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思えば、今日席を譲られた場所に座っていたのはリマンダ様だったような気もする。
フェリア様も色々と怖い噂を聞くが、リマンダ様の前では全人に見えてしまう(最も、私は目をつけられているが)。
──少しだけ、フェリア様のことについて調べてみようかな。
そう思い立った私は、まず授業からフェリア様の様子を見ることにした。
品行方正、その言葉が似合うだろう。
彼女は背筋を伸ばして、真面目に先生の話を聞きノートを取っている。今の科目は数学。私は前世では文系だったので少し苦手だ。でも、彼女は楽しそうに問題を解く。
私は先生の話も聞かずにずっとフェリア様の観察をしていた。フェリア様の斜め後ろにいるからいくら見ても本人には気が付かれないのだ。
見てばかりで勉強は大丈夫かって?
文系とはいえ、この学校が高校レベルなこともあって流石に聞いてなくてもぼんやりとした記憶にあるからか教科書を読めば解ける。意外と私は要領がいいのだ。ちなみに共通テストは六割だった。
「おいアリス、ノートもとらないでずっとフェリア嬢のことを見ているが大丈夫か?」
「ちょ、せんせ……」
「は?」
間抜けな私の声と、驚きこちらを振り向くフェリア様。まさか、先生に裏切られる形になるとは思わなかった。さて、どう言い訳をしようか。もしかしたら命が一つ今日無くなるかもしれない。だって、私はあくまでフェリア様に嫌がらせを受けている立場だ。一歩間違えれば“死”だろう。
「平民……貴方何を考えているの?」
「先生、私考えるとこちら側を向いてしまう癖があるんです。誤解です」
「そんな凝視するような視線で、いつもはそちらを向いていなかった気もするが……まあいいか。みんな、すまないな授業を止めて」
「…………貴方」
何を考えているのか、フェリア様の訝しげな目が恐ろしい。しっかりノートをとって、もう興味がないフリをしよう。
「見てたって、ねえねえ、アリス。急にどうしちゃったの?」
隣りに座っていたクレアが小さな声で聞いてきた。
「ちょっと、まずは地道に調べたいと思って」
「はあ……?」
馬鹿げたことをクレアに言う勇気はない。
でも、もしかしたら私の為に嫌がらせをしていたのかもしれない。
『あんまり勘違いしてほしくないなって思ってね。かなり不器用だから、伝わってないだろうなとは思ったけど』
ロイド様のこの言葉の意味も、気になる。
フェリア様のことをじっと見つめてみる。けど、流石に見るだけじゃ何もわからない、か。
「おいアリス、俺が話しているときもその態度。やっぱり考えるというよりかは見ているよな。そこに虫でもいるのか?」
「いやいや、考えてるんですって〜」
こちらを見るフェリア様の顔が少し怖いのだが。この教師、しつこい。
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