第24話・新しい騎士見習い
リーネとの模擬戦が終わった後、他の子供達の目に光が灯っており俺は若干引いた。
(マジでゼノンがいて良かった)
あの後、収集がつかない状況だったがゼノンとリードスさんが綺麗に纏めてくれたので安心する。だがリーネだけは回復ポーションを飲んで復活した後も俺を親の仇みたいな目で睨んできた。
「まあ、俺は俺でやりますか」
リーネの鋭い視線を受け流しながら素振りをしていると後ろから声をかけられた。
「ねぇグレイ君! ボクに剣を教えてよ!」
「え?」
「お願い」
右手に木剣、左手に木の盾を持ったシオンが目を輝かせながらコチラを見てきた。
(剣を教えてと言われてもな)
俺の剣術は型とかを無視して効率を求めたやり方だ。普通に考えて大人の騎士達が使う剣の方が強くなれると思うが……。
「周りにいる先生達じゃダメなのか?」
「うーん、先生達よりもグレイ君の方がいいと思ったんだよ」
「そ、そうか」
「だから教えて!」
周りにいる先生達は武器のタイプごとに戦い方を教えている。ただ、7歳から10歳くらいの子供に教えるのは難しいみたいだ。
「まあ、いいよ」
「やったあ!」
シオンの目を見ると不安そうにしていたので俺はここでは断りきれなかった。コチラの許可にシオンは嬉しそうにはしゃいで剣と盾を捨てて抱きついてくる。
(弟みたいだな)
気持ちよさそうに目を閉じているシオンを見て弟みたいだなと思いながら頭を撫でる。
「さて始めるか」
「もう少しこのまま」
「おいおい……」
このまま抱きつかれても話が進まないがシオンは離れない。俺はヤレヤレと首を横に振りながらシオンが満足するまで動けなかった。
ーーー
あの後、シオンに剣の指導していると午前の稽古の時間は終わった。
(やっと終わったか)
シオンは名残惜しそうにしていたが、午後からは実家に帰って勉強をしないといけないらしく他の子供達と共に帰っていった。
「面倒な勉強の時間かよ」
「頑張れ」
「お前な……」
恨めしそうに睨んで来るゼノンをスルーした俺だったがアシュリーさんに声をかけられる。
「グレイ様はこれからどうするのですか?」
「個人的にはロジエの迷宮に行きたいのですが」
「おい、迷宮に行くなんてずるいぞ!」
隣でギャンギャン吠えているゼノンを他所に俺はやりたい事を口にする。
(迷宮にはお宝が眠る隠しエリアに行きたいんだよ)
『旋律の勇者と戦少女』での迷宮には隠しエリアが存在している。もちろんロジエにある迷宮にも隠しエリアがあるので直ぐに向かいたいところだ。
(まあ、何とかしたいところだ)
迷宮に行きたがっているゼノンを他所にゲームの内容を思い出しているとアシュリーさんがため息を吐く。
「もしよければグレイ様もご一緒されますか?」
「え?」
「おお、それはいいな!」
「勉強を!? 待て待て!」
辺境の貧乏男爵家で育った俺はまともな教育はあまりされてない。例えばここでダンスの指導やマナー講座とか開かれたら指摘されまくるのは目に見えている。
(どうにかして逃げたいが……)
前世でも勉強嫌いで赤点予備軍と言われていた俺は逃げるための口実を作ろうとするが。
「流石に迷惑だろ」
「いやいや、別に1人くらい混ざっても大丈夫だろ」
「え? もしかして個人でやるわけじゃないのか?」
「うん? いや、腹違いの奴らと一緒だぞ」
「そ、そうなのか……」
俺が考えていたのは1対1の家庭教師みたいな感じだ。でもそうではなくて複数人が一つの場所で勉強するみたいだな。
俺は自分が考えていた事とズレがあると思いながら聞いているとアシュリーさんが手をパンッと合わせた。
「では私の方からお声がけしますね」
「え?」
「よかったな!」
ゼノンがかなりいい笑顔を浮かべているので俺は1発殴りたくなった。だがここで殴ると負けを認める事になるので我慢。
今の俺は苦虫を噛み潰したような顔になっていると思うがカラカラと笑うゼノンがムカつく。
(まあ、今日は仕方ないか)
俺はため息を吐きながらゼノン共にアシュリーさんに引っ張られながら勉強が行われる部屋に移動。そして勉強はともかくダンスの先生にコッテリと絞られて屍のようになるのはまた別のお話。
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