第17話 王族とパートナー ※マクシミリアン王子視点

「はぁ……」


 机の上に積み重ねられた書類の量を見て、俺はため息をつく。今日までに処理しておかないといけない仕事が目の前に、大量に残っているから。その量の多さを見て、ウンザリする。


 今のペースで処理していくと、また今日も深夜まで仕事が終わりそうにない。なぜこんなに遅れているのか、分からない。毎日、頑張って処理しているというのに。


「仕方ない。やるしかないか」


 気合を入れて、机の上に置かれている書類を次々と手にとって処理していく。そのペースは、なかなか早くならない。


 疲れた目で書類を読み、ズンと重たさを感じる頭を働かせて、精神的に大きな負担となる判断と決断を繰り返していく。それぞれの作業が、かなり疲れる。


 最近、仕事を処理するペースが落ちている。そして、どんどん疲労が溜まりやすくなっている気がする。だからといって、この仕事を休むことは出来ない。休んだら、処理しなければいけない仕事が次々と増えていく。それだけでなく、王国内の状況が悪化するかもしれない。そうなれば、民たちに迷惑がかかるだろう。


 他の誰かに仕事を任せることは出来ない。自分以外の誰かに俺の仕事を任せたら、それだけ処理が遅くなってしまう。逆に、奴らは余計な仕事を増やしたりする。そうなると、もっと大変なことになる。


 俺たち王族は、普通の人間たちと違って非常に優秀である。そして、ずっと昔からこのやり方で成功してきた。だから、大事な仕事は他人に任せたりせずに自分たちで処理する方が確実だった。


 なにより、他の人間に仕事を任せるなんて信用ならない。いつ奴らが裏切ってくるのか、そういう警戒が常に必要だった。だから今、俺が頑張らなければ。


 いつでも気合を入れて仕事が出来るように、信頼できるパートナーを見つけることが王族にとっては非常に大事だった。


 俺は、姉のマリアンヌより妹のルイーゼの方が回復魔法の扱いが上手だろうと判断した。ルイーゼが実力者であることを、自分の目で確かめた。だから、マリアンヌに婚約破棄を告げて、ルイーゼを新たな婚約者にした。彼女のほうが、王になった俺を支えてくれるだろうと思って。その判断は間違っていないはず。


 だけど最近、少しだけ不安になることがある。本当に正しかったのかどうか。


 以前と比べて、最近は疲労が溜まりやすくなったような気がする。すぐに疲れて、仕事に集中できない。マリアンヌに俺の体調管理を任せていた時、こんなことは無かったと思う。


 ルイーゼが、まだ慣れていないだけ。徐々に良くなっていくはずだと思っていた。だけど実際は、その逆。だんだん酷くなっているような気がする。この悪化が、改善するような気配もない。


 ルイーゼに疲労の回復をお願いすると、体に違和感が残る。回復したはずの体力もすぐに尽きて、常に疲れているような感じで毎日を過ごしていた。


 だから、不安になってきた。ルイーゼを信用しても良いのだろうか。彼女の使用する回復魔法の効果は、本当に発揮されているのだろうか。一度、ちゃんとルイーゼと話をしないといけない。


 そんな悩みがあるけれど、とりあえず目の前の仕事を処理しなければならない。


「はぁ……。本当にしんどいな」


 書類を一枚ずつ読み込んでいる最中に、つい愚痴が出てしまう。最近ずっとこんな感じだ。寝不足のせいで体が重く感じる。しかし、やめるわけにはいかない。

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