第32話・ロジエの迷宮
シフール家から武器と防具を借りてアイテムも揃えた。
(ここがロジエの迷宮か)
馬車の窓から見える3メートルくらいある転移門。ここがロジエの迷宮の入り口である。この世界の迷宮は転移門型の固定迷宮と自然発生するランダム迷宮の2種類が存在している。
前者の転移門型は複数の迷宮に転移することができる。その中でランク付けがされており、俺達が行く場所は初心者レベルの迷宮だ。
(そりゃそうだよな)
ランク2の迷宮に行くにはランク1の迷宮をクリアしなければ入らない。この決まりはゲームの時と同じみたいで聞いた時は思わず目が点になった。
「さて今回のパーティですが……」
「なんかバランスが悪くない?」
「それは突っ込まないでくださいよ」
ダンジョンは1チーム5人までしか組めない。もちろんパーティ枠追加の装備を使えば1枠増やせるが今は持ってない。
(そう考えると他の探索者に会った時はどうなるんだ?)
聞いた話によると迷宮の奥にあるボス部屋に入れる人数が5人で、6人以上だと超えた人数は半透明の結界に弾かれるみたいだ。
「怪力戦士のゼノンと両手剣士のリードスさん」
「魔法剣士のご主人様に獣戦士の僕」
「後はバトルメイドの私ですね」
全員がアタッカーなのでかなりバランスの悪いパーティだが、バトルメイドのアシュリーさんは斥候もできるし俺も魔法の属性が水なので回復できる。なので脳筋のゴリ押しパーティになるがまだマシに見えた。
(個人的には盾職が欲しいな)
壁役がいればパーティの生存率はグッと上がるので欲しかったが、入れると人数オーバーになるので組めなかった。
「まあ、でもランク1の初心者迷宮ならオレ達でも余裕だろ」
「確かに私達も決して弱いわけではありませんからね」
なんか無駄に盛り上がっているゼノンとアシュリーさんを見て少し不安になる。
(あの可能性は低いよな)
個人的には引っかかる点もあるがその可能性は0.1%しかない。俺はその事を思っているとロジエの迷宮に到着。馬車を運転している御者さんに頭を下げた後、転移門の前まで移動する。
ーーーー
ランク1のロジエの迷宮。俺達は転移門を使って中に入るとそこに広がっていたのは天井が明るく光っている空間。フィールド的には草原タイプで周りには若手の冒険者達の姿も見える。
「ここが迷宮かー!」
「ゼノンは迷宮に入った事なかったのか?」
「オレは今まで許可されなかったし入ってないぞ」
「ならなんで今回は入れたんだ?」
「さあ? それは父上達に聞いてくれ」
ゼノンは初めての迷宮に盛り上がっており、俺の隣にいるルナも目を輝かせていた。
「ここが迷宮の中なんだね」
「俺も初めてだしすごいよな」
転移門の中にいると他の人の邪魔になるので少し離れた後、ゼノンとルナは周りをキョロキョロしていた。大人組のアシュリーさんとリードスさんは苦笑いを浮かべている。
「キョロキョロするのはいいけどここは迷宮だよ」
「そ、そうだな! いつ魔物が襲ってくるかわからないから警戒しないと!」
「わ、忘れてた!」
「お2人ともそこまで焦らなくてもいいですよ」
今回の武器は訓練で使っていた模擬装備ではなくて鉄で作られた実戦用の武器。もちろん刃も研がれているので相手を切り裂く事もできる。
(これからどうなるかな?)
俺の武器は左腰には短めの片手剣で右腰にはナイフ。腰のポーチには回復・魔力ポーションが入っており、動き的には援護重視の後衛になる。
「さて奥に進もうか」
「そうですね」
なので前衛はゼノン達に任せて俺はいつでも魔法が使えるように待機。進んでいると身長50センチくらいの緑色の芋虫みたいな魔物が現れた。
「じゃああのグリーンキャタピラーを倒してもらおうか」
「わかった」「うん!」
草原型の迷宮に出てくる魔物のグリーンキャタピラー。コイツは星1のザコ魔物なので初心者でも武器を持っていれば倒せる相手。
俺は魔法で倒そうと考えているとゼノンが両手剣を構えて突っ込む。
「くらえ! パワースラッシュ!」
「ゼノン様、僕の出番がないよ!?」
「早い者勝ちだから仕方ないだろ」
「うう……。なら次は僕が先に倒す!」
互いに競い合っているのかグリーンキャタピラーや他の魔物が現れるたび競うように倒していく2人。
俺は地面に落ちた魔石やドロップ品を背中に背負った鞄に入れながらその戦いを見る。
「グレイ様は混ざらなくていいのですか?」
「自分には違う仕事があるので気にしなくていいですよ」
「わかりました」
個人的には実戦訓練を積みたいがゼノンとルナが楽しそうに戦っているのでソチラに譲る。俺とアシュリーさんは地面に落ちた魔石や素材を拾う。
(向こうはリードスさんがいるし大丈夫か)
子供2人だと暴走しそうなので大人のリードスさんが監視に付いている。俺はその事に安心しながらドロップアイテムを拾い続けた。
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