SOUKAI
「なに?」
「人の不幸、みんな大好きって。わたしは、蝋人形君のお話し聞いて、ぜんぜん、ハッピーな気分になりませんでしたよ。今、この胸のどんより感どうしようって感じです」
歯を食いしばった。
「全部オヤジがわりーんだ! オヤジのヤツ、母さんがあんな死に方したのに、葬式しながら仕事こなしてた。いや、仕事しながら葬式こなしてんだ。オレは、オヤジみたいになれない」
「お父さんみたいになんなくて、よかったじゃないですか。蝋人形君はもう、蝋人形をやめたんですから」
「なんで、そうなるの?」
「わたしに、弱い自分をさらしてくれたじゃないですか。それってもう、なんにも表現しない蝋人形やめて、自分の道を歩みだしたってことなんです」
「そ、そうなの」
なんか、むりやり説得させられた感が。
けど、爽快にねじ伏せられたこの感じ。なんだろう?
「君、どこのガッコウなの?」
灰色がかった瞳で真っすぐ見つめられる。
何かが始まる一秒前。
「わたしは青葉です。修学旅行で来ました。友だちとケンカしちゃって、一人になりたかったの。でも、蝋人形君と話せて、友だちも強がってたのかなって、気づいちゃいました。戻ります」
彼女は駆けだした。甘い香りだけ残して。
ポツンとひとり、取り残された空を見上げる。
曇ったり、嵐になったりするけど。きほん空って青いんだ。
崩壊したら崩壊したでいいや。
ガッコウ、行ってみるか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます