豆つぶシリーズⅢ 「ぐっど ないと編」


あー 今日も良く働きましたね、豆つぶたち。

おかげで身体の節々が痛みます。



…節々?




家族のみんなが、ご飯を食べ終えて、

お母さんが食器を洗い終えて、

みんなが、おふとんに入った頃。


豆つぶたちの、本日最後のお仕事が始まるのです。



「ね、だから頼むよ~。ゴキブリさん。」






名前を聞くだけでも、背筋がゾクっとしちゃう。

その、ゴのつく虫に

イタズラしないように 釘をさすのも 豆つぶの仕事。

ただ、豆つぶも食べ物なので、全身をビニール袋でレインコートのような装備をしてからの出動になります。

食品だからね、そこんとこ気を使わないと。



「頼むよ~って言われてもね、こっちも仕事なんだよ。」


「そこをなんとか!」


「う~ん。無理だな。」


「ええっ。」


「こちとら 生きるために一生懸命なんでね。食べてもらうのを心待ちにしているよーな豆つぶさんたちとは、ご身分が違いますんでね。」


むむ、手ごわい。


「じゃあ、こんなのはどうでしょうか。」


「ああん?」



「毎晩、僕らが あなた方のために、食べ物を用意します。

そして、そこのトレイの上に乗せておきます。」


「おお。そいつは楽だ。それならいいぞ。」


「それでは、机の上とか、キッチンの生ゴミ入れに近づかないでくれますか?」


「おう。」


「じゃ、今日 深夜1時に。」


「ああ、じゃーな。」




ふう。


うーん、食べてもらうのを心待ちにしている 豆つぶさんたち、かあ。


食べてもらうのだけを待って、首を長くしてるだけじゃないのになあ。


いろいろ、ちょこっとでも 家族のみんなの、お役に立てるように 頑張ってるのになあ。


・・・と、こんなことを考えている暇はない。



「おおい、みんなぁ~。そこのトレイに ゴッキーさんたちのご飯を集めるぞ~~手伝って~!」





全部終わったのは、深夜0時55分。


危ない危ない。もう少しで約束の時間にオーバーしちゃうところだったね。



豆つぶといえども、豆つぶも食べ物なので


あんまり、ゴキさんが わさわさ 集団で集まっているのを見るのは、気持ちがよくない。



ので、1時になる前に、さっさと寝ちゃおう。





「みんな、おやすみ~」




「ちょっとっ、つぶれるじゃないっ。」


「ん、もう、うるさいなあ。」


「そんなこと。いいじゃない、明日治せば。」


「きゃっ。」


「もー うるさいよ!」








…お約束。














豆つぶたちの、ながーい1日が、こうして終わるのです。

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