第37話・スカーレット・アックス
俺はベットの上で座り込みながらルナ抱きつかれている。これはまだ良いのだが、シフール家の当主様が椅子に座りながら話されているので心が落ち着かない。
(ヤッパリこの態度はやばいよな)
相手の方が格上なのにコチラは好き勝手やっている。これがギルム様以外の上級貴族や王族なら、やばい事になっていると思い冷や汗を流す。
「次は報酬の話になるが大丈夫か?」
「報酬? 執事さん達が運んできたドロップアイテムの事ですか?」
「それもあるがゼノン達の命を救ってくれたお前への報酬だ」
「あ、はい」
「ご主人様はもう少しシャキッとする方がいいと思うよ」
「そう思うなら俺から離れろ」
「ヤダ」
またお金かな。と思っているとギルム様が真剣そうな表情で口を開く。
「ま、まあ、そのままで聞いてもらって大丈夫だ」
「なんかすみません……」
ギルム様が若干引いており俺は思わず頭を下げようとするが、胸元にはルナがいるので頭を下げれない。
(なんかすごい申し訳ない)
よくわからない空気の中、ギルム様が咳き込んだ後に改めて話し始めた。
「お前は何か欲しい物はあるか?」
「あの、またそのパターンですか?」
「そうだ」
(なんか最初に出会った時と同じパターンだな)
前はギルム様相手に貸しを作ったので今回はどうするかと悩む。だが良さそうな答えは出てこないので……。
「ではさらに貸しを作りたいです」
「おいおい……。それで良いのか?」
「ええ、辺境伯様にまた貸しを作るのはかなり大きな事ですよ」
「ハハッ! お前は欲があるのかないのかわからないな」
真面目な表情が一気に崩れて面白そうに笑うギルム様。
(ここで貸しを作れるのは大きいからな)
我が家は貧乏男爵家であるアーセナル家。正直、強い風が吹けば倒れるのは目に見えているので後ろ盾が必要。そこで念押しするようにしておくべきだと思った俺は前と同じ要件を口にする。
(シフール辺境伯家がその後ろ盾になればまだなんとかなる)
俺はそう考えていると辺境伯様の表情が難しい表情に変わったが、ギルム様は頷いた。
「なら、ウチからの報酬は決まりだな」
「そうですね」
「じゃあ次はお前のお待ちかねの物だ」
ギルム様の後ろに置かれているドロップアイテム。おそらく宝箱から出てきた物なので俺は執事さんの説明を聞く。
「では、ギルム様に変わりましてわたしが説明します」
「よろしくお願いします」
説明してくれるのは水色の髪を七三分けした30代前半くらいの執事さん。彼は手に持った書類を見ながら話し始めた。
「まずはコチラの『収納レベル3』の収納鞄です」
「ほうほう」
これは大体予想通り。収納レベル3なら学校の体育館くらいの量まで入る鞄だ。これは大当たりなので内心で喜んでいると執事さんが次の説明に入った。
「次は赤色の戦斧の『スカーレット・アックス』です。この魔装は『火属性レベル3』と『自己修復レベル2』が付着されているレア物です」
「それってかなり強くないですか?」
「ええ、貴族街に小さな屋敷が建つレベルですね」
つまりは金貨100……いや白金貨レベルか。俺はスカーレット・アックスを見た後、顔を上げたルナの方を見て頷く。
「ではその『スカーレット・アックス』はルナに使わせます」
「え? いいの?」
「もちろんだろ」
「ご主人様、ありがとう!」
嬉しそうに狐の尻尾をフリフリしているので可愛いと思いながらルナの頭を撫でる。水色髪の執事さんは無表情のまま少し間を開けた後に口を開く。
「他にはクリムゾン・ミノタウロスの魔石とコチラの宝石になります」
「魔石はともかく宝石ですか?」
「ええ、鑑定士によりますとルビー・メテオという宝石ですね」
ルビー・メテオは『旋律の勇者と煌めく戦少女』にも出てきた換金アイテム。ゲームではそこそこの値段で売れたのを思い出していると水色髪の執事さんが先程と同じく無表情のまま話す。
「このルビー・メテオはオークションに出せ最低でもば白金貨2枚は行くと思いますよ」
「白金貨2枚……ん? 白金貨2枚!?」
「まあ、順当なところだな」
白金貨1枚が金貨100枚の価値があるので日本円で計算すると2億円。つまりは宝くじレベルなので俺は思わず立ち上がりそうになる。
(いやいや、そんな金はいらんぞ)
ちなみにクリムゾン・ミノタウロスの魔石は金貨10枚でルビー・メテオよりはインパクトがなかったが吐き気が出るレベルだった。
「白金貨2枚に金貨10枚、あわわ!」
「おいルナ!?」
俺に抱きついていたルナが目を回し始めたので俺も頭がおかしくなりそうだ。しかもこんな宝石を売れば誰かに目をつけられる可能性は高い。
(そう考えると1番良い方法は……)
少ない時間で頭を無理矢理回した後、水色髪の執事さんの説明が終わったので口を開く。
「あの、このルビー・メテオは辺境伯様へお渡し出来ませんか?」
「え? まさかウチにこのルビー・メテオを売る気か」
「いえ、そもそもいらないです」
「ハアァ!?」
俺がルビー・メテオをいらないと言うとギルム様がかなり驚いたみたいで椅子から立ち上がった。その目線はあり得ない物を見ている感じで頭には疑問符が浮かんでそうだ。
だが俺もここで引くわけにはいかないのでギルム様の目を見ながらしっかり話し始める。
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