第13話・ジャグラン騎士爵

 先ほどからギャアギャア騒いている赤髪ポニーテイルの少女はジャグラン騎士爵家の長女であるリーネ・ジャグラン。彼女は俺と顔を合わせた瞬間、偉そうにふんぞり返りながら指を刺して来た。


(なんなんだコイツは……)


 普通に考えて自分よりも上位の貴族相手にする事ではない。ただリーネは幼いのかその事に気づいておらずコチラを睨みつけて来た。


「こんな奴が強いわけないわ!」

「リーネ様、落ち着いてください!」

「いやよ! アタシには強い祝福があるの!」

「それとこれとは話が別です」


 リーネは態度を変えずにメイドさんと言い合っている。俺は呆気に囚われていると入り口の方から怒鳴り声が聞こえた。


「何を騒いているんだ!」


 部屋の外から聞こえて来た怒鳴り声。渋いダンディな声が聞こえたので振り向くと部屋の入り口には20代後半くらいの赤髪の男性が目を鋭くしていた。


(なんか昭和のスターみたいなイケメンだな)


 肉体は鍛えられているのかガタイがしっかりしている。彼はコチラの状況を見てため息を吐いた後にツカツカと歩いて来た。


「マーナ、状況の説明をしろ」

「は、はい旦那様! 実は……」

(旦那様? そうなるとこの人がジャグラン家の当主様か)


 リーネと言い合っていた20代くらいのメイドさんことマーナさん。彼女は何が起きたかを赤髪の男性に伝えた。

 

「まさかそんな事が」


 頭に右手を当てて頭痛を抑える格好になったジャグラン家の当主様はリーネを睨みつけた。


「父上! アタシは!」

「このバカ娘が!」

「ギャア!?」


 尚も何か言おうしたリーネの頭に当主様の拳骨が落ちた。その勢いは強くリーネの頭からゴンと鈍い音がした。


「君がグレイ・アーセナル様ですか?」

「え、ええ、そうですが……」

「私はジャグラン騎士家当主のガイン・ジャグランです。我が娘の非礼をお許しください」


 ガイン様はガバッと頭を勢いよく下げて来たので俺は焦りながら言葉を発する。


「いえいえ!? 僕は大丈夫ですよ」

「そう言っていただきありがとうございます」


 普通に考えて自分よりも位が高い貴族相手に暴言に近い行動をとった。普通なら大問題になるがここは正式の場ではないので黙っておく。


(かなり苦労してそうな人だな)


 頭を上げたガイン様は頭を押さえて涙目になっているリーネを睨みつけた。


「マーナ、リーネを連れて行け」

「あ、わ、わかりました!」

「ちょ、お父様!?」


 リーネは何か言いたそうにしていたがマーナさんに羽交締めにされたので無理矢理部屋から追い出された。ガイン様はリーネが部屋を出て行ったのを確認して目の前のソファに座る。


「重ね重ね申し訳ありません」

「いえ、そこまで気にされなくても大丈夫ですよ」

「……失礼を承知でお聞きしますがグレイ様は本当に8歳ですか?」

(ギクッ!?)


 ふとした質問に内心ではかなり焦るが、なんとか取り乱さないように口を開く。


「はい! 2ヶ月前の5月に8歳の誕生日を迎えました」

「そうですか……。今の発言はお忘れください」

「わかりました」


 何かに気にしているのかガイン様は瞬きが多くなった。そして執事長のガウェルさんが紅茶が乗ったカートを運んできたので俺もいただく。


「ガウェルさん。この紅茶美味しいです」

「お褒めに預かり光栄です」


 ガウェルさんからおかわりの紅茶をいただいた後、険しい表情を浮かべているガイン様に声をかける。


「あのリーネ様は何故あそこまでお転婆なのですか?」

「それは……教会で剣豪の加護が判明したからですよ」

「剣豪の加護ですか?」

「ええ」


 確かゲームでの教会は職業の変更とかが出来たはずだ。


(つまりはゲームの職業が加護になっている感じか)


 ゲームでは加護のところが職業で下級職、中位職、上位職、最上位職、そして生産職の4つが有り教会で変更ができた。だがガイン様の話ではこの世界での職業変更が例外がない限りはできないみたいだ。

 

「つまりはリーネ様は優秀な加護を持っていたから増長しているのですね」

「しかも同年代ではリーネに敵う相手がいないのです」

「そ、そうなのですね」

(つまりはガキ大将みたいな感じか)


 力そこ全てと考えるのはおかしくないし力が無ければある大切な者は守れない。俺はその事を思いながらガイン様はため息を吐いた。

 

「あの、グレイ様。いきなりで申し訳ないのですが恥を忍んでお願いしたい事があります」

「お、お願いですか?」

「ええ。もしよければリーネと模擬戦して欲しいのです」

「は、はい!?!?」


 自分の娘と模擬戦をしてほしい。その事を聞いて渋い表情を浮かべるとガイン様は申し訳なさそうな表情を浮かべた。


「私も心苦しいですが上には上がいる現実を知った方がリーネの為になると思いまして」

「確かに……。ただ、でも僕は自分の加護を知らないですよ」

「!? そ、そうなんですか!?」


 ガイン様と話している中、俺は自分がなんの加護を持っているかわからないので素直に返答する。対するガイン様は俺が自分の加護を知らない事を知って目を見開いた。


「そうか……。では、教会で鑑定されますか?」

「あ、はい! お願いします」

「わかりました。ガウェル、明日教会に向かえる時間はあるか?」

「ええ、辺境伯様との会合は明後日なので大丈夫です」


 なんだろう……。辺境伯様に挨拶に来たのにややこしい事になっている。


(思わず流されてしまったな)


 これから起きる事に俺は嫌な汗をかきながらガイン様との会話を進めた。


〈あとがき〉


 読んでくださった皆様に感謝を!


 面白いな、続きが読みたいな、と思われた方は星とブックマークを是非よろしくお願いします。

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