KAKURITU

 望むと望まざるとに関わらず、終点はやってくる。

 ぼくと青葉で歩いた距離は、スカイロードの半分にも満たなかった。


「おかしい!」隣を歩く椿がお腹を抱えて笑い出す。

「なにが、おかしいんだよ?」

「だって、ここで、ハイ、サヨナラって。友だちとケンカしたからって?」

「そう! 友情にあついんだ。青葉」

「ふーん。そういう可能性もあるよね。10%未満で」

 あまりの可能性の低さにコケた。

 態勢立て直しながら「おまえって、疑い深いんだな」

「いい? この場合、疑ったほうがいいのは自分、青矢君です。90%の確率でフラれてる」

「なぬ!」舌を噛んだ。「オレが、フラれた? とかそう言うんじゃなく! メチャクチャピュアな心の交流して、オレら浄化されたんだって。青葉もおんなじ、はず・・・」



「じゃ、なんで連絡先教えてくんなかったの?」

 それが、この世界の真実だから。

「じゃなーい! オレが聞かなかったからにちがいねえ、おおいにちがいねえ」

「10%の確率でね。だって、わたしだったら聞くもん。その人と終わりたくなかったら。それが、いきなりダッシュ! 友だちと仲直りしたいからって? 90%の確率で青矢、変態と察知して逃げ出した。はい、これをもって、青葉の捜索は打ち切り。傷を深める前に帰りましょ」



「かってに打ち切んなよ。百歩譲って認めよう、が、しかしだ。この剥き出しの心臓エンブレムが、10%の可能性が残っている限り、あきらめることを許してくれるだろうか?」

 いいこと言ったぜ。椿のヤツ、帰ろうとした足止めてやんの。

「そこのコロッケ屋のオヤジさんに、ちと聞いてみてくんない? 青葉のこと」

「なんで、わたしが! だいたい青葉って、ほんとの名前かしら?」

 椿がニヤニヤして言った。

「懐疑主義者! どこのガッコウなの?って聞いたら、真理をお告げする薔薇の唇から、青葉と。いと神々しき神秘体験であった。あの女神が青葉と名乗ったことに、絶対の疑いなし!」

「だったら、自分で聞いて!」

「だって、オレが言うと怪しいじゃん。こんもり胸盛ってて、小さな薔薇みたいな唇に、髪かきわけて、思わず頬ずりしたくなっちゃう凛とした顔立ち。だなんて、かんべんしてよ。官能小説朗読してるみたいじゃん」

「じゃ、かわいい制服着た、修学旅行生見ませんでした?って。百人聞いても百人答えられんわ。終わってんの。気づけ、青矢」


 灰色がかった吸いこまれるグレーの瞳・・・

 言おうとして、口をつぐむ。

 なぜだろう? 

 それだけは、秘密にしておきたかった。結構な特徴なのに。











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