第31話・勘違い
朝起きると何かに乗られている感覚を感じたので目を開けると……。
「むにゃむにゃ」
「……おい」
胸の上にルナの顔があり彼女に抱きつかれていた。俺は少し頭を抱えながら狐耳を撫で始める。
(普通に可愛いよな)
モフモフとルナの狐耳を撫でていると彼女は体をよじった。
「あ、やりすぎたな」
ここでバレるとイジられる可能性があるのでルナの耳から手を離す。
(コイツが起きるまで待つか)
昨日は散々耳や顔を舐められたので仕返ししたいと思ったが、余計な事をすると痛い目に合いそうなのでやめておく。
「まあ、ここでルナと会えたのは大きいよな」
ゲームでは中盤に仲間になるメインヒロインで登場時はクールて落ち着いたキャラ。俺もそう思っていたのだが現実は甘えん坊で明るい少女だったのでズレを感じる。
(これも原作とのズレなのか?)
確かストーリーでは変態貴族に飼われて心を凍らせた設定があったはず。だがその運命を俺が変えてしまったから今の明るい性格が出ているかもしれない。
「コイツも俺が守らないとな」
能力的に肩を並べて互いに守り合う関係。俺が目指すのはそこなのでルナには是非とも強くなってほしい。
その事を考えながら天井を見上げていると胸に抱きついているルナがクンクンと鼻を鳴らした。
「いい匂いー」
「ちょ!?」
俺の胸に顔を深く埋めるルナ。それを見て離れようとするが能力の関係上相手の方が力が強いので振り解けない。
(早く離れてくれ)
このままだと勘違いされそうなのでルナには早く目を覚ましてもらいたい。俺はそう思っていると客室のドアが勢いよく開いた。
「グレイ起きているか?」
「あ、ああ」
部屋の中に入ってきたのはゼノンで彼はコチラ見るといい笑顔を浮かべた。
「まさか……」
「お前が考えている事はやってないぞ!?」
なんかゼノンに勘違いされそうだったので慌てて訂正。すると俺に抱きついていたルナが手で目を擦りながら起き上がる。
「フワァ、おはよう」
「お、おはよう」
まだ眠そうだがなんとか起き上がったルナ。俺は安心しながら離れようとした時、ルナが倒れ込んできた。
「もう少し寝る」
「おいぃ!?」
「ヤッパリお前らはそういう関係なんだな」
「ちょ、ゼノンまで何を勘違いしているんだ!」
何かを察したのかゼノンはいい笑顔のまま部屋から出て行く。俺はこのままだとマズイと思ってルナを無理矢理叩き起こす。
ーーーー
ルナをなんとか起こして服を着替えた後、アシュリーさんが朝ごはんを乗せたカートを運んできた。
「昨日はお楽しみでしたね」
「アシュリーさんまで……」
「白パンおかわり!」
「はい!」
朝ご飯の白パンをガツガツ食べているルナを尻目にアシュリーさんはジト目を浮かべる。俺は心にダメージを負いながらスプーンを使ってスープを飲む。
(朝からなんでこんな精神的なダメージを負わないといけないんだ?)
変な空気になっているので話を変えようとするが、目の前に座っているルナがおかわりを繰り返すので話せない。
「朝からこんなに食べれるのは幸せ」
「そ、そうか」
「ご主人様は食べないの?」
コチラの食べる手が止まっているのを見たルナが肉食獣みたいな目をする。まあ、彼女が見ているのは俺ではなく料理の方だが。
「もしかして何処か体調が悪いのですか?」
「体調は大丈夫なのでその意味深な笑顔はやめてください」
「私そんな顔をしてましたか?」
アシュリーさんが意地悪く笑っているので俺はムカつきながらデザートのフルーツにかぶりつく。
(同じ事が繰り返させるのはヤバいな)
このままだとシーフル家にいる時はルナと一緒に添い寝しないといけない。そうなると毎回イジられそうなので対策を考え始める。
「……いっそのこと別の部屋の方がいいかな?」
「ご主人様、それはダメだよ」
「じゃあどうするんだ?」
「そんなの決まっているよね」
別の部屋ならイジられなくなると思い提案するがルナに却下された後、彼女は真剣な表情を浮かべなら言葉を口にした。
「我慢して僕と一緒に寝たらいいよ」
「それ何にも解決してないよな」
「そうかな? でも僕は奴隷だよ」
「基本的に奴隷は主に絶対服従ですからね」
「そういえばそうでしたね」
ルナとアシュリーさんはクスクスと面白そうに笑っているので俺はため息を吐く。正直、ルナに対しては命令で黙らせることはできるがそれをしたら負けなのでこの手は最終手段。
今はなんとかコイツを黙らせようと頭を回すが答えが出てこない。
(頭がよかったらな)
自分の頭の悪さに嫌悪感を感じて頭が痛くなっているとルナが一言。
「それにご主人様といるのは気持ちいいよ」
「お前な……」
「まあ、だからこれからもずっと一緒だね」
(なんかルナの好感度が高くないか?)
ルナとは昨日出会ったばかりなのにここまで彼女からの好感度が高いのかわからない。俺はゲームの時のシステムを思い出しながら疑問に思う。
(前世の好感度が引き継ぎされているのか?)
普通に考えてそんなことはないので考えから消す。だが他に考えても答えが出てこないまま俺達は朝ごはんを食べ終えて迷宮へ行く準備を進める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます