第21話・夜の食事
あの後も稽古を続けて日が沈む頃にアシュリーさんが迎えに来てくれたので、俺とゼノンはリードスさんに頭を下げて離れようとしたが……。
「もしよければ泊まって行きますか?」
「え?」
「おお、それはいいな!」
アシュリーさん一言とゼノンの後押しで俺はシーフル家に泊まる事が確定。ジャグラン騎士爵家にはアシュリーさんが伝えてくれるみたいだ。
「で、ではよろしくお願いします」
「まあ、明日は剣を使う子供達がここに集まって集団で稽古するからちょうどいいと思うよ」
「なんですと!?」
また都合のいいタイミングだなと思いながら俺は冷や汗をかく。ただゼノンはウキウキしているのか目を輝かせている。
(おいおい)
なんかまた巻き込まれる気がするし、そろそろ休ませて欲しいのだが……。
「明日が楽しみだぜ」
「そ、そうだな」
ここでマイナスな言葉を言ってゼノンの気持ちを落としたくないので頷いておく。
ーーーー
ゼノンと共にお風呂に入って汗を流した後、シフール家が用意した服に着替える。
「これから夜ご飯だし食べに行こうぜ」
「いいのか?」
「別にいいだろ」
サッパリとした服に着替えたゼノンは笑っており、俺も巻き込まれる形で夜ご飯に呼ばれたのだが……。
(え? 奥様が5人!?)
夜ご飯が用意されている部屋はかなり広くて30席くらい用意されていた。その中の上座にはギルム様が座ったのだが近くには30代くらいの女性が5人座っている。
俺は目が点になるくらい驚いているとアシュリーさんが耳打ちでギルム様の奥様達ですと伝えられた時は思わず硬直した。
(確かに重婚は法律的に認められているが5人といるのかよ!?)
もちろん奥様が5人いるという事は子供もたくさんおり、小さい子供達が総勢20人ほど席に座っている。俺は黙って端の席に座ると6歳くらいの紫髪の女の子がコチラを見て目を輝かせた。
「お兄さんだれ?」
「あ、あぁ。俺の名前はグレイ……えっと、アシュリーさんに呼ばれてお邪魔する事になった子供だよ」
「グレイ!」
グレイと連呼する紫髪の女の子で名前はメルナと名乗った。なんかいきなり女の子に興味を持たれたので驚いていると他の子供達も不思議そうに見てきた。
「ちちうえー、この子は?」
「まさか隠し子ですか?」
「待て待て!? グレイはオレの子供じゃない!」
「じゃあ拾ってきたのですか?」
なんかギルム様の方では修羅場が発生しているが、俺は見なかった事にして目の前に置かれた料理を見る。
「しっかしお前は面白いよな」
「おい、お前はもっと上の席じゃないのか?」
「その辺は他のやつと変わったぞ」
俺の右側に座っているのはこの家の時期当主で正妻の子供であるゼノンでコイツはカラカラと笑いながら川魚を口に運んだ。
左隣に座っているメルナはまだナイフとフォークが上手く使えないみたいで苦戦していたので俺は声をかける。
「手伝おうか?」
「う、うん!」
魚が上手くきれなかったメルナからナイフとフォークを借りて食べやすいように切り分ける。
(なんでメルナは口を開けているんだ?)
切り分けたらナイフとフォークを返そうと思ったが、メルナは雛鳥のように口を開けていた。
普通なら奥様あたりが注意すると思うが彼女達は修羅場の真っ最中なのでコチラを見てない。
「食べたい」
「わ、わかった」
なんかダメな方向に行っていると思うが俺は魚の切り身をフォークで刺してメルナの口元に運ぶ。
「美味しい!」
「そ、そうか」
アーン方式で一口食べてもらったので今度こそ食器を渡そうとするがメルナはまた口を開けた。
(まあ、もうどうにでもなれ)
新しい料理が来るたびにメルナの口に放り込む。この時ゼノンには笑われたがメルナはいい笑顔をしていた。
そしてデザートを食べ終わった時、やっとこさ修羅場が終わったみたいでギルム様はゲッソリしていた。
「ぐ、グレイ。ウチの料理はどうだった?」
「かなり美味しかったですよ」
「それはよかった」
ハハハと乾いた笑い声を上げるギルム様を見て目を逸らすが、その先にはメルナがコチラをガン見していた。
「なあゼノン。なんでメルナちゃんは俺をガン見しているんだ?」
「さあ? オレにはわかんね」
ニタニタと笑っているゼノンがムカついたので明日の稽古でボコボコしてやる。俺は心の中で明日のストレス発散の内容を考えているとアシュリーさんが近づいてきた。
「グレイ様、そろそろ寝室に向かわれますか?」
「は、はい! そうします」
「なら、オレも一緒に向かってもいいか?」
「わ、わたしも」
「わかりました!」
アシュリーさんが笑顔を浮かべたので俺、ゼノン、メルナは席から立ち上がる。他の子供達もメイド達の案内で部屋から出て行く。
(かなりしっかりしているな)
流石上位貴族である辺境伯家だと思いながら大部屋から出ていく。
そして何故かゼノンとメルナと共に添い寝する事になったが特に何も起きなかった。
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