第14話・魔法剣士
さっきまでは加護やリーネとの模擬戦の話になっていたが、今度は辺境伯様への挨拶の話になった。
「それで話は変わりますがグレイ様にはシフール辺境伯様に挨拶して欲しいんですよ」
「あのー、普通に話してもらって大丈夫ですよ」
「そ、そうか! オホン」
体裁とかあるがここは公式の場ではないので苦労されているガイン様には安心してほしい。
(苦労人の匂いがする)
後で胃薬でも用意するかと悩んでいるとガイン様が改めて口を開く。
「普通ならアーセナル男爵家の当主様も呼ばないといけないんだが……」
「何かあるのですか?」
「逆に無かったら家族全員で来てもらう事になるだろ」
「まあ、そうですね」
現当主である父上を呼ばずに俺だけを呼んだ時点で何かある事は明白だ。俺はガイン様は何か隠していると思い疑ってみる。
「それでその訳はなんですか?」
「あ、うん。話すのが難しいがここで言った方が良さそうだな」
「?」
ガイン様は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべており、俺は覚悟を決めて耳を傾けた。
「王都や貴族の中で優秀な祝福を持つ子供達が大勢現れ始めたんだ」
「ええ!? それってかなりおかしくないですか?」
「あぁ、しかも娘と同世代の子供だけが異様に多いんだよ」
「そ、そうなのですね」
この時点で嫌な汗がダラダラと背中に流れるが、ガイン様は俺の目をしっかり見ながら続きを喋る。
「まあ、それで優秀な祝福を持つ子供を上位家族が探し始めたんだよ」
「……僕もその候補に入るのですね」
「普通に考えて8歳でサーベルタイガーを倒す子供の時点でかなりおかしいだろ」
(ごもっとも)
確かにサーベルタイガー相手なら速攻で殺されるのは目に見えている。だが俺の場合はゲームでの経験と奥の手があったからギリギリ勝てた。そのアドバンテージがあるので安心していたが違う問題が現れたな。
「なるほど……」
俺は辺境伯様に従える事になるかもしれない。そうなれば家族を守る所か自由もなくなる。
(なんとか避けたいな)
正直明日の加護診断でハズレか下級職を願うしかない。俺はまだ見る明日に運命をかけるように祈り始める。
「さて、グレイ君も長旅で疲れてそうだしお風呂に入って来なさい」
「お、お風呂ですか?」
「うん? お風呂を知らないのか?」
ジャグラン騎士爵家の屋敷にはお風呂があるのか……。実家では井戸の水で体を洗っていたので久しぶりだな。
俺は浮き上がる気持ちを抑えているとガイン様が笑った。
「私が説明するよりも実際に入ってみるといいよ」
「わかりました! では、失礼します」
ガイン様がテーブルに置いてあるベルを鳴らしてお付きのメイドを呼ぶ。そして俺はお風呂を満喫した後、美味しい食事に舌鼓を打ち客室のベッドで眠った。
ーーーー
次の日。俺はロイドさんと共に教会に向かい始めた。
「馬車が使えないのは辛いところだね」
「いえ、僕は目立つのが好きじゃないので歩きでも大丈夫ですよ」
「それはよかった」
平民街は貴族街と違って活気があり賑やかだ。その中で美味しいそうな肉の串焼きとかあったが今は我慢してロイドさんについていく。
(後で寄りたいな)
手持ちは銀貨5枚ほどあるので串焼き肉くらいは購入できるはずだ。
(この辺はゆっくり回りたいな)
今歩いている商店街の風景を見た俺はワクワクしながら周りを見る。
「そんなにワクワクしなくても帰りに寄って行けばいいよ」
「わ、わかりました」
ロイドさんは苦笑いを浮かべていたので少し恥ずかしくなりながら俺はトコトコ歩く。体感ではジャグラン騎士爵家から出て1時間くらいで真っ白な建物が見えた。
「グレイ君、ここが教会だよ」
「へえぇ、真っ白な建物なのですね」
「珍しいだろ」
教会は日本の小学校みたいな見た目で孤児院もあるらしくて子供達が多いみたいだ。
俺はロイドさんから簡単な説明を受けた後、意を決して中に入る。
「ここが教会ですか……」
中に入ると光を発する魔道具が天井に取り付けられている。この光の魔道具は現実世界の電球みたいな物で魔石が動力源だ。
うん、教会の中は木の長椅子が並べられていて現実世界とはそこまで差がないな。
「鑑定用紙を貰ってきたよ」
「鑑定用紙?」
「あぁ、これも説明しておくね」
B5サイズくらいの白い紙を手に持っているロイドさんは鑑定用紙の説明をしてくれた。
「鑑定用紙はその名前の通り使い手の能力やスキルを鑑定するんだよ」
「スキル? つまりは自分が持つ力ですか?」
「そうだね。スキルが有れば就職は便利だしお金も稼げるよ」
ちなみにロイドさんは下級職の騎士みたいで剣術系のスキルを持っているらしい。
(なかなか現実的だな)
俺はロイドさんから鑑定用紙を受け取り礼拝堂の中央にある女神像の前に立つ。
(確か慈愛の女神カーネリア様だったよな)
この世界には神様が存在しているがゲーム時には出会えなかった。俺はその事を思い出しながら隣で立っている教会のシスターに声をかける。
「すみません」
「あ、能力鑑定の方ですね」
「はい。あの、どうすれば良いのですか?」
「女神像の前に立って鑑定用紙を手に持ちながら目を閉じれば良いですよ」
そこまで細かいやり方はないみたいで俺は教会のシスターの指示を受けて目を閉じる。
(よろしくお願いします)
俺は祈るように目を閉じると頭の中に女性寄りの機械が響いた。
『第二ロック解除、直感と強運を獲得。月光剣・クレールのレベルが2に上がりました』
(ん?)
頭に響いた機械音声は転生した時にスキルを得た時と同じ。俺は目を開けて右手に持つ紙を見る。すると……。
・名前、グレイ・アーセナル
・性別、男性
・年齢、8歳
・加護、
〈スキル〉
・片手剣術〈レベル2〉
・水魔法〈レベル3〉
〈パッシブスキル〉
・直感〈レベル1〉
・強運〈レベル1〉
〈ユニークスキル※〉※本人のみ閲覧可能
・月光剣・クレール〈レベル2〉
(は、え? 上級職の
俺は思わず頭を抱えそうになるがなんとか堪えてシスターに頭を下げてから礼拝堂の椅子に座り能力の確認を始めた。
〈あとがき〉
読んでくださった皆様に感謝を!
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