13
そうして数日の時が過ぎ、普通の日々を過ごしていくこととなった。
そう、普通の。
「フェリア様って美しいだけじゃなくて可愛いよね、ほんと。写真があったらいいのになぁ……。そしたら思い出とか撮れるし、いつでも見返せるよね。写真とかないの?」
「"シャシン"というものはわからないけど、ろくでもないのね。手のひら返しちゃって……」
「それはクレアもでしょ。フェリア様のこと認めちゃってるじゃん」
「まあそりゃあ認めるしかないでしょ。あんたが忘れ物しても貸してくれてるし、宿題やって来てなかったら、さり気なく教えてくれてるし」
私の相手をしてくれてるクレア。今は学園の食堂でご飯を食べている。今日はお互いカレーライスだ。
「で、写真ってなんなの? ろくでもないものなの?」
「写真はろくでもないものじゃないよ。絵みたいな感じで、その場の風景を保存できるっていう素晴らしい物なんだよ」
「……そんなものがあれば便利ね。魔法でそういうのってないの?」
「そっか、魔法か。それだ、魔法だ、ありがとうクレア!」
私は立ち上がり、早速魔法でその場の風景を保存する魔法を唱えようとするが。ふむ……。
「で、クレア。どうやってやればいいのかな?」
「知らないわよ。適当にやればいいんじゃない。魔法は想像力が大切だとかいうから、思ってるように想像してみたら案外出来るかもよ」
「なるほど」
私は集中する。この場を魔法に焼き付けてもらおうと唱える。
すると魔法陣がいくつも現れ、光り始める。流石にまわりの人はそんな私の様子に気づき避難している。椅子を引く音が絶えない。ただ野次馬は多くて、興味深そうにそれを見ている。
「アリス、その"シャシン"ってここを破壊するものじゃないわよね?」
「……」
「私避難してもいい?」
「……いや、避難しなくていいよ。なんとなくわかったし」
私が集中を解くと魔法陣が一気に無くなった。そもそも私はフェリア様を写したいだけなんだ。魔力を使ってまでやる意味は無い。なんだかどっと疲れが身体に残ったし。
「どうしよう、そんなつもり無かったのに色んな人が逃げちゃったな。慣れないことはするものじゃないね」
「多分先生がくるわ、一人呼びに行ってたもの」
「げ、不味いよそれ。どう怒られるんだろ。怖いなぁ」
「逃げる?」
「ありかも。」
ただ、目撃情報は多数なので逃げられる気はしない。
「ごめんねクレア。巻き込んじゃったみたいで」
「いいわよ。全部アリスのせいにする」
「そうなんだけど少し悲しいかなそれ!」
「で、出来そうなの?」
「うん。早く完成させたいね。クレアのことも撮ってあげるよ」
「それは別にいいけど、その魔法陣の大きさ、どうにかしなさいよ」
「そうだね、どうすればいいんだろう」
「まあおいおい考えるとして、ゆっくり考えましょうか」
話しているとざわざわと人が戻ってきた。
そこに一つの影が。
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