第16話 回復魔法の効果
ということで、ダンジョンの案内人であるゼノさんの疲労を魔法で回復した。
「凄い! 疲れが無くなった!! 回復魔法とは、こんなに凄いものだったのか!」
私が魔法を使って疲労を回復させた瞬間に、ゼノさんは立ち上がって喜んでいた。先ほどまで疲れ切って、座り込んで呼吸が苦しそうだった人とは思えない。
だけど、回復魔法も万能ではない。これは一時的なもの。それに、ちゃんと効果を発揮しているのか確認しなければ。
「体にどこか違和感はありませんか? なんとなく体の奥に疲れが残っているとか、肩や胸などに熱さを感じるとか」
「いいや、全然ないぞ。今までと比べたら体も軽いし、今すぐ戦える状態だと思う」
ゼノさんに、回復した後の体調について質問する。本人の証言も参考にしながら、魔法の効果を細かく確かめていく。
かなり上手くいったようだけど、安心はできない。
「これで俺は、全盛期の体力を取り戻したのか?」
「いいえ。今は、一時的に疲労を回復しただけですね。ゼノさんの体力は以前のままなので、すぐに疲れてしまうと思います」
「なに!? そうなのか……」
体の疲労が無くなったことで、かなり喜んでいたゼノさん。しかし、事実を聞いて落ち込んでしまった。
残念ながら、回復魔法では一時的に体力を取り戻すことしか出来ない。そして、この魔法を使って体力を回復すると体に負担がかかる。なので、何度も繰り返して使用することは止めておいたほうが良いだろう。
体力を取り戻すためには、そのための鍛錬が必要だった。魔法に頼り切ってしまうと、体力が上がったと勘違いしてしまう。それで、そのまま気付かないうちに体力がどんどん低下していく、という事例がある。それが非常に危険だった。ちゃんと説明しておかないと。
「私は、体力を効率的に鍛える方法も学んでいるので。地上へ戻った後に、ゼノさん専用のトレーニングメニューを用意しますね」
「うん。それは、とてもありがたいな」
回復魔法の効果の危険性と、体力を上げるための手順について、ゼノさんに説明した。それを聞いて、体を鍛え直そうとやる気を出してくれた。こうやって素直に私の話を聞いてくれる人は、凄くやりやすい。
元婚約者だった彼は、すぐに魔法に頼ろうとしていたから……。
ふと思い出した彼のことは、とりあえず置いておいて。この後、どうするのか皆で相談する。
「ということは、一旦ここで地上に戻ろうか?」
「それが良いだろうね。事前に約束していた通り、無理はしないということで」
「すまないな。案内人の俺が、君達の足を引っ張ってしまって」
「気にしないで下さい」
当初予定していた地点よりも、私達はダンジョンの奥まで進んで来ていた。どうやらゼノさんが想定していた以上に、3人の実力があったから先まで来てしまった。
途中で遭遇したモンスターとの戦いで全く苦戦しないから、どんどん先まで進めてしまった。その結果、ベテランの冒険者であり、ダンジョン案内人であるゼノさんが先にバテてしまった。
私が、疲れた彼を魔法で回復したので動けるようになった。まだまだダンジョンの奥を探索するために前へ進むことも可能になった。しかし、ロバンが地上へ戻ろうと提案してくれた。私とダイロンの二人も賛成する。最初ゼノさんから言われた通り、無理はしない。
ということで、三人の意見が一致して地上へ戻ることになった。申し訳無さそうにしながらゼノさんは謝っていたけれど、戻るにはちょうど良いタイミングだろう。
ダンジョン内の雰囲気を味わうことが出来て、ダンジョンモンスターと戦うことが出来ることも判明した。ゼノさんのおかげで皆が無理せずに済み、全員が怪我せずに無事地上へ帰還することが出来そうだ。それが一番、最高の結果だろう。
初めてのダンジョン探索の収穫としては十分な結果だと私は思う。ということで、四人は地上へ戻る道を歩き始めた。
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