11-4
そうしているうちに日も落ちてきて、フェリア様は次で回るところを最後にしようと言い出した。
「最後って、もう十分ですよ。ここまで丁重に扱われる理由もわかりませんし」
「いつか分かれば、それで構いません。」
「…………」
フェリア様は遠回しに伝え過ぎだと思う。
正直、今回の一件で嫌われているわけでは無いのだろうと、言うことができそうになった。
ただ金に物を言わされている気もするが。
「あの、それで次はどこに行くんですか?」
「宝石屋に」
「宝石っ!?」
初見の感想はキラキラしている、という小学生じみたものだった。
値段を見るのも悍ましい。0の桁が多い。十人十色の色が虹のように並んでいて輝きを放っていた。そして私は見るのをやめることにした。
「好きな宝石はありますか?」
「強いて言うなら一番安い宝石が……」
「考えが浅はかですわよ」
「こ、こんなお高いもの買ってもらえませんよ!」
「気をつかなわなくても、わたくしが寝て明日になればこれくらいのお金は稼げていますから」
「…………」
心が楽になりそうだ。勿論遠慮はするが。
「ということでどれになさいますか?」
「なら……宝石の種類は分からないのでダイヤモンドじゃなければいいです……。あと小さくて、ご飯粒くらいの大きさであれば……」
「ふーむ……。貴方には、ルビーとか似合いそうですね」
「ルビー……」
ってどのくらいのランクなのだろうか。中間くらい?
「目の色そっくりで。ショーン、魔法付与されているもので一番いいものを探して」
「かしこまりました」
「ま、魔法付与?」
「貴方って、何も知りませんわね」
「あはは……」
少し呆れた目をしたフェリア様の視線を避けるように目をそらす。
「魔法付与というのは、道具につけられる魔法の効果です。例えば足が早くなるとか、力が強くなるとか、魔法が強くなるとか。あと空から落ちたときに重力の力を弱くする効果もあったり様々です」
「へぇ〜」
「自分でも付与することもできて、その力や使い方は多種多様です。奥深くて簡単に語るには難しい、独立した分野とも言えます」
「魔法にも色々あるんですねえ……」
私がその事実に頷いているとショーンさんはもう戻ってきていた。その手には赤く五百円玉くらいのネックレスとなったルビーが。ルビーにはうっすらと紋章のようなものが見える。このお店のロゴだろうか。
「フェリア様、店員様に聞いたところこんなものが……」
「素晴らしいです、これにしましょう」
「そ、そんなあっさり……」
「いいのですかお嬢様」
「ええ。ショーン、手続きはお願いよ」
「かしこまりました」
サクサクと物事が進んでいく。こんなことがあっていいのだろうか。
「アリス、わたくしがネックレスをかけてあげます」
「え、」
「ですので、逃げないでくださいね」
「は、はい……」
先に牽制されてしまった。
ここで逃げる意味はないので、まあ言葉に甘えていようと思う。
フェリア様はネックレスを手に持ち、私の首元にかけた。
「うん、似合ってる」
フェリア様は優しげに微笑んでいた。
私はそれが恥ずかしくなってつい目を逸らす。
「ありがとう、ございます……」
「このネックレスは、きっと貴方の役に立ちます。どこにいても肌身外さず付けておくこと」
「失くしたら怖くないですか?」
「このネックレスは持ち主を勝手に認識します。失くしても何かしらのアクションをしてくれるでしょう」
「え、そ、それってとんでも無く高いのでは!?」
フェリア様は黙って、少し俯き考え込むような素振りをした。
「そんなもんですよ。これは魔力が上がる効果しか無いので安価です。恐れないでくださいね」
「はい……」
「肌身離さす持ち歩いてくださいよ」
「はい……」
2回も年を押された。まあ宝石をつけるのは他の人に生意気だと思われそうなので隠しながら持ち歩こう。そう決意した。
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