第2話 妹との関係

 私の名前はマリアンヌ。レイモルド公爵家の娘であり、つい先ほどマクシミリアン王子から婚約破棄を告げられた女だ。


 しかも彼は、私の代わりに妹のルイーゼと婚約するつもりらしい。


 私には、ルイーゼという名の妹が居る。といっても母親が違う異母姉妹で、生まれたのは同じ時期だった。彼女と私は同じ16歳で、私のほうが何日か早く生まれた。だから、姉だと言われていた。


 そんな妹との仲は、良くも悪くもない。同じ家に生まれた家族だけど、ほとんど関わりがなかったから。同じ屋敷で生活しているというのに、食事する時ぐらいしか顔を合わせない。会話も、ほぼ交わさなかった。私も妹も、仲良くなろうという気持ちが無かったのだろう。


 無関心というのが1番しっくりくる表現、というような関係だった。だから私は、彼女について何も知らないと言っていいだろう。妹も、私のことについて興味がないと思う。それは、お互い同じように。家族だけど、知り合いよりも遠い関係。他人とほぼ同じ。


 だけど、彼女が回復魔法を使えることは知っていた。回復の魔法に関しては色々と興味のある私だから、ルイーゼが回復魔法を習得した事は知っていた。あまり上手く扱えていないことも聞いた。それなのに魔法の練習をサボって、見た目を派手にする方法だけ学んで楽をしようとしている、ということも。


 そんな彼女に、私は一度だけアドバイスしたことがあった。今まであまり関わってこなかったけれど、どうしても言いたくなってしまった。


 屋敷の廊下で偶然出会った時、私は妹に話しかけた。


「ルイーゼ。あの方法だと、ちゃんと治療することが出来ないわよ」

「……」


 だが彼女は私の忠告など無視して、何も言わずに立ち去ってしまった。やはり私のアドバイスなど必要としていないようだ。


 彼女に話しかけたことを後悔したので、それ以降は魔法に関して話しかけることは一切無かった。


 それから、いつものように無関心な姉妹という関係は変わることなく、今も続いている。


 そんな妹のルイーゼと、マクシミリアン王子が婚約する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る