SOUKAI

「なに?」

「人の不幸、みんな大好きって。わたしは、蝋人形君のお話し聞いて、ぜんぜん、ハッピーな気分になりませんでしたよ。今、この胸のどんより感どうしようって感じです」

 

 歯を食いしばった。


「全部オヤジがわりーんだ! オヤジのヤツ、母さんがあんな死に方したのに、葬式しながら仕事こなしてた。いや、仕事しながら葬式こなしてんだ。オレは、オヤジみたいになれない」

「お父さんみたいになんなくて、よかったじゃないですか。蝋人形君はもう、蝋人形をやめたんですから」

「なんで、そうなるの?」

「わたしに、弱い自分をさらしてくれたじゃないですか。それってもう、なんにも表現しない蝋人形やめて、自分の道を歩みだしたってことなんです」

「そ、そうなの」


 なんか、むりやり説得させられた感が。

 けど、爽快にねじ伏せられたこの感じ。なんだろう?

「君、どこのガッコウなの?」

 灰色がかった瞳で真っすぐ見つめられる。

 何かが始まる一秒前。

「わたしは青葉です。修学旅行で来ました。友だちとケンカしちゃって、一人になりたかったの。でも、蝋人形君と話せて、友だちも強がってたのかなって、気づいちゃいました。戻ります」

 彼女は駆けだした。甘い香りだけ残して。


 ポツンとひとり、取り残された空を見上げる。

 曇ったり、嵐になったりするけど。きほん空って青いんだ。

 崩壊したら崩壊したでいいや。

 ガッコウ、行ってみるか。


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