16
「それで俺になんの話だったんだ?」
「それは──」
私はカメラのことと、魔法についてをルイさんに話した。
「へぇ、面白そうなもの考えるな。いいぜ、作るよ。そういうモンがあれば、どんな思い出も心に残りやすそうだな」
「そう言っていただけて嬉しいです。」
「おい、敬語なんていらねえよ。同級生だしな」
「でも偉い人ですよね?」
「……俺は、そういう隔たりを無くしたいんだ。王族だとか貴族だとか平民だとか、そういう気持ち悪い風習を無くして平等にしたいんだよ。まあ少しは協力してくれないか?」
少し寂しげに笑う彼の姿に思わず時が止まった。
世の中にはそういう人がいるものだと知ってはいたけど、なんというかそこには毅然とした決意が感じ取れたとというか。そう、本気だと思った。
「わかった。じゃあ敬語は無しで!」
「おう、それでカメラだっけ? 任せとけ、ただ魔法の術式だけ教えてくれないか。紙に書けるか?」
「かみ?」
「魔法は作れたんだろ?」
「……」
「ほんとに天才型かよ。すげぇな。」
「書けないと作れないの?」
「俺も天才側の人間だからな。見れば何となく分かる。ただ術式がないと物に魔法を持たせられないんだ。ただの四角い玩具になる」
でも、元いた世界では魔法なんてなくても色々と物は作れていた。私の知識があれば、今頃億万長者だったのに。結構不便な世界だなぁと思った。
「俺は、魔法が使えない人も魔法が使えるようになれば嬉しいと思ってる。だからこういう小さな発明が出来るのは嬉しいな」
「今まで、私のような考えを持つ人はいなかったんですか?」
「いたよ。でも平民にそんな事するやつはいなかった。娯楽が少ないんだよな」
「…………」
***
帰ってきた私達は、校舎に戻りながら話をする。
「クレア、今何世紀なの?」
「十七世紀だけど」
「聞いても分かんないやごめん」
「はあ?」
この世界は遅れているのか早いのか謎だ。
ただフランス革命がもう少し遅かった印象があるし、まだまだなのだろうか。
それにしても、色々生活していてわかったが、ガスコンロも魔法だし、水も何もかもが魔法で作られている。機械の概念はあるのだろうか。
「ねえ、魔法が使えない人ってどうやって生活しているの?」
「平民の出じゃなかった? アンタ」
「忘れちゃって……」
「そんな自分の生活のこと忘れる? 農作業したりが一般的なんじゃない? 服を編んだり、まあ珍しい職業もあったけど」
「……いつか、お母さんに会いに行こうかな」
「夏休みとか良いんじゃない? あいつと話して何か心境でも変わった?」
「いや、少し気になるなって思って」
身分差格差は結構あるのかもしれない。彼に関わった以上、何か知っておいたほうがいい気もした。
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