12

「どうだったの?」

「え?」

「どうだったの」


 夢のような時間は終わって、もしかしたらあれは本当に夢だったのではないか、そう疑う今日。昨日の記憶は殆ど無いけど、当たり前のように学校に来て授業を受けようとしているから夢なのかもしれない。

 ──ポケットによくわからない宝石はあるが……。


「どこに行ってきたの?」

「ええと、服、チーズケーキ、宝石……」

「ほ、宝石!?」

「多分夢」

「現実よ、何買ってもらったのよ……」

「これ」

「持ってるの!?」


 燦燦と輝くルビー。見る角度を変えると光が反射してキラキラと綺麗に見える。中には薄っすらと紋様のような、家紋のようなものが見えるが恐らくブランドのロゴ。


「……この、見える模様ってさぁ」

「なんか凄いとこなの、やっぱり……」

「フェリア様の家の紋じゃない? だから結構いいところよ。貴族が牛耳ってる認めた凄い店ってことなんだから」

「ひぃ……」

「確か宝石とかって魔力が込められてて何か効果があるんじゃなかった?」

「確かに言ってたな。魔力が上がるとか」

「ふーん。」


 その言葉を信じてないのか訝しげに宝石を見つめるクレア。


「そんなに疑わなくても」

「そんな安っぽい効果一つじゃないと思うけどな、いくら私が見たって分かんないんだけど」

「安いやつにしてってお願いしたから高いものだったら困るんだけど!」

「安いやつって……。てか貴族が人に宝石あげる理由って知ってるの?」

「理由?」


 そんなもの私が知っているわけないだろう。と強がるのは違うが、一体なんなのだ。


「アリス、良かった持ち歩いてくれてるのね」

「フェリア様……!」

「フェリア様。どうしてアリスに宝石渡したのか、説明しておいたらどうです?」

「ああ、知らなかったんですか。そうですわね……」


 フェリア様は怪しく笑って、答えた。


「アリスはフェリアに気に入られてるっていう意味です」

「……ほう?」

「そろそろ授業が始まりますわね、わたくしは席につきますので」

「……なるほど?」


 気に入られてる。まあ確かに、こんな高いもの渡されてるしな。


「あの人、遠回しね。だから、人に見せつけて私のものって言ってるのよ。取るなよって牽制してるのよ」

「はぁ!? なんで?」

「なんでって、言葉の通り気に入られたんでしょ。何にせよ、あの人が不器用すぎることがわかったのは大きな成果かもね」

「ふぇ、フェリア、様……!」


 好きかも、なんて。

 顔が熱い。私ってなんで気に入られてるんだろう、嬉しいけどやっぱり謎だ。

 これからフェリア様とどう関わっていけばいいのか、私は頭を悩ませることになった。



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