第23話・vsリーネ
リーネVS俺ことグレイ。他の子供達やお付きの人達がコチラを見ており緊張するが、目の前で狂犬のように牙を剥き出にしているリーネを見てため息を吐く。
「ムカつくガキね」
「お前もガキだろ」
「何ですって!」
片手剣型の木剣を右手と左手で1本ずつ持っているリーネを見た俺は彼女は双剣タイプが戦闘スタイルなのを察する。このタイプは一撃の威力が低い代わりに機動力と手数で攻めるやり方を得意としている。
(厄介だが何とかなりそうだ)
俺は右手に持つ片手剣型の木剣を握りしめながらリーネとの距離を取る。
「あらビビっているのかしら?」
「そこは好きに捉えてもらってとうぞ」
「チィ、ムカつくアンタも他のやつみたいにボコボコにしてあげるわ」
短気で狂犬なリーネを見た俺は頭が痛くなるが、審判のリードスさんが手を上げたので気を引き締める。
「じゃあ模擬戦……開始!」
「ハアァ!!」
「まあ、そうくるよな!」
リードスさんの合図を聞いたリーネは一直線に突っ込んできた。俺は相手攻撃が予測できていたので左に飛ぶ。
「その程度かしら?」
左手飛んだ俺だったがリーネもそれに合わせてコチラにステップを踏む。
俺は少し驚きながらも相手の初撃を軽く受け流す。
「まさかこの程度か?」
「!? そんなわけないじゃない!」
リーネは最初の攻撃が弾かれた事で目の色を変えた。さっきよりもコッチを強く睨みつけながら連続で斬撃を繰り出した。
(リードスさんの攻撃よりは遅いな)
昨日の稽古でガチのリードスさんとやり合った俺にはリーネの攻撃が遅く感じる。リーネは自分の攻撃を軽くいなされている事に気づいてないのか力に任せた連続攻撃を仕掛けてきた。
「その防御がいつまで持つかしら?」
「さあな? 逆にお前の体力は大丈夫か」
「ふん! そんな柔な鍛え方はしてないわ」
リーネは右手に持った木剣を上段から振り下ろしてきたので俺は打ち払う。そこで相手の体勢が少し崩れたので左足を使いリーネの横っ腹に蹴りを入れる。
「ガハッ! ま、まだよ!」
横っ腹を蹴られたリーネだが直ぐに立て直してコチラを睨む。俺は木剣を構え直してバックステップを踏み距離を取る。
「なんで追撃を仕掛けてこないのよ!」
「さあな?」
無理に攻めると反撃を喰らう可能性がある。俺のやり方は防御・カウンター重視なので攻めるのはあまり得意ではない。
だがリーネはそれに気づいてないのか手加減されたと勘違いして怒りのボルテージを上げた。
「その余裕そうなツラをボコボコにしてあげるわ!」
「もはや貴族令嬢が使う言葉ではない気がする」
「そんな物はどうでも良いわ!」
言葉が汚いリーネに思わず突っ込むが彼女は無視して突っ込んでくる。一応、騎士爵も貴族のはずなのだが良いのだろうか……。
(まあ、今は対処しないとな)
先ほどよりも威力と攻撃密度が上がっており余裕が少なくなってきた。
「少しキツイな!」
「!? 喰らいなさい!」
左手の剣を弾いたが右手の剣で追撃を仕掛けてきたリーネ。俺はその攻撃を右に飛んで回避して仕切り直す。
「さっきから避けてばっかりとか舐めているのかしら!」
「それが俺の戦い方だからな」
「ハアァ!? 戦いは攻撃あるのみでその考え方はおかしいわ!」
「別にどう思おうが勝手だがその考えを押し付けて来るな」
コチラもちょくちょく反撃はしているので確実にダメージが入っているはず。でもリーネはまだまだ余裕そうに剣を振るって来るのでタフさもあるみたいだ。
「アナタ! 良い加減にしなさいよ!」
「何でそんなにキレているんだよ」
「そんなの自分で考えなさい」
理不尽すぎる……。俺は思わすため息を吐きたくなるが、相手の攻撃が鋭くなっているので油断せず対処。
このまま押し切ろうと考えたが、リーネがここで剣を輝かせた。
「喰らいなさい! クロスファング!」
クロスファングは剣を上段に構えて振り下ろす技。双剣スキルの中では基本的な物だが使いやすいので愛用するプレイヤーも多い。
だが俺はその攻撃に対して木剣を両手に持ちタイミングを合わせる。
「カウンターパリィ!」
「なっ!?」
ゼノンやリードスさんにも使ったカウンタースキルが今回も上手く決まりリーネの剣が大きく弾かれた。
俺はその隙を逃さずに剣を横に構えて違うスキルを発動させる。
「スラッシュ!」
「!? ガハッ!」
スラッシュは片手剣スキルでは最初に使える技。強力な斬撃を繰り出すスキルで隙が少ないのでスキルキャンセルの繋ぎとして使われる事も多い。
(これで決着だな)
スラッシュの一撃を腹に打ち込んだ。リーネは手に持っていた木剣を落として目に涙を浮かべながら蹲った。
「そこまで! 勝者グレイ!」
決着がつき、リードスさんが高々と宣言したので俺は力が抜けたように尻餅をつく。
「疲れた……」
ぶっちゃけリーネの強さは想像以上だったので疲れが押し寄せたが勝利できた喜びが大きい。
「やったなグレイ!」
「おいゼノン! 肩をバンバンと叩くなよ」
「別に良いじゃねーか」
カラカラと笑うゼノンとコチラを見て目を輝かせているシオン。俺は彼らを見て苦笑いを浮かべながら頷く。
(何とかなったな)
このまま訓練や実戦で強くなって大切な物を守る力を手に入れる。その事を思いながら俺は空を見上げた。
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