとする事例が、他の守り人から報告されている。

「もう一度、荷物をチェックします」

「どうぞ お好きなように」

一つひとつ、荷物をチェックしていく、さっき調べた瓶も調べる。

だが、瓶に変わったとこはない、ふたを開け、色、成分などを調べるが、何も異常がない

「先輩 何も変わったところはありませんよ?ただの水です」

やっぱり俺の気のせいだったのか?

「すみません お手間をとらせて」

「いえいえ それが、あなたたちの仕事ですから」

油坊が一つひとつ、荷物を風呂敷に包んでいく

ん?風呂敷に包む?あーー!

「油坊さん すみませんもう一度、さっきの瓶を見せてください」

「ん?先輩さっき何回も調べたじゃないですか」

そうだ さっき俺たちは何回も調べた。だが、それは、瓶の中身だけだ。

瓶に巻かれている紙の方はまだ、調べていない

油坊から瓶を受け取り巻いている紙をはがしていく。

「少しこの紙破ってもよろしいですか?」

「え?それは…その」

「ご協力ありがとうございます」

「いやちょっ…」

俺は、紙を破り水で濡らした後、紙から垂れた雫を検査キットに入れた。

結果は…

「先輩 陽性反応が出ました!」

やっぱり、薬をもっていたか

「これは、薬の反応です お話を聞いても?」

みるみる油坊の顔色が悪くなる

薬を紙に隠していたのだ。

「仕方じゃないか 力が欲しかったんだ 拙者たち力のない妖は強い力を持つ妖に、毎日いいように使われて遊ぶ時間もない そんな時、牛鬼の派閥の妖怪に力が手に入る薬があると、それを運べば少し分けてくれるって言われたんだ…」

「拙者が悪かった 何なりと処罰を受けよう」

力の弱い妖だ、なにかと苦労することがあるのだろうだが、薬を持ち運んで良い理由にはならない。

厳しいようだが罰を与えないといけない。

「油坊 君には10年間の表の世界への立ち入りを禁止する」

その後、油坊は裏の世界に強制送還された。

「先輩 すごいですね 私全く気付かなかったです」

「俺も危うく、見逃すところだった」

こうして、いつもの仕事に戻る。

牛鬼の派閥か

裏表どちらの世界でも悪さをする筆頭の派閥だ。だが、他の派閥のものをそそのかして、悪さをするとは、あちらでも、何か大きなことが起こりそうだな。


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表裏の守り人 オレハ・ショウ @mi-sho

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