PRI
スカイロードを椿と二人して歩いていく。朝とは違い、かなりの人でごったえしている。
人混みの中だろうが、いかにもプロ高ですって制服が歩行者たちの目を引いた。
厳密に言えばPro科の制服のこと言ってるのだが、当然、そのデザインをPro
科のハンドルネーム、レディー・オカカが制作したことは言うまでもない。
レディー・オカカのデザインした制服が、ファッション雑誌で取り上げられたものだから、コイツに肌を通す人間は、Pro科の人間としての自覚を強制される。
「ねえ、あそこ!」
「なに! 青葉のヒント、どこ!」
椿が指をさす先に、おびただしい女子高生たちが。
あそこか!
直行して女子高生の群れをかき分け、青葉を探しまくる。
「青葉!」
似たような制服着た子の肩鷲づかんで振り向かせたら、違ったからポイ!
「青葉!」
また、似たような髪型した子がいて、肩をつかんだが違ったからポイ!
「青葉!」、ポイ! 「青葉!」、ポイ! 「青葉!」、ポイ!
そんなん繰り返しているうち、ぼくの肩をトン!
「青葉!」、振り返ると青葉とは似ても似つかない髭面巨体の熊男が・・・
「この張り紙、読めない? 男子禁制。おまえみたいなの、いるから」
ムキっと胸板が倍増、ぶっとい腕が首を絞めてネック・ハンギング・ツリー!
死ぬ・・・そう思った直後、床から1mは浮いていた両足が「ストン!」、体操選手みたいに美しい着地。
「ゲホ!」美しい着地から一転、膝をついて周囲の空気をかき集めて急激吸収する。
「てんめえ!」、呼吸するのがやっとの状態でなんとか発した。
立ち上がって反撃態勢をとり、熊店員をぶん殴りにかかると、真ん前に椿の背中が立ちはだかった。握った拳を緩め、椿の肩に手を置いて、「椿! どけ!」
「わたしたち、いっしょに撮りきたんです」
プリクラを囲うボードに、プリントされた、Pro科制服を着た美少女が微笑んでいる。
「リアル椿ちゃん! サインください!」熊店員が一変して熊のプーさんに。
「カップルなら、オーケーなんですよね?」
「もちろん、椿ちゃんの知り合いなら、誰でもオーケーだよ。カップルじゃあない、その変態君でも」
「これ、おまえなん?」ぼくは胡散臭くて、その盛りっぷりを確かめるべく椿の写真の間近に歩み寄る。
「いいから!」
椿に襟首を引っ張られてムリヤリプリクラへ引きずり込まれた。
「気をつけてよね。ここは、女の世界なんだから」
「知るか! ここに青葉がいるって・・・」椿の柔らかい掌に口を閉ざされる。
「だなんて、誰が言った?」お金を投入して、スピーディーに色んなモードを選択して、はいチーズ。
でろーん、プリントされて出てきたプリクラを椿がマジマジ見つめる、ニッコリ笑顔に。
こ、コイツにもこんなJKの面が、かわいいじゃん。まあまあ。
外へ出がてら、椿が握りしめるプリクラを覗き見ようとすと「ムリ!」
椿はすかさず、カバンにプリクラを押し込んで、ボードにプリントされた自分の写真を解説し始める。
「これが、Pro科特別仕様の制服。種類はダブルの純白ブレザー、左胸に真っ赤な心臓のエンブレム。真っ白いピュアな心に剥き出しの心臓を掲げる、うちらPro科の情熱をレディー・オカカが表現してる。そして上襟と下襟のシンメトリーが、自由に羽ばたく蝶を。金のボタンはお金、これだけはちょっと下賤だけど、まあ、大事なこと。スカートは限りなく黒に近い青、ちょっと理想めいた上掛けを、下から沈着した深い瞑想で落ち着かせる効果あり。まあ、これがレディー・オカカが説明してくれた全体的なイメージ。それで? 青葉の制服ってどんな特徴あった?」
「はい?」
「だから! 制服って、かなりの情報持ってるわけ。ガッコウ、特定できるかもしれないじゃん」
「な、なるほど! 青葉の制服は・・・こんなんで、そんで、ここが、こうなってて、要するに! かわいい制服であった。以上」
「けっきょく、それかよ」
呆れて、とっととプリクラを後にする椿の後ろ姿を見ながら、アイツも学生不適合者であることを思い出す。
プリクラ、デート、普通の高校生がやってること、おまえもやりたいよな。
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