きっかけ

第3話

「お久しぶりです。以原いはら先生」


「お会いできてよかったです。足助あすけくんは、研究室の所長なんですね」


来客です。という、受付からの連絡。なにか資材メーカーの人かと思ったら、獣医学部の先生だった。以原先生の授業は受けたことはないが、授業以外で話したことはあった。用件は相談したいことがある、ということだから面会することにした。


「はい」


「私は獣医学部の教授は辞めて、以原グループを手伝うことになりました」


「なるほど…そうだったんですね」


先生は以原家の親族だったということか。なるほど。でも、来客時に言った会社名はモデル事務所の名前であった。先生の名前なのにふざけてんのかと思ったけど…


「先生は、モデル事務所の経営をされているんですか?」


「そうです。会社に詳しいんですね」


「たまたま知り合いがおりまして」


「それで、本題なのですか、ご親族に足助実あすけみのるさんと言う方はいらっしゃいますか?」


「…はい。それは甥です」


「じつは、彼が服のブランドを、私の事務所で作ることになりました」


「そうなんですね」


…そういやあいつ、服作り得意だったけど。女の子の服も作り出したのか?カメラマンの小暮こぐれくんに売り出したとか?


「それで、足助くんに身元保証人になってほしいとのことでした」


なんで俺なんだよ。

あー、あれか。両親とは話したくない。多喜たきちゃん(叔父さん)には迷惑かけくない。そういうこと?俺は金持ちだから?


「いいですよ。サインしましょう」


「…あの、全然会ってもいないと言っていましたが」

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