ABNORMAL

 ふつうじゃない。

 また、交差点を、車やバイクが激しく行きかう。

 

 群れ、みたいなものから、彼女は完全に浮いている。群れ、を淋しげな背中で眺めている。

 

 群れからはぐれた小鹿みたいな足が、急に動きだす。


 まさか・・・・・・

 もう、やめてくれ!!


 夕焼けに染まる空、屋上の錆びた鉄柵、立ち入り禁止のポールを越えて、あちらへ飛び去った母さんはもう、戻ってこない。

「ダメだ!」

 心臓が爆発して駆けだす。

 信号が青に変わって、彼女は歩きだした。 

 

 なんだよ。勘ちがいか。

「ふー」

 安堵のため息もらしながら、彼女の後をつけていった。

 もう、ストーカーでもなんでもいいや。

 彼女の通うガッコウまで見送ってサヨナラ。それだけ。

 そう思っていると、彼女は歩道を反れて古いお寺へ入っていった。


 え? このお寺って、学校もやってんだっけ。なわけないだろ・・・

 入口から院内を見渡したけど、やっぱりふつうのお寺。

 レキジョかよ? 

 このお寺、有名じゃん。

 テレビで見たことあった。観光スポットで、芸能人が遊びにきていた覚えがある。

 たしか、名物があって・・・イモグリアイス!


 芸能人がうまそうにイモグリアイスなめてたベンチへ彼女は座った。

 お寺じゃなく、ぼうぜんと空気を見つめながら。お寺が目的じゃない。レキジョでもない。やっぱ、なんか変だ。

 ちょうど、売店のシャッターが開いた。開いたばかりの店内に押し入って、目を丸くしたおばちゃんにムリな注文をする。

「おねがい!」

 それから、彼女の座るベンチのとなりに腰かけて、イモグリアイスを差しだした。

「よかったら・・・」

 とつぜん、知らないヤツから目の前につきだされたイモグリアイス。

 

 あたりまえだろ。

 無表情の彼女から、ぼくは眺められるがまま、手が震えて、イモグリアイスを落としそうに。


「ごめん。やっぱ、キモいよね」


 この場から逃げたくて立ち上がった。


「それ! イモグリアイスですよね!」


 無表情な目と裏腹に、その声はかん高く興奮している。

 サツマイモ風味のソフトクリームにペースト状の栗が斑に付着している。実はコレ、ぼくの通うガッコウの生徒が企画したアイスクリーム。

 だから、ぼくの制服見た売り場のおばちゃんが、朝一の準備不足にかかわらず融通きかしてくれわけだ。

「よかったら」

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