AOBAPAGE


「謎の美少女、消えた街、ただ真っ白で、心空白に、ただ漂う、独りぼっちのスペース。満たされないフレーズ。スピードじゃ縮まらないスカイロード、君がゴールのロードレース。みたいな! そんなんだろ、だろ? 青矢! う~ん青春、青葉、絶対ウォンテッドだぜ」


 ハエドローンだけ興奮して、ぼくにたかるウンコバエになって飛び回ると、いきなりスカイロードを流れる音楽が「謎の美少女♪ 消えた街~♪」さっそく、楽曲化されて商店街に響き渡る。

「オコネル君!」ハエドローンが叫んだ。

 オコネル君とは、自曲を一億回再生させて、その著作性を巡って三億回叩かれた音楽野郎のこと。

 ハエドローンの即興ラップを早速、楽曲化。

 オコネル君の手がける購買意欲を煽りまくって、商店街の売り上げを30%上昇させたと言う商店街応援ソングが中断し、ハエドローンの即興ラップがとんでもないスピードで、ナイスソングと化し、ストリートのスピーカーから流れてくる。


 やがてハエドローンが提供した詩が途切れると、オコネル君がこう継ぎ足した。

「ただ、空白のスペース。青葉のネーム以外、なんにもない、そこは、青葉ページ。書きはじめよう、青葉ページ、最初に連ねよう、ぼくのネーム」


「よっしゃ! この作戦。それで、決まりだな。砂漠の嵐作戦、ジェロニモ作戦、ドラゴン・ルージュ作戦、もう、血生臭いのうんザリガニ。青葉を奪還せよ。名づけて作戦、青葉ページ。発動だ」

「青葉ページ。火星でないのが残念な地球内作戦だが、どう探す? インビジブル」

 湯川が尋ねると、ドローンバエがそこらを一周してぼくの肩に戻り、奇妙な回答をした。

「このスカイロードに仕かけられた防犯カメラに、今アクセスした。青矢がガッコウふけて、ストーカーしてた時間から。現在、アクセス成功。ふむふむ。それで青矢、おまえ、なに一人でぶつぶつ喚いてんの?」

「一人でぶつぶつ? なわけねーだろ! 青葉と心の交流、心のウォシュレット、そんでもって浄化された二人。青葉という名前だけ残して、走りさるイタイケで可憐な後ろ姿だった・・・おまら眷属どもの目には、純な人間の営みが曇って見えないらしい」


「阿多!」

 ケンシロウが、湯川とスマホで共有しているぼくのハッキング映像を、その岩をも貫く指でさした。

「貴様たち、見えないのか? 心の目を開け!」ケンシロウは目を閉じると、心の目で消えた青葉を追った。

「なに?! ホント、オレ以外映っとらんじゃん!」

 湯川の握るスマホを覗き見たが、どこにも青葉が映ってない。

「そこまで、キテしまったか、青矢。地球内事情から逃避、妄想によって作り出した理想の彼女に青葉と名づけて、追いかけ回す一人芝居。辛い地球内事情を、忘れたいあまりに。気の毒だが、地球内の事情にこだわり続ける限り、妄想から抜け出せまい」

 そして湯川の詭弁を裏付けるかのように、映像が途切れた。


 マジか! オレ一人で泣いて喚いて歩いて終わり・・・

「防犯カメラの映像は以上。これが全て、青葉ページ終了、ちゃんちゃん」

 ハエドローンが、しらけ切って飛び立った。

「そこだ!」

 ケンシロウのスゴ腕、猛ストロークが、再びインビジブルを捉えた。

「放せ! ケンシロウ、 証明されたろ? 青矢の狂言ごときで数億円のハエドローン潰す気か!」 















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