TOWN

 どうしても、今日だけはガッコウ、行きたくない。

 次の駅は終点で、初めて降りる駅でもあった。

 観光名所になっていることは、なんとなく知ってたけど、家とは逆方向だし、遊ぶ時はモールがある駅で降りるからほとんど無縁。


 登校拒否して、見知らぬ街を無目的にフラついた。

 

 もしかしたら、明日も続くかもしれない。明日は、ちがう街をフラついて。


 そう思ったら、なんだか恐ろしい気分に。交番のわきをとおる時、お巡りさんが立っていて「学校は?」。


 もし聞かれたら、なんて答えよう?


 なんにも思い浮かばないまま、交番をすぎていった。声をかけられるどころか、見向きもされない。


 まだ、通学時間帯だし。

 戻るなら、今なんじゃ?


 腕時計を確かめて、立ち止まった。頭の中で、いろんな足し算引き算しながら。


 答えをだすように、鮮やかなリボンが。蝶みたいにヒラリと舞って横切った。

 見たことない制服を着た彼女の後ろ姿に、ぼくは見とれる。


 どこの高校だろう?

 

 固まっていた足が、彼女のしなやかな歩行といっしょに、柔らかく動き出す。 


 これって、ストーカーだよな? いや、まちがいなくストーカーだろ・・・


 スクランブル交差点に差しかかると、信号は青なのに、彼女は立ち止まった。


 やべ! どうする? このまま通りすぎる?


 かなり不自然だったけど、彼女の後ろにくっついたまま、ぼくも青信号を見送ることに。

 

 ネクタイいじったりカバンの中まさぐったり、スマホ置いてきたこと、かなり後悔しながら挙動不審に待つ。やっと赤信号に変わって、通行人を装うことができた。

 交差点を、車やバイク、自転車が激しく行きかうのを見ながら。

 ぼくはどうしたいんだ? 

 信号が青に変わる前に、答えを出さなくちゃならない。

 このまま、ストーカーするか、引き返すか。

 なんと、彼女は次の青信号も見送った。これは、普通じゃない。


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