第38話・ルビー・メテオ
ルビー・メテオをどうするか。その件でギルム様は勢いよく立ち上がったが執事さんに嗜められる。
「とりあえずグレイ様の意見を聞きましょう」
「そ、そうだな」
なんとか落ち着いたギルム様は深呼吸をした後に椅子に座り直した。
(そりゃ驚くか)
俺はルナに抱きつかれたまま話している自分に驚いている。だがギルム様と周りにいる執事さんはルビー・メテオの扱いに驚いており目を見開いていた。
「それでグレイはルビー・メテオをどうしたいんだ?」
「それは……何かしら問題が起きた場合の資金にして欲しいです」
「資金?」
「例えばアーセナル家の管轄であるカシャ村が魔物の大群に襲われたとします」
「あ、あぁ」
ここからは単純に思いつきだが後には引かないので無理矢理話し始める。
「それで襲われたら大なり小なり被害を受けますよね」
「!? そうか、被害を受けた時の資金に充てて欲しいんだな!」
「ええ! そうです」
騎士団を動かすにも物資を用意するのもお金がかかる。その事を全面に押し出しているとギルム様が納得したように頷いた。
「つまりは何か起きた時への保険だな」
「はい! なので後ろ盾を含めてお願いします」
「そういう事なら納得できる」
これで予算も揃ったのでなんとかなる。俺は安心しているとギルム様が手をパンと合わせて首を縦に振った。
「本当にそれで良いんだな」
「はい! あ、クリムゾン・ミノタウロスの分は貰いますよ」
「そりゃそうだろうな」
ガハハと大声で笑うギルム様を見て俺も思わず口を綻ばせる。そして俺は収納鞄とスカーレット・アックスを受け取った。
クリムゾン・ミノタウロスの魔石は換金するのに時間がかかるみたいなのでそれまではフルール家の屋敷にお邪魔する事になりそうだ。
(まあ、怪我も治りきってないしお世話になりますか)
スッキリした笑顔で客室から出て行くギルム様。執事さんもギルム様についていったので残ったのは俺とルナのみになった。
「なあルナ」
「何かな?」
「いつまで俺に抱きついているんだ?」
「僕が満足するまでだよ」
「お前な……」
ここまでルナに懐かれた理由は正直わからない。だが悪い気はしないのでお昼ご飯が運ばれるまでルナの頭を撫でる。
ーーーー
10日後。体が完治したので軽く稽古した後、能力を鑑定する為に教会に向かう。
「まさか馬車まで出してもらえるとは……」
「グレイ様は私やゼノン様の命の恩人なので当たり前だと思いますよ」
「そ、そうですか」
目の前の席に座っているアシュリーさんがクールな顔のまま言葉を発した。
「それは当たり前だよね」
「おいルナ、なんで俺の左腕に抱きついているんだ?」
「されは気にしたら負けたご主人様」
ニコニコと可愛い笑顔を浮かべているルナ。俺はため息を吐きながら頭を抱えさえになる。
(なんかもう慣れてきたな)
ルナからのスキンシップが激しくなってきた気がするが、気のせいだと思って流す。
「あ、教会が見えてきたよ!」
「そうだな」
窓の外から見える教会。ルナは俺の左腕を抱き締めながら言葉を口にした。
(やっと着いたか)
馬車が教会の前に停車したので俺達は降りて御者さんに挨拶して建物の中に入る。
「では鑑定用紙を買ってきますね」
「え、あ、自分が……行っちゃった」
「ご主人様は待っておけば良いんだよ」
「そうするよ」
正直周りからの視線をめっちゃ浴びるのでここから離れたくなる。てか、ルナが俺に抱きついているのが問題じゃないのか?
俺はその答えに行きつきルナの方を見るが彼女は嬉しそうな笑顔を浮かべているので言い出せない。
(ハァ、俺はヘタレだな)
心の中でため息を吐いているとアシュリーさんが鑑定用紙を購入。その紙を受け取り俺達は女神像の前に移動する。
「能力が上がってますように」
やっとこさルナに左腕を離してもらえたので、俺は目の前の女神像に向かって頭を下げて目を閉じる。
『スキル、強化魔法を手に入れました』
前と同じく女性よりの機械音声が頭の中に響く。だが聞こえたのは端的で前みたいに長くはなかった。
(まさかな)
俺は目を開けて女神像に一礼した後に並んでいたルナに場所を渡す。そしてルナの鑑定も終わり教会にあるは長椅子に座って高い能力を確認する。
・名前、グレイ・アーセナル
・性別、男性
・年齢、8歳
・加護、
〈スキル〉
・片手剣術〈レベル2〉
・水魔法〈レベル3〉
・強化魔法〈レベル0〉
〈パッシブスキル〉
・直感〈レベル2〉
・強運〈レベル2〉
〈ユニークスキル※〉※本人のみ閲覧可能
・月光剣・クレール〈レベル2〉
・名前、ルナ
・性別、女性
・年齢、10歳
・加護、獣戦士
〈スキル〉
・両手斧術〈レベル2〉
・体術〈レベル1〉
〈パッシブスキル〉
・危険探知〈レベル1〉
・怪力〈レベル2〉
・身体強化〈レベル0〉
〈祝福〉
・獣魔の本能
うん、大きな変化はないが着実に強くなっているな。
「これは……。流石ですね」
アシュリーさんにも俺とルナの能力を見せると驚いていた。その理由はわからないが悪くない感覚だ。
そして俺達は前に食べに行った大衆食堂のキリン堂に移動。ルナがフードファイターレベルで料理を完食して周りの人を驚かせる事になった。
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