17

 テスト、それは学校生活の中で最も重要と言っても過言ではないものだ。そんなものが間近に迫っている今日このごろ、呑気に生活している場合ではない。正直カメラとか作っている場合ではない。


「クレア、勉強教えて」

「……嫌よ、私も勉強しなきゃ大変なのよ。魔法も貴方くらいできないし」

「私ね前提条件てして基礎知識がないの。この学園の成績の付け方とか、あまり理解してないのよ。」


 説明とか何もないし、歴史とかは知らない話ばかりだし。わかる教科もあるっちゃある。ただ知らない世界の学問ことを1から学ぶとなると、いくら言葉が分かれども知識が足りない。特に歴史。魔法構築なんかは例外で、アリス・シェイルの天性的なセンスで自然とわかる。

 この少女すごい。私は、何も考えずスラスラ魔法構築が書ける。

 そんな私にクレアは信じられない、という顔をしつつ私に話してくれた。


「……そうね、主に3つの教科があってね。その3つから教科が更に分かれるの。主な3つは礼法、魔術、修学。

 礼法はそのまま礼儀作法のこと。アリスがよく音を上げてるやつね。筆記と実技、両方あるわ。貴族にとっては当たり前のことだけど、私達平民には馴染みのないもの。

 次は魔術。これも筆記と、実技。筆記は魔法構築を書いたり、あとは魔法の成り立ちとか、色々ね。実技は自分の持っている属性のテストよ、貴方がいつも凄いやつ。いくつか属性がある人は一つ選んでテストするの。

 修学は、この世界の歴史とか、言語学とか、幾何学とか、たくさんあるでしょ? 選択教科は私と一緒の言語学だからいいけど。ていうか、ちゃんと説明あったでしょ?」


 この世界にテストがあるなんて、わかってはいたけど恐ろしい。特に実技と筆記があるのは無理だ。


「な、なるほど。私が今とてつもなくヤバイ、ということが分かったわ……ちなみにテストはいつあるの?」

「えーっと……来週の水曜日から5日間かしら……土日も休みにならず、テストになるのよ。その代わりテストが終わった後2日間休みよ」

「今日って何曜日…?」

「月曜日よ。まだ時間はあるわね」

「……ちょっとまって」


 一体何教科あるんだろうか。実技と筆記っていう超最悪な分けられ方をしているのが気に食わない。クレアは真面目だからコツコツ勉強しているだろう。さて……


「魔法は、とりあえずいいとして。礼法と歴史が問題ね。どうすれば……」

「教えてもらえば?あの第一王子に」

「え、なんで?」

「ねえ?」

「からかってるでしょ。でも……」


 あの人は優しく教えてくれそうだ。

 フェリア様──に頼ってばかりは駄目だし、だからといって第一王子とかいう偉すぎる人にたよるのはどうかと思うけど、まあ許してほしい。


「ありがとうクレア、行ってくるね!」

「いってらっしゃい」


 よし、まずはこの広い学園内を探すところから始まるわね。




 





 第一王子は教室にいたのですぐ見つかった。テストも近いので教室が自主のために使えるのだ。

 しかし、よくよく考えたら第一王子に聞くってかなりやばくないか。女性の視線が痛いどころじゃない、もう、やばいんじゃないか。

 と、第一王子がいる教室の前で考えるのも遅いが、やっぱりクレアに聞こう。


「おや、アリス君じゃないか。どうしたんだい? こんなところで」


 丁度踵を返そうとしたところで声をかけられてしまった。


「テストがあるじゃないですか……だから、誰かに勉強教えてもらおうかなって思ったり、思わなかったりしていて……」

「じゃあ僕が教えよう。実はかなり僕は成績がいいんだ」


 そんな気はしました。


「いや、でもよくよく考えたら迷惑かなって、思って……」

「いやいや、僕はかなり頭がいいんだ。勉強しなくなってこれくらい大丈夫。任せてくれ。さあ、勉強しよう。図書室へ行こうか」


 乗り気というか優しさの塊だ。若干周りからの視線が怖いのは気の所為だろうか。

 王子に手を引かれながら廊下を歩く。

 私を引率する勢いで手を引っ張るのだから少し驚いてしまう。勉強する友達がいないのだろうか、と失礼な考えが頭によぎる。

 図書室の扉を開け、中にはいる王子と私。

 テスト一週間前のためか、図書室にもまばらに人がいた。

 扉を開けたため数人が顔をあげ、驚く。

 が、すぐに興味をなくしたのか一部は普通に顔を下げ、一部は王子といる平民に嫌気が差したのか少し睨み顔を下げる。


「さあ。勉強しようか」

「は、はい」


 空いている席に適当に腰掛ける私と王子。

 顔がいいな、と思う。婚約相手とかはいるのだろうか。もしかしてフェリア様だったり。


「……どうしたんだい? 僕の顔になにかあるかい?」

「いや。なんにもないです」


 勉強をしよう。人の顔を見ていても相手は不快だろう。王子がいるうちに聞ける教科にしたいので幾何学の教科書を開いた。高等数学レベルの問題だが、そこそこの参考書の難易度の問題が並んでいる。

 

「大丈夫かい?」

「まあそこそこは」


 私は文系である。諦めて言語学やろう。最悪答えがあれば分かると思うし、幾何学は五日目でまだ先延ばしにできるのだ。

 言語学はまだわかる範囲であった。英語で言うなら「This is a pen.」くらいの範囲。隣の国の言語らしいが、何故かすらすらと問題が解けた。






「もう、こんな時間か。だいぶ集中してたね」


 空は赤く染まっており、もう日が沈むところだった。


「ずっと言語学についてやっていたね。他の教科は大丈夫かい?」

「他の教科って何がありましたっけ?」

「必須科目は、幾何学、歴史学、地理学、芸術かな、芸術は選択教科で音楽、美術のどちらかだね」

「ありがとうございます。とりあえず私は大変なことになっているんですね……」

「広く浅いから大丈夫だよ。一年のうちから難しい問題も出ないし」


 地理と歴史は壊滅的なことになりそうだが、暗記だし馴染みがないだけか。授業は一応聞いているけど、単語のアドバンテージがない。他の人間と差はつけられてしまうだろう。


「そうだ、平均点マイナス三十点で補習があるよ。だから、ちゃんと苦手な教科もやっておくんだよ」

「ロイド様、勉強教えて下さい……」

「うん。いいよ。でも教えることあるかな? じゃあ明日もここで集まろうか。授業が終わったらこれるかい?」

「はい!ありがとうございます!」


 王子のまぶしい笑顔、私が迷惑ではないように感じられる魔法の笑顔である。本当に色々とありがたい。


 そうして、勉強会が始まるのだった……。

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悪役令嬢の嫌がらせが恩情で、愛らしい! はにはや @haniwa_828

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