10

「平民、ここにいたのね」

「フェ、フェリア様……」


 そこには呆れたような、怒っているようなフェリア様の姿があった。


「えー、一体そんなに怒ってどうしたんですかねー?」

「…………まあいいわ。わたくしもご飯を一緒に食べます。」

「えっ……。」


 なんと気まずいことだろうか。だってさっきまでフェリア様の話をしていたのだから。


「フェリア様、お忙しいのでは?」

「ご飯くらい食べます。」

「不味いですよ?」

「ここのシェフはその辺の料理人とは違いますよ?」

「さいですか……」


 これは譲ってくれなさそうだ。


「フェリア様、お料理お待ちしました」

「リリ!?」


 リリがフェリア様と自分の料理を持ってこちらに来た。置かれたのは、オムライスとハンバーグ。フェリア様はオムライスのようだ。


「リリ、パシられてるなら私が助けになるから」

「クレアは本当にわたくしのことが嫌いですわね」

「フェリア様とは仲がいいから大丈夫だよ〜」

「ならなんで……。いいわ、あとで聞く」

「本当のことなのに……」

「フェ、フェリア様はオムライスがお好きなんですか?」

「そうね、平民よりは。」


 返事が微妙すぎる。どうしようこの空気。


「そ、そうなんですね〜。じゃあ好きな食べ物は?」

「オムライスよ。」

「ほぇ〜」


 そりゃ私より好きですよね。知ってました。


「それより、クレアはフェリア様のことを目の敵にし過ぎだよ〜。リラックスリラックス」

「それ本人の前で言う?」

「クレア、あんた本人の前で言っちゃいけないこと沢山言ってたでしょ」

「平民の僻みなんて気にしませんわ」

「…………」


 空気が重すぎる。普通に性格合わなさすぎでしょ。何この揃っちゃいけない四人。


「クレアがフェリア様のこと嫌いな理由って、フェリア様が意地悪っぽいことするから〜?」

「……まあ、その、」

「フェリア様はフェリア様なりの考えがあるのにね〜?」

「煩いわ、第二の平民。」

「フェリア様こわ〜い。今日アリスと帰ってみたらどうですか?」

「へ?」

「ちょっとリリ、私がそれ許さないんだけど!」

「……それも良いかもしれませんわね」

「う、うそ……」

「私が許さないって!」

「クレアが決めることじゃないでしょ。アリスだよ〜」


 わ、私が決めるって。

 フェリア様と帰るか、私が決めろと!?


「ね、アリス。いいんじゃなぁい?」

「アリス!!」

「…………」


 ちらりと横目でフェリア様を見ると、黙ってオムライスを食べていた。

 それから私の視線に気がつき、目を合わせて口を開いた。


「平民。」

「……ご一緒させていただきます」


 今日の日を後悔するだろうか。

 私は静かに天井を仰いだ。

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