第10話・第三部隊の隊長

 カシャ村に来た騎士様は前と同じくジャグラン家の人達。彼らは屋敷の前に馬車を止めると代表の方が出てきた。


「ジャグラン騎士団の第3部隊長であるドングです! 今日は騎士団長の代役として来ました!」

「ご丁寧にありがとうございます! 今主人は狩りに出ており不在なので屋敷の中でお待ちください」

「では、それまで待たせていただきます!」


 30代くらいのスキンヘッドで筋骨隆々の男性、ドング隊長。彼は母上の言葉を聞いて敬礼をした後、後ろに振り向いて部下達に指示を出し始めた。


「馬車は少し離れたところ移動させろ」

「「「ハッ!」」」」


 第3騎士団は30人ほどで前回の半分くらいの規模だ。俺はキビキビと動く騎士様を見ながら周りを見る。


(あ、ロイズさん達もいるのか)


 サーベルタイガー戦が終わり意識を失った時に助けてくれたロイズさん達。俺は少し安心しながら手が空いた時に声をかけようと思った。


(前よりは慌ただしくなくてよかった)


 サーベルタイガーみたいな強モブが現れたわけではなさそうだ。騎士様の表情には安堵感があるので俺は安心しながら隣でキラキラした目をしているリムに声をかける。


「リム、騎士様は忙しそうだよ」

「では兄上が剣の相手をしてください!」

「あぁ」


 チラッと母上の方を見ると頷いていたので、俺は苦笑いを浮かべながらリムと共に中庭に移動した。


 ーーーー


 カンカンと木剣でリムと打ち合いをしているとフレミーの森から帰ってきた父上に声をかけられた。


「また腕が上がったか?」

「いえ、変わらないですよ」


 リムの水平斬りをバックステップで回避して木剣をリムの首元に突きつける。


(戦い方の相性がいいだけだろうな)


 攻撃重視のリムの剣は鋭くなっているが、今でもカウンターで対処出来るのでやりやすい。俺はそう思いながら悔しそうな表情を浮かべているリムから父上の方に向く。


「うぐぐっ、よそ見をしていたから勝てると思ったのに!」

「ハハッ、そこはグレイの方がまだ上手だな」

(いえ、前世の記憶の影響です)


 流石に前世の記憶の事は言えないので黙っていると父上が近づいてきて俺の肩を叩いた。


「あの父上。ジャグラン家の騎士様が来ているんだけど何か聞いたの?」

「あー、その件なんだが」

「?」


 父上が若干渋そうな顔になったので面倒事かもしれない。俺は身構えているとある意味予想通りだった。


「実はな……サーベルタイガーを討伐した件で辺境伯様がおられるロジエに向かわないといけなくなったんだよ」

「もしかして何か褒美が貰えるのですね」

「まあな」


 褒美が貰えるなら今年の税金を無くしてほしいと思った俺だが、父上は驚きの発言をする。


「呼ばれたのはお前なんだよ」

「へ? なんで俺ですか?」

「そりゃお前がサーベルタイガーを倒したからだよ」

「ええ!? 兄上があのサーベルタイガーを倒したのですか?」


 父上の発言に今更ながらリムが驚く。その状況を見て俺は思わず冷や汗を流す。


(能力がバレたか?)


 確か能力を鑑定する事ができる教会が辺境伯にあるはず。そうならば俺の能力もバレるかもしれない。俺はそうなれば厄介な事になると思い焦り始める。


「ち、父上! 僕はロジエに行きたくないのですが……」

「うーん。既に迎えは来ているし呼んでいるのが辺境伯様だから断るのは難しいな」

(父上!?!?)


 ダメだ、ここはなんとかして断らないといけない。だが頭が良くない俺では対抗手段が思いつかないまま父上に連れられて屋敷の中に入っていく。


(リムは中庭で素振りをするらしいし俺もやりたいな)


 リムは巻き込まれたくないのか素振りを始めたので俺は思わずため息を吐く。


(こ、断れないかな?)


 相手は辺境伯でコチラは男爵で普通に考えて断るのは難しい。俺は考えがまとまらないままリビングに戻りドングさんと顔を合わせる。


「お待たせしました。私はアーセナル男爵家当主のロンズ・アーセナルです」

「ハッ! 自分はジャグラン騎士団の第3部隊長であるドングです!」


 軽く頭を下げる父上と大きく頭を下げるドングさん。俺は呆気に囚われていると父上に軽く背中を叩かれたので椅子に座る。

 先に席に座っていた母上は若干疲れた表情を浮かべており父上が帰って来た姿を見て口から息を吐いた。


「アナタ、やっと帰って来たのね」

「待たせたな」


 げっそりとした母上を見た父上は申し訳なさそうにしていた。その姿を見たドングさんは生暖かい目でコチラを見て来たので俺は軽くコホンと咳をする。

 

「父上、母上。今はドングさんの話を聞いた方が良さそうですよ」

「た、確かにそうだな」

「え、ええ」


 流石に息子やドングさん達がいる中でラブラブするのはやめたのか父上と母上が真顔に戻る。


(うん、切り替えが早い)


 切り替えが早くないと貴族社会ではやっていけないみたいだ。俺は色々大変だと思った後、ドングさんの方を見ると彼は微妙な表情になりながら口を開く。


「では、当主がお帰りになったので初めから説明しますね」


 今回、ドングさん達がこの辺境のカシャ村に来た理由を話し始めた。


〈あとがき〉


 読んでくださった皆様に感謝を!


 面白いな、続きが読みたいな、と思われた方は星とブックマークを是非よろしくお願いします。

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